【IT BEGINS】清水エスパルスが目指す「RE-FRAME」の先に広がる無限未来
この記事は、清水エスパルスの過去・現在・未来を筆者なりに「REFRAME」した上で、「書ける思い」を約14,000字でストイックに書き連ねたものです。
ちなみに、内容を140字でまとめるとこんな感じです。
Let Me Know
あなたは誰ですか?
どこからきてどこへ向かいますか?
それはなぜですか?
就活の2文字がチラつき始めた大学3年生の頃に、自己分析のヒントになればと思い参加したリベラルアーツを学ぶプログラム。ジェンダー、宗教、国家など、様々なテーマについて、今ある常識や当たり前を疑い、「そもそも〜」「なぜ?」といった問いをぶつけ、対話を通して深く、深く、深く、考えていった上で、1年を通して上の問いに対する自分の考えを導こうとしていました。
勿論、ずっと考えていたり、ずっと自分探しをしたりしていても前には進みません。しかし、価値観の違う他者や加速度的に変化する社会、地球と共生しつつも、「自分らしく」あり続けるためには、現実を見て行動しながらも、時には立ち止まり、自分のルーツを深く掘り下げ、アイデンティティを再認識・再構築することが、とても重要であると感じています。
Star Train(スタートライン)
1月14日。
清水エスパルスの新体制が発表されましたね。
エンブレム、フロント、監督、スタッフ、選手、さらにはコールリーダーまで変化(アップデート)されて挑む2020年シーズン。
そんなエスパルスの新スローガンが発表されました。
「RE-FRAME」
この言葉は「再構築」「枠を作り直す」という意味ですが、
聞いた瞬間に筆者がピンと来たのは…
そう。筆者も愛する「Perfume」
このREFRAMEという言葉は、
Perfumeが2018年(NHKホール)と2019年(渋谷公会堂柿落とし)に行った公演のイベント名と全く同じなのです。
「Reframe」と「RE-FRAME」
この被り具合に、パフュクラ(Perfumeファン)のサッカーファンからは、エスパルスの職員の中に、P.T.A.会員(Perfumeの会員)がいる説が唱えられるほど…まあ少なからず、依拠があったと思わざるを得ません笑
でも確かに、ここ最近のエスパルスの動きを見ていると、Perfumeとリンクする部分があると筆者もなんとなく感じていました。
スローガン発表前に、筆者がPerfumeのReframeというワードを引用し、エスパルスの今季の目標についてツイートしたのも、それが理由。
もちろん、やり方は違いますが、エスパルスのリブランディングプロジェクトやチーム改革は「Reframe」と通ずるものがあります。
てことでまずは、エスパルスが新たに目指す道を理解するヒントにもなるであろう、Perfumeの「Reframe」について、簡単にご説明しますね。
Dream Fighter
Perfumeの「Reframe」もエスパルスが掲げた「RE-FRAME」とほぼ同じ意味を持っています。
メジャーデビューから、今日に至るまで築き上げてきた「人」「曲」「歌」「ダンス」「MV」「ライブ」「演出」「データ」などの要素を一度分解。
冒頭で書いた「あなたは誰ですか?」「どこから来てどこへ向かうか?」といった問いをPerfumeに置き換え
「Perfumeとは何者か?」
「Perfumeはどこから来たのか?」
「Perfumeはどこへ向かうのか?」
これらの問いを通して、チームPerfume、そしてPerfume3人自身のアイデンティティを再確認。
20年積み上げてきた過去の歴史を否定せず大切にしながら
「過去」「今」「未来」を新しい視点から融合させて再構築。そしてそれを、約1時間のMCなしかつ観客着席観覧の舞台で表現する…
それが「Reframe」「Reframe2019」という公演なのです。
