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運動器03 「伸びろ」はない
ストレッチの指導などで「この筋肉をもっと伸ばして(ゆるめて)」といわれることがあります。ですが脳は筋肉に「伸びろ」「ゆるめ」という指令を出せません。
筋肉は伸ばされると切れてしまうので、脳は身体を破壊するような指令を出さないのです。(人間の身体は知れば知るほど合理的です)
ですから脳の一次運動野が筋肉に対して出せる指令は「縮め」「収縮」だけです。
では、私たちの筋肉はどのような機序で「伸びる」「ゆるむ」のでしょうか?
曲げている肘関節を伸ばす場合を例に考えてみましょう。伸ばしている最中、力こぶにあたる上腕二頭筋の長さは、それまでより長くなります。上腕二頭筋は実際には「伸びて」「ゆるんで」いるわけですが、その鍵を握るのは上腕二頭筋の拮抗筋である上腕三頭筋です。
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上腕二頭筋が肘関節を曲げる(屈曲する)のに対し、上腕三頭筋は肘関節を伸ばす(伸展する)、つまり真逆の作用をもっているのです。
ある筋肉Aに「縮め」の指令が出ているときには、Aの拮抗筋Bには「縮め」の指令が出ません。Bに縮めの指令が出ているときには、Bの拮抗筋Aには「縮め」の指令は出ません。ですから、肘が伸びている最中は、上腕三頭筋のほうに「縮め」の指令が出ていて、上腕二頭筋には「何も指令が出ていない」という状況になります。
脳からの指令は「ON=収縮」だけ。「OFF=伸びろ、ゆるめ」ではなく、「OFF=収縮しなくていい」の意味になります。
つまり上腕二頭筋は「収縮していない」状態ですから、その反対の動きを担う上腕三頭筋が収縮すれば、上腕二頭筋は結果的に「伸びる」「ゆるむ」というわけです。
私たちの身体は、いろんな筋肉どうしが拮抗して成り立っています。ある筋肉Aを伸ばしたければ、その拮抗筋B(複数のことも多々あり)に「縮め」と指令を出せば、「結果として伸びる、ゆるむ」ということなのです。
・身体っておもしろい!