プログラム 今堀拓也 作品個展 vol. 1 ヴィブラフォン・打楽器奏者 會田瑞樹のソロによる自作品リサイタル
ロサ・カエルレア 主催コンサート vol. 1
今堀拓也 作品個展 vol. 1
ヴィブラフォン・打楽器奏者 會田瑞樹のソロによる
自作品リサイタル
出演
會田瑞樹(ヴィブラフォン、打楽器)
有馬純寿(エレクトロニクス)
今堀拓也(作曲)
2023年10月1日 (日) 13:30開場 14:00開演
会場:トーキョーコンサーツラボ
後援:JSSA先端芸術音楽創作学会
助成:野村財団
主催:ロサ・カエルレア
ご挨拶
本日は「今堀拓也 作品個展 vol. 1 ヴィブラフォン・打楽器奏者 會田瑞樹のソロによる自作品リサイタル」にお越しいただき、誠にありがとうございます。
作曲作品個展開催は長らくの夢でしたが、普段より長くお付き合いをいただいている會田瑞樹氏、有馬純寿氏にご協力いただいて、この度ようやく開催の運びとなりました。
今回は、ヴィブラフォン奏者で現在破竹の勢いである會田瑞樹氏を迎え、今堀拓也作品による會田氏のソロ・リサイタルとしてお届けします。
前半は會田瑞樹氏の委嘱により2021年に作曲したものの40分と長大なため、初演時には第1楽章のみの部分初演であった《ブルックネリアーナ》全4楽章完全版の初演を中心に行います。
後半はエレクトロニクスの第一人者有馬純寿氏を迎え、2011年に5分の作品として作曲した《錬金術》を30分に拡大して、改訂初演を行います。どうぞお聴きください。
本日ご来場下さった皆様、配信をご覧下さる皆様、普段よりご支援をいただいている皆様に、心より感謝いたします。
ロサ・カエルレア 代表 今堀拓也
ロサ・カエルレア Rosa caerulea は、今堀拓也によるコンサート運営を目的とした任意団体です。
本コンサートは、JSSA先端芸術音楽創作学会の後援を受けております。
本コンサートは、野村財団の助成を受けております。
関係各団体に感謝いたします。
今堀拓也さんのこと
今堀拓也さんの名前を初めて知ったのは、2013年に同じ世代の演奏家から放たれた強い憧れの言葉からでした。「多数の言語を操り、音楽の知識も豊富な今堀さん。」海外に憧れを持つ僕にとってもその言葉は鮮烈でした。凄まじい力を持つ作曲家であることをその時から感じておりました。月日が流れ、現場で再会したのは2020年『いつか聞いたうた』における細部のディレクションに、時には口論にもなりつつ、今堀さんのたくさんの現場経験が一つ一つの言葉から窺い知れました。そして今堀さんから放たれる一音一音の指摘は、レコードアカデミー賞に結びついたのだと今でも心から感謝の思いでいっぱいです。さらに今回は、有馬純寿さんの力強い共演を得ました。2011年JFC作曲賞でご一緒したことがはじまりとなり現場でご一緒できることに心から嬉しく光栄に思います。
今堀拓也さんの音楽。氏の音楽は個展でこそ浮かび上がると感じています。通常、演奏家が委嘱する作品のサイズは10分、長くても15分程度になりますが、今堀さんの音楽はそのような枠組みには収まりません。今回の機会を通して、今堀拓也さんの音楽を多くの方々に知っていただけたらと思っております。
會田瑞樹
プログラム
ほたるこい Venite le lucciore ヴィブラフォン・ソロのための (2020年) 5分
ブルックネリアーナ Bruckneriana ヴィブラフォン・ソロのための (2021年)
(全曲版世界初演) 40分
I
II
III
IV
(休憩 15分)
風景 Paysage 映像音響作品 (音響 2012年、映像 2014年) (映像つき版日本初演) 5分
キャピュシーヌ・ビリー、クリステル・シルヴァタンカン (映像)
Capucine Bily et Kristell Silvatancun (vidéo)
錬金術 拡張版 Alchimie prolongée ヴィブラフォン、マリンバとエレクトロニクスのための
(2023年)(改訂版世界初演) 30分
I
II
III
IV
V
以上、全て今堀拓也作品
曲目解説
ほたるこい Venite le lucciore ヴィブラフォンのための (2020年)