Perfumeといえば、紅白歌合戦で多くの人もご覧になっているように、最新のテクノロジーを駆使した演出でお馴染みかと思います。(2019年の紅白で披露したFUSIONは、上の動画のものから更に進化した「Reframe2019」のパフォーマンスがベースになっていました。)
彼女達には、ダンスの振り付けや演出を担当するMIKIKO先生や、超一流クリエイター集団のライゾマティクス、曲の提供は中田ヤスタカ神がずっと担当し、ほかにも多くの人の支えがあり、それらが合わさって一つの形となっているのです。
しかし、そのような演出は、あくまでも、Perfumeの3人(かしゆか、あ〜ちゃん、のっち)を輝かせるための演出であり、テクノロジーの凄さを誇示するためのものではありません。
ボール保持のためのパス回しと、ゴールを目指すための手段としてのパス回しとでは意味が大きく異なるように、Perfumeのライブ演出も3人の歌やダンス、人間味をいかに生かして、最高のアート表現を創れるか、ということを目的としたテクノロジーの利用がなされています。
テクノロジーを駆使するほど、むしろ人間の温かみや情といったアナログの良さがより引き立つ…
テクノロジーの進化とともに、Perfumeの3人も日々進化し、チームPerfumeがアップデートされ続けているのです。
筆者は何度もPerfumeのライブに参戦していますが、セトリの中で古い曲を披露したとしても、懐かしいメドレーの一つではなく、その都度新しい解釈や景色を見せてくれますし、新しい曲も古い曲もいつでも「Future Pop」見せてくれます。
過去の歴史を丁寧に分解し「Reframe」した上で、未来の新たな可能性を広げるアートを「Reframe」し続ける。
Perfumeが、Perfumeであり続けるために変わり続ける。挑戦し続ける。
筆者は、(3人の女神のような可愛さに惚れてもいますが)、チームPerfumeのこのような姿勢に一番魅力を感じています。
時の針
エスパルス公式ホームページに書かれている、新スローガン「RE-FRAME」についての説明文です。
Perfumeの再構築と似ている点はこの部分…
これまで積み上げてきた歴史を白紙に戻したり否定したりせずに、大事にしつつ、未来を切り開くためには変わらなければいけないという大義がどちらとも存在していますね。
PerfumeがPerfumeであり続けるために…
エスパルスがエスパルスであり続けるために…
ただ、もちろん大きく違う点もあります。
その一つが、再構築する前の両者の状況です。
Perfumeの場合は、決して順風満帆ではなかったものの、しっかりと階段を上り続け、かなり高いレベルの唯一無二の存在に到達している状態から、その今のPerfumeをPerfume自身が越えて、Next stage with youまだ見ぬ無限未来へ進むために「Reframe」を行ったといえます。
一方エスパルスの場合、
クラブ設立以前からこの地に根付いてきた「サッカーの街」としての歴史や実績、清水・静岡を代表して戦う以上強くあらねばならないといった点や、エスパルスのエンブレムを身に着けて戦う覚悟、クラブの理念「夢と感動と誇り」を与え続け世界へ羽ばたく…
これらのDNAが失われかけている、という現実を認めたうえで、そのアイデンティティを取り戻す、復活させるんだ…
エスパルスの「RE-FRAME」にはそんな思いが込められているのです。
そして今回の「RE-FRAME」では、新社長や新監督をはじめ、新しい風を多く吹き込み、新しい視点で再構築しながら、いわゆるサッカー王国といわれた地域を復活・再生させようとしているのです。
復活…
再生…
喜ぶ機会…
なぜか懐かしい…
震えてるの~~~おおお
不思議だけど、夢でここに、来たような………
Show Yourself♪♪
I'm ready to learn♪♪
AH-AH-AH-AH♪♪
Dream Land
突然ですが皆さん、
「3R」
と言ったら何を思い浮かべますか?
リユース?
リデュース?
リサイクル?
