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数字でみる、スポーツの危険
・2005年度以降の学校事故で「亡くなった子ども1614人、何らかの障害が残った子ども7115人」(日本スポーツ振興センター調べ)というデータがある。これはNHKwebにも掲載されているもので、運動中の心臓・循環器系での突然死、熱中症での死亡などが含まれる。
こういう数字を見ると「学校の安全って大丈夫?」と思ってしまう。
子どもたちの「心臓への外力の危険」の意識はどこまで浸透しているだろうか?今年の夏こそは熱中症で命を落とす運動部の学生は減るのだろうか?これらの問いの答えが【オール/ゼロ】になるところをゴールとしたい。
・中学校および高校の学校内における柔道事故で121人(1983年度から現在)が命を落としている。学校以外の一般道場では2010年に小学1年生が、2019年には小学5年生の男子が急性硬膜下血腫で死亡。2024年には京都府警察本部の警察学校で20代の女性巡査が練習中に死亡している。
こういう数字を見ると、柔道って危ないと思ってしまう。一方、フランスの柔道人口は53万人、日本の4倍以上の競技人口にもかかわらず、死亡者数はゼロ。指導資格・安全資格制度が整備されており、フランスでは「柔道は安全なスポーツ」と認識されている。
同じ柔道なのに、国によってここまで違う。
意識改革、システム改革、制度改革で、大きく変われる証明だ。全柔連では小学生の全国大会を中止にし、異常に加速する低年齢化に歯止めをかけようとしている。だが「練習での事故」が減るまでにはまだまだ時間がかかる気がする。
・フルコンタクトカラテ、キックボクシング、ボクシング、総合格闘技など、「いわゆる習い事としてのコンタクトスポーツの低年齢化」がエスカレートしている。フルコンタクトカラテの創始者は「試合は成人男性のもの」と定めたが、逝去後の組織分裂、およびビジネス化によって、なし崩し的に裾野が広がっていったと聞く。
競技者層が拡大するのは喜ばしい面がある一方で、
敷居を下げる/安全性を上げる・・・・これらはセットであるべきだ。
動画投稿サイトには「2歳のがカラテの試合で蹴られて転倒する映像」「小学生同士が練習で心臓の上を殴り合う映像」など、骨が未完成で命のリスクがある映像が多数みられる。
2024年11月には「小学生が反則攻撃で意識を失い、動けなくなった。周囲の大人がその状況をしばらく放置する映像」が話題に。
習い事としての格闘技系スポーツは怪我・事故・障害の統計さえとられていないところも多く、報告や公開がないのが現状である。「数字を出していない」を「事故が少ない」の認識に変えて「我が流派の安全性」をうたうところもあるようだが、数字を出していない事実が、安全軽視そのものにも思える。
海外ではスポーツ指導者には資格が必要な国も少なくない。また子どもの格闘技試合を禁止している国や州がある。ムエタイが国技であるタイでも、政府は12歳未満の子どもの試合を廃止する方針を打ち出している。またサッカーのヘディングなども子どもは禁止となっている。
「医科学的根拠やデータを背景に、子どもの命、健康、安全、権利を守る」
それが世界の潮流である。
SNSでは子どもの人権保護に明らかに抵触するような映像が海外企業のネットワーク上にアップされ続けているが、それらが「日本だから許される」とは思えない。
我が国においても、少なくとも「スポーツで子どもの命が失われる」あるいは「長期に渡って機能障害が残る」などの事例はゼロを目指すべきであり、実現に向けて積極的な法整備、施策の実行、教育や啓蒙などが必要な時期ではないか。
これらの実現のために僕個人にできることは限られているけれど、だからこそ限界を設けず、粛々と可能性を見つけていきたい。
・拙書へのご協力をありがとうございます。売り上げの一部をスポーツ安全推進の活動に役立たせていただいております。