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続・小中教育の最前線

前回のブログでは、5月時点の小中教育の状況を書きました。

地域の小学校では、6月から、クラスを半分に分けた午前・午後の授業からはじまり、続いて6月の3週目からは全員そろって午前だけの短縮授業がはじまりました。
しかしながら、給食や午後の授業が無いなど、まだまだ通常とは異なる形態です。

今回は、学校が休業した場合でも、全員に平等に教育の機会を与える義務教育はどうあるべきかを2つの観点から考えてみました。

新しい分野をどう教えるか

休業期間中の公立学校は、学校から与えられたプリントをこなして出席とみなす対応でした。やっていることだけ見ると夏休みなどの長期休暇の宿題と同じなのですが、決定的に違うのは「新しい分野に取り組む」点です。

子供にとって、今まで見たことが無い分野は、自力で対応は難しいものがあります。例えば、うちの小4の子供は、算数で分度器を使った角度の測り方と、角度の描画という新たな分野にてこずっていました。
角度とは交点から見た2つの直線の関係です。交点から離れるほど線と線の間の距離も離れていきますが、角度としては当たり前ですが同じ角度です。距離が長くなっても角度は同じという概念は納得しづらいようでした。

また分度器の使い方も厄介です。目盛りが二重にふってあり、角度が時計回りか反時計回りかで、使う目盛りを変えることは新しい概念です。
この学習を、プリントを渡されて「教科書を読んで角度を測ってみましょう」だと、子どもが自力で行うことは困難だと思います(算数の天才児だと一瞬で理解できるのでしょうが………)

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学校では先生が黒板の前で大きな分度器を操って説明すると思います。
家庭では親が教えざるを得ないのですが、共働きの場合は日中は無理ですし、親がリモートワーク中や専業主婦などで家にいる家庭でも、片手間で教えられるものではなく、教えている間は業務や家事が完全にストップするでしょう。

全員に平等に教育の機会を与えるのが義務教育とすると、現状の対応は不十分です。
もちろん学校の先生方も、家庭に教育を丸投げしたいわけではなく、文科省や教育委員会の方針から逸脱するわけにもいかず、仕方なくこうなってしまったのだと思います。

授業中止のような状況の中、なるべく平等な教育環境を整えるには、全員が見ることが出来る教育動画を用意するのが一つの手だと思います。

コンテンツは教育テレビやスタディサプリなど既存の流用からはじめ、徐々に学校ごとの独自コンテンツに広げていくのが良いと考えます。
動画配信のシステムとしては、先生側はYoutubeなどへの動画アップロードで対応するとして、生徒側はインターネットへの接続と再生機器が用意できるのかの問題が残ります。
教育機会の平等提供のためには、再生環境が整わない家庭に対し、学校の空き教室や地域拠点などを活用し、密にならずに動画が閲覧できるような設備を整えることが必要だと考えます。

インターネット接続環境と再生機器をセットで家庭に配るのも手ですが、平等の観点から全員に配るべき、という声や、逆に機器が不要な家庭に配って税金の無駄使いという声がでてくることが予想され、施策のハードルは高そうです。

動画授業については、今回のような授業中止の状況で使うためだけに準備するのではなく、平常時でも授業欠席者に向けて運用することで、ノウハウを蓄積し続けるのが良いと思います。

モチベーションをどのように保つか

勉強が好きで教科書をどんどん読み進めてしまう生徒だと、今回の機会はチャンスだったと思います。好きな勉強を好きなだけ進めてもよいことに気づいた天才型の人々が、数年後に大活躍してコロナ世代と呼ばれるようになるかもしれません。ただ、義務教育は万人向けなので、少数の天才が現れたから良かったねとはいきません。ほおっておくと遊んでしまう子供でも勉強に向かわせるモチベーションアップ策が必要です。それにはやはり先生とのコミュニケーションが重要だと考えます。先生との対話から学問の面白さに気づきモチベーションがアップするのもよくあることです。

コミュニケーションといえばZoomやTeamsなどのビデオ通話アプリの利用が考えられますが、先ほどの授業動画で出てきた問題と同様、インターネット接続と機器を用意する問題があります。やはり家庭・学校・地域拠点など複数の入口を用意しておくべきと考えます。

ビデオ通話アプリは授業に使うのもよいのですが、個別にコミュニケーションが出来るという特性を生かして、モチベーションアップ策に特化するのも良いと思います。具体的には、生徒一人一人に対し、学習進捗確認や分からないところの質問コーナーなどの実施が考えられます。
個人面談や家庭訪問など「かしこまった」イベントは普段の学校でもありますが、平常時からビデオ通話アプリを活用した気軽なコミュニケーション手段が取れるようにしておくのも良いでしょう。

最後に

結局のところインターネット接続環境と機器の問題が大きく、現状では道具が無いから何もできない、という状態になってしまっています。学校側も手をこまねいているわけではなく、家庭のインターネット接続環境と機器についてアンケートを取り、状況を知ろうとしています。
今後、学校側は家庭環境の現状を見て、次の手を打ってくるものと思います。その際には学校任せにするのではなく、家庭側でも、例えば通信環境が整わない家庭向けへのアドバイスや、学校以外で通信できる拠点づくりに協力するなど、地域全体での協力が必要だと考えています。

IT系企業に所属する企業内診断士です。