本物の証明。作家・稲田万里さん
今の世の中、「わかりやすい」で溢れている。
これさえ買えば健康になれる。これさえ読めば確実にもうかる。これさえあればすぐにやせられる・・・・・。
「おいおいおい、本当かよ?」といつも僕は思う。
ほとんどのものは、「そうなった気になれるだけ」だ。もし買ったくらいで、読んだくらいで、使ったくらいで、金メダルが取れるとしたら・・・、金メダルにどれほどの価値があるだろう?
本物の才能、それは触れた瞬間、人々に「あるもの」を与える。
作家・稲田万里さんの『全部を賭けない恋が始まれば』
数十年も大人をやっている僕は、たいがいのものにはビックリしなくなっている。しかし彼女のデビュー作は「あるもの」を僕に与えてくれた。
そう、「衝撃」だ。雷に打たれたような衝撃。
はじめてクイーンのボヘミアンラプソディーを聴いた時、マイケル・ジャクソンのムーンウォークを見た時、ジョーダンのダンクを見た時、羽生結弦選手の光速ジャンプを見た時、プリンスの裸のジャケットを見た時・・・どれも「衝撃」ではなかったか?
本物の才能による、本物の衝撃。
普通の人には理解不能な「?」を考えられる全ての角度と、考えもしなかった角度から投げつける。想定外の「?」が、受け手の世界をグワンと拡大してくれる。
それが本物だ。
作家・稲田万里さんの描く世界。
彼女の小説は「いい」とか、「わるい」とか、そんな判断基準を完全に麻痺させる。ただただ気になる。どうすればこんなことができる?この人の頭の構造はどうなっている?なぜこの人はこうなんだ?どうして???
気がつけば、夢中になっている自分に気づく。
磁場の引力が半端ない。
僕の全ての言葉を尽くしても、稲田万里さんの世界の魅力を言い表すことはできないだろう。
だから僕はこの小説を仲間にこのように紹介することにした。
「何がどう凄いのかはわからない。
でも、凄いことだけはたしかにわかる」
もしよかったら、ぜひ手に取って見て欲しい。
きっと忘れかけていた何かに出逢えるはずだ。