まあそれもそうですが、
清水サポならこっちですよね。
これは、長谷川健太元監督が2005年に掲げたキャッチフレーズです。彼は清水の監督時代に「CHALLENGE5」や「セントウ集団」など、毎年キャッチフレーズを掲げていました。
さらに、当時の社長、早川巌氏は
と想いを綴っていました。
そうです。
エスパルスの「RE-FRAME」は、
なにも今回が初めてではないのです。
健太エスパルスが目指した「RE-FRAME」の先に思い描いていた無限未来は、今回とほぼ同じでしょう。エスパルスというクラブの誇りを胸に、強いエスパルスを蘇らせたかった。
しかし同時に、「RE-FRAME」のアプローチが大きく異なることも、この記事を読んでくださっている皆さんであればもうお分かりだと思います。
長谷川健太という男にさせきれなかった男(変な意味はない笑)は、エスパルスのレジェンドであり、清水のサッカーを知り尽くしている、いや、知っているも何も、彼自身も歴史を作ってきた一人であり、清水サッカーやエスパルスというDNAの塊といっても過言ではない人物でした。
そんな強烈なDNAを持つ男を監督に置き、さらにノボリやテルなど監督と同様に強いDNAを持つベテランと、「華の2005年組」と言われたルーキー含めた若手らを融合(FUSION)させ、
21世紀に入ってからジュビロの陰に隠れて迷走し、堕落しつつあったエスパルスを「REVIVE(復活)」させ、多くの「REJOICE(歓喜)」をもたらし、「RESPECT(尊敬)」されるクラブとして「REBORN」することを目指したのです。
さらに遡れば、そもそも清水エスパルスというクラブが誕生したのも、それまで積み重ねてきた清水・静岡のサッカーのDNAに夢と希望を合わせてクラブという形に「FRAME」したものであり、
1997年の経営危機の時には、市民、日本全国のサッカーファンとともにエスパルスが「RE-FRAME」されてきたと解釈できます。
と、あ~ちゃんが言ったように、「RE-FRAME」は一回限りのことでもないし、その都度大きな意味を持つものだと思います。
「RE-FRAME」、リブランディングにおいては、相当な勇気や覚悟、腹くくりの強さが必要になってきます。おそらくこれは一般の企業でも、個人個人においても同じことが言えるのではないでしょうか。
もしこれらが中途半端だとどうなるか…
それは皮肉にも、エスパルス自身も証明しています。
健太エスパルスからゴトビ政権に変わった2011年。この時は自らの力で変わろうとしたのではなく、主力選手の大量放出等によって、変わらざるを得ないという受動的な変革でした。それでも何とか持ちこたえていましたが、長期的なビジョンや明確なコンセプトも(なく)浸透せず、会社、チーム、そして(老害)サポーターに、変わる覚悟が足りなかった結果論として…
2014年夏にゴトビ氏が追い出される形となり、
大榎エスパルスになりました。
ただ、健太エスパルスの「3R」には程遠く、未来に向けた現実的な明確なコンセプトやビジョンがあったとも言い難く、こちらもまた中途半端に終わった「RE-FRAME」…いや、革命の間に起こったイギリスの王政復古のようなものでした。
しかし、今回はここ十年とはひと味もふた味も違います。
そもそも2020年のスローガンとして「RE-FRAME」掲げていますが、この流れは(左伴社長が就任した時からとも言えますし)、2017年から始動したリブランディングプロジェクトから始まっていたと、筆者はそう解釈しています。
2005年にはレジェンドを監督に据えたことで進んだエスパルスのリブランディング。
今回は、
25周年という節目を機に、クラブ全体で覚悟を持ってその作業を行っていると言えます。
未来のミュージアム
2017年から開始された上記のプロジェクトでは、エンブレム変更が大きく取り上げられました。
しかし
あくまで
「エンブレム変更プロジェクト」ではなく、
「リブランディングプロジェクト」であります。
1992年 7月4日に「わかちあう 夢と感動と誇り」 という理念をかかげ誕生したエスパルスが、そこから積み上げてきた歴史やアイデンティティやブランド、また、それ以前から根付いていた静岡の清水のサッカー文化を、
2020年という節目を機に(17年から)見直し、紐解いた上で再構築する、というプロジェクトなのです。
クラブとしての「RE-FRAME」は、表現方法こそ違うもののPerfumeのそれと似ています。
ここからは改めて、今回のリブランディングプロジェクトの中身を、左伴元社長のツイートに上がっていた「リブランディング五原則」や、発表会での発言を引用しながらまとめていきます。
①明確なコンセプト=DNA(オレンジ、グローバル)の継承と進化(+スパルタン)
Jリーグが誕生して28年。エスパルスが最後にタイトルを獲得してから18年。
今の高校生は、エスパルスが天皇杯を獲得した時には生まれたばかりかまだこの世にいなかったことになります。今の大学生は、磐田とのチャンピオンシップの頃にまだ生まれていないか記憶にございません状態。今の20代の若いサポーターは、エスパルス誕生の頃に生まれたかどうか。
プレミアリーグなどに比べたらまだ歴史は浅いとはいえ、それだけ年月が経っているのです。
清水エスパルスというクラブがどのような歴史を積み重ねてきたのか?
そもそも如何にしてエスパルスは誕生したのか?
さらに言うと、そもそもなぜ清水という街がサッカーの街(王国)と言われるようになったのか?
このような問いを改めてぶつけて
そこから出てくる様々な解を否定したり白紙を戻したりはせず、全てを認めた上で、
エスパルスらしさとは何か?
を改めて再定義し、それを継承していく。そしてさらなる発展…「そのDNAを進化させていく」。このような狙い、想いを持って今回のプロジェクトが進められてきたと解釈しています。
その上で、エスパルスのDNA、アイデンティティとは何か?長い歳月をかけて分かったことが以下の事。
ってことで、ブランド指針を 「OUR ORANGE, OUR SYMBOL」と定め、プロジェクトを進めていきました。
そして、この後また書きますが、アップデートされた新エンブレムについても、「継承と進化」を原則としており
今回のプロジェクトにかかわったTakramの田川さんは、
と仰っていました。
過去のオレンジとエンブレムを一度分解し、良いDNAを継承しつつ未来を体現する形に再構築した。いやあ、非常によくできていますな。
話が脱線しますが、継承とかDNAとか聞くと、EXILEの24karatsが思い浮かぶのは筆者だけでしょうか苦笑
まあ今回新たに定めたエスパルスオレンジに新色が使われていることからも、まさに
「桁外れの混じり気ないオレンジ」かつ
「唯一無二の計り知れないオレンジ」が出来て
「We ain't stoppin' at all 常に胸に掲げる新エンブレム」
なわけですけどね苦笑
②長期に晒し丹念に聞きみんなの想いでブラッシュアップ
今回、このプロジェクトがサポーターを含め多くの人たちにとって納得感の高いものになった要因のひとつとして、このプロジェクトのプロセスが完璧に近かったからだと考えています。
プロジェクトを進めていく中で、サポーターの…市民の声を合計2回(2018年10月と2019年1月各一か月間)、聞く機会を設け、それ以前にも、サポーターや関係者の方々など多くの人たちからの意見を元に、エスパルスのアイデンティティを再確認していき、その上で、有名なデザイナー集団と新エンブレムを作っていきました。
OUR SYMBOL, OUR ORANGE
ここの「OUR」には、サポーターも市民も含まれている。
そりゃそうだろって話ですが、
海外では、イングランドのカーディフが、オーナーの独断でチームカラーを変更し大バッシングを食らった例があります。しかも理由が青より赤のほうが強く見えるから…。これは極端且つまれな例ですが、チームカラーやクラブ名、歴史の重みとそこから生まれているアイデンティティを甘く見ていたら、エスパルスのリブランディングもうまくいっていなかったと思います。
逆に、マンチェスターシティは、新エンブレムの案や125周年記念ユニのデザインをサポーターから意見を募り、最も支持が集まったものを採用して、高い評価を受けた例もあります。
その意味では、サポーターや市民を置いてきぼりにせずに、順序立てて行ってくれた今回のリブランディングは、より大きな価値があるといえます。
なお、サポーターからの合計2回コメントでは
などの意見があり、ブラッシュアップの際にその声がしっかりと反映されていきました。
改めてこのアニメーションを見ても、旧エンブレムのDNAはそのまま受け継ぎ、良い部分を残したうえで、ブラッシュアップされたことがよく分かると思います。(加えて、青の三本線には、理念である「夢と感動と誇り」の意味が追加)
③テクノロジーへの対応
上の写真は、1997年のイヤーブックに掲載されていた旧エンブレムです。
よく見なくてもお分かりの通り、「SHIZUOKA☆SHIMIZU」「EST.1992」の文字がありませんね。地球儀も雑に再現されています。
旧エンブレムは1996年12月15日に発表され、1997年シーズンから使用されました。
つまり、使用され始めた年のイヤーブックの段階からすでに、印刷上文字が潰れる…どころか簡略化せざるを得ない状況が生まれていたのです。
と評価したうえで、デジタル環境に対応したものを作りたいという意向もありました。
加えて、リブランディングを通じて再確認したアイデンティティであるオレンジの配色を一番多く盛り込み(旧のほうは白の配色が一番多かった)、長年愛されてきた旧エンブレムの遺伝子を受け継いだエンブレム完成を目指し、何度もブラッシュアップを重ねてきたそうです。
また今回、旧エンブレムの時のように公募の形をとらずに、クラブ内で予め厳選した案に対して、サポーターからコメントをもらいながら完成させる形をとりましたが、そこにはテクノロジーへの対応の観点からはっきりとした理由がありました。
リブランディングを通して、そうした問題にも解決した新エンブレムの作成に動いていたわけです。Takramさんとタッグを組んだのもそれが理由でしょう。テクノロジーにも対応したスタイリッシュな新エンブレムと新フォントは、今後様々なシーンで活躍することも期待されます。
ほかのクラブの例と比べてみるとさらに面白いです。
まずはユベントス。彼らのエンブレム変更は、世界中に衝撃を与えたといってもよいでしょう。全く新しい形になり、超シンプルなロゴへと進化しました。
ユーべもエスパルスと同じく、ブランドの「Reframe」を行ったわけですが、エスパルスと違う点は、かなりビジネス寄りであること…フットボールの枠を超えたマーケット拡大を強く意識した戦略の下で作られたのです。
50周年を迎えた東京ヴェルディも、ユベントスなどの試みにインスパイアしたリブランディングを行いました。ただし、ユーベほどガラッとではなく、読売サッカークラブからの象徴である始祖鳥(エンブレムの真ん中にいる鳥)は受け継がれ、外枠と文字部分が大胆に変わっています。
エスパルスも当然こちらを意識していたとは思いますが、DNAを受け継ぎ、アイデンティティの象徴として再構築するんだという要素が強いことがよく分かります。
プレミア王者マンチェスターシティは、2016年に過去の伝統を復活させる形でエンブレムを変更。特に意味のなかった星っっ3つです!!や、ラテン語で書かれた「戦いにおけるプライド」の文字をなくし、過去にも採用し汎用性も高い丸型の中に、マンチェスターの正しいほうのクラブであることを示す要素をより前面に押し出しています。
この4クラブの例だけでも、エンブレムのアップデートに際して重きを置いたポイントがそれぞれ違うことがよく分かりますね。(当然ですが)
ただ共通している点もあり、どのクラブもテクノロジーへの対応(時代に合ったもの)を意識した上で、それぞれに明確なコンセプト、若しくはアイデンティティが表現されているのです。
④プロセスを含めた丁寧な発表と説明
まあまだ各々思うところや納得できない部分もあるとは思いますが、ウェブ上で進捗状況を報告、経緯や案もオープンにしていたことなどからも、よく言われる「説明責任」は十二分に果たした思いますし(なんか上から目線ですね苦笑)、上記の通りサポーター含めた共同作業で進めていったプロジェクトだったといえます。
またサポーターを交えてのリブランディング発表会は、ウェブ上での発表より遅いタイミングでしたが、元社長曰く、活字じゃ伝わらない思いを伝えたいとのことで開催されました。
ここまでしっかりされると、軽はずみに前のエンブレムのほうがよかった、エンブレムにお金かけるな、なんて言えませんよね。まあ思っている人のほうが少ないとは思いますが…
肩が凝ってきたので手短に済ませて次に行きます。
⑤これからが大事
Perfumeは、ライブや曲で表現することで「Reframe」の形を結果として示すことができます。
では、エスパルスは?
「RE-FRAME」されたエンブレムを身にまとったチームが、会社が、サポーターが、今回再確認したクラブのアイデンティティを体現して初めて、リブランディングプロジェクトのゴールの1つに到達すると思っています。
今季のスローガンである「RE-FRAME」は、2017年からのリブランディングプロジェクトの延長として、また新たなリブランディングプロジェクトがスタートするんだとも解釈できるのです。
しかし、その道のりは決して簡単ではないでしょう。
特に、チームのコンセプト、戦術を「RE-FRAME」して結果を出すまでには、想像以上に時間がかかるのです。
それが例えスター軍団であっても…
ペップであっても…
おっしゃ Let's 世界征服だ
まさにインベーダーインベーダーとなってマリノスをはじめ世界8クラブを傘下に置きながら、経営や育成のノウハウを共有するだけでなく、彼らを通じてマンチェスターシティというブランドを世界に拡散し、ビジネス面においてのブランド価値を高めて世界征服を本気で企んでいるシティフットボールグループ(CFG)。
そんなCFGの中心であるマンチェスターシティは、アブダビの王族シェイクマンスールが2008年からオーナーになってから、欧州最強クラブを目指して、大金を叩いて選手や育成、スタジアムや練習施設などに豪快に投資しながら日々進化…「Reframe」しています。
そんな彼らも、クラブの改革にはしばしば時間が掛かっています。
2016-2017シーズン、
シティは先述の通り、新エンブレムを採用。エスパルスと同様に丁寧なプロセスと明確なコンセプトをもとにアップデートされました。
そして、チームとしても大規模な改革を敢行します。
数年前から熱望し幹部含め獲得のために準備し続けてきたペップグアルディオラの招聘に満を持して成功。より攻撃的なスタイルに変わり、各ポジションに求められる役割も変化したため、ペップのサッカーにあった補強が進められました。
中でも、キーパーに対し、セービングだけでなくビルドアップの起点として足元の技術を要求。レジェンドだったGKハートを事実上の戦力外扱いでローンに出し、バルサで活躍していたブラボを獲得するなど、徹底して「RE-FRAME」されました。
しかし、ペップシティ一年目は、開幕ダッシュこそするも、スタイルの浸透に時間がかかり選手層もまだ不十分だったために、無冠でシーズンを終えることになります。
ビルドアップの段階でキーパーやディフェンスラインでのミスが目立ち、攻撃でも引いた相手に対して崩す術や決定力が乏しく、思うようにいかない試合が何度もありました。また、期待されていたブラボもミスを連発し、前の守護神ハートと比較されたり、チームとしてもペップが前に率いたバイエルンやバルセロナと比較されて批判されたりするなど、逆風も吹いていました。
それでもクラブはペップを全面的に支持。サポーターも多少戸惑い批判はしながらも、我慢強く、時に無我の境地で見守ってきました。
さらなる補強と大幅な人員整理(サイドバック4人放出しメンディとダニーロ獲得など)をして挑んだ翌シーズンは、安定した戦いを見せて首位を独走。勝点100の偉業を成し遂げるなど様々な記録を更新して見事リーグ制覇を達成。翌シーズンには、中心選手のデブライネが離脱を繰り返すも、ベルナルド含めた代わりの選手たちが躍動。史上初の国内四冠を達成したのです。
日本でいえば、マリノスも同様です。CFGの手が入った当初は批判もされていましたし、確かに結果も出ていませんでした。しかし、多少変化しながらも軸はブラさずに貫き通し、チャンピオンをつかみ取りました。変革には勇気とともに時間がかかるものなのです。
エスパルスにはCFGの血は流れていませんが、おそらく世界中のクラブを参考にしながら、「RE-FRAME」しようとしています。良い意味で裏切ってほしいですが、チームとして今シーズンは苦労すると思っています。しかし、クラブは変わる勇気をもって新たな時代を切り開こうとしています。負けが込む時期もあると思いますが、じっくりと腰を据えて長い目で見守る必要があるでしょう。
何度でも言いますが、ペップシティでも一年かかったんです。目先の結果だけにとらわれて、サポーターが例えば、ヴォルピや立田のビルドアップのミスなどに過剰反応したり、ポゼッションにこだわり過ぎてバックパスやシュートへの意識が低くなった時にスタジアムでザワザワしたり、ネガトラで前のめりになり過ぎてカウンターで失点した時に過度に批判したりすれば、選手もスタッフも「変わる」勇気が失われてしまいます。仮に、河井がゴトビ時代のようにSBをやったり、ヘナトが(可変時に)CBを担当しても全く不思議ではない。今のペップシティに限ってもジンチェンコやフェルナンジーニョがその役割を普通に求められているのですから…。
ちなみに、監督経験のないクラモフスキー氏を監督に置いたことについて不安に思う方がいるかもしれませんが、筆者は割と楽観視しています。というのも、ペップがバルサ時代からずっと右腕としてコーチをしていたトレント(写真ペップの右)が、二季前からニューヨークシティの監督に就任し、監督キャリアをスタート。それだけでなく、ペップのシティ就任と同タイミングでコーチになったアルテタも、今年からアーセナルで監督業を始めました。クラモフスキーもボスの下で攻撃的サッカーの遺伝子を吸収していた人物。彼は彼らしく監督としてチームを進化させてくれると思っています。
まああとは、何を隠そう、長谷川健太氏もエスパルスがJリーグでの監督デビューでしたしね。あの時だって一年目はかなり苦しみましたが、ブレずに継続したおかげで、タイトルこそ取れなかったものの強いエスパルスをある程度取り戻せた。今回は外部から来た人間だから来るもの拒んですぐに批判?もしそんな早漏がいるならば、その人こそ「RE-FRAME」する勇気が足りず、お花畑な脳内から抜け出せていないと言えるでしょう。日程発表の時に旧エンブレムを使っていたことにケチをつけていた人、要注意(小声)
The best thing
波乱万丈の2010年代が終わり、新しい時代の幕開けとなる今シーズン。
まだクラモフスキー体制の練習も試合も見たことがないので、4-3-3だの松原がどうだのといった戦術論はあまりしませんでしたが、
一歩引いた視点から、エスパルスの進もうとしている道を勝手に「RE-FRAME」して勝手に展望していきました。
もしも、新たなエスパルスのエンブレムを身に着けた者たちの覚悟が本気であれば、この先も訪れるであろうどんな試練であっても乗り越えていけると思います。
新たなエスパルスのエンブレムを身に着けた者たち…
「WE ARE S-PULSE」
そこには当然、我々サポーターも含まれています。
サポーターにできることなんてたかが知れているってか勝手に応援して勝手に期待している存在に過ぎませんが、我々だって腹をくくらなければいけません。
サッカー観、過去の栄光、クラブの在り方、応援の在り方、静岡清水の街の在り方、その他諸々の価値観……これらに関して、縛られていた過去の枠から「RE-FRAME」する勇気、覚悟、そして新しい知識を持つ必要があると思います。
悲願のリーグ優勝そしてその先の無限未来へ…
時計の針はまだ動き出したばかりなのです…
ではまた。