會田瑞樹CD『いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の叙情』(スリーシェルズ 3SCD-0058)のために作曲した。原曲はわらべ歌である。 Mi-Sol-La-Si の4音からなる原曲をもとに、それらを重ね合わせることによって、あえて調性的な語法からずらしている。ドビュッシー《フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ》冒頭の和音が引用されている。
私が蛍を間近に見たのは、2012年6月にイタリア・アッシジ郊外の山奥のレジデンスに1ヶ月間滞在した時である。人里離れて隣家までも山道を歩いて10分という世間と隔絶された環境で、作曲に集中して過ごしたが、夜になると山の沢から草むらに飛んでくる蛍の群れの光点の動きが幻想的であった。冒頭の弓による伸音は、その光の飛び方を描いている。アッシジの滞在経験は今でも時折思い出し、作曲の発想源になっている。
ブルックネリアーナ Bruckneriana ヴィブラフォンのための (2021年) (全曲版初演)
2021年會田瑞樹ヴィブラフォンリサイタルのために會田瑞樹氏の委嘱で作曲した。
會田瑞樹氏と私はブルックナーファンという共通点があり、ブルックナーを題材に作曲することを試みた。2018年にオーストリア文化庁の芸術家レジデンスに招聘され、3ヶ月間ウィーンに滞在することになり、私はミラノの滞在を切り上げてレンタカーに家財道具をまとめて引っ越し、途中その車でリンツ郊外にあるザンクトフローリアン修道院を訪れた。ブルックナーの棺は地下聖堂に安置されており、中庭には見事なイヌバラの株が茂っていた。その時の印象をもとに作曲したのがこの曲である。またブルックナーは宮廷オルガニストでもあり、普段よりミサ中のオルガン演奏には欠かせない即興演奏を通じて作曲の構想を温めていたことも念頭に置き、ヴィブラフォンという會田氏の使いこなす楽器で、そこからオーケストラのユニヴァーサルな響きが広がることも念頭においた。
ブルックナーの諸法の様々な特徴、例えば二重付点リズムや全休止などを取り入れつつ、特定の音程(短2度、短3度、完全4度とその転回形からなるいくつかのモチーフ)とその反行逆行形をもとに構成している。第3までの主題を持つソナタ形式で、展開部の最後にクライマックスをあえて持ってこないといったブルックナーの特徴も踏襲している。しかしながら、機能和声は原則的に避けている。ブルックナーの《アヴェ・マリア》をはじめ、複数の交響曲の素材(未完成の《交響曲第9番》第4楽章のスケッチも含む)が断片的に引用されている。
初演時は第1楽章のみ演奏したが、今回は全4楽章40分の全曲初演である。
今回の全曲初演を機に、Universal Edition より出版し、會田瑞樹氏に献呈する。
https://www.universaledition.com/takuya-imahori-8411/works/bruckneriana-36539
風景 Paysage 映像音響作品 (音響 2012年、映像 2014年) (映像つき版日本初演)
キャピュシーヌ・ビリー、クリステル・シルヴァタンカン (映像)
Capucine Bily et Kristell Silvatancun (vidéo)
2012年に前述のイタリア・アッシジのレジデンスに1ヶ月間滞在した時のフィールドレコーディングをもとに制作したサウンドスケープ作品。前半はアッシジで夜に収録したコオロギ類の羽音とそれに似せたModalys(後述)の擦弦楽器の圧力を上げた音を素材とし、後半は昼間に収録した鳥や雨の音が中心となっている。アッシジの野外コンサートでこの曲を再生した時、同じ鳴き声の鳥がやってきてスピーカーに向かって鳴き交わした。アッシジで祀られている聖フランチェスコは鳥に説教したという逸話を持ち、それを追体験した気がして感動した覚えがある。
2014年にジュネーヴ・コルナヴァン中央駅のリニューアルに伴うジュネーヴ音楽院とジュネーヴ美術学校の演奏展示イベントとして駅構内エントランスホールで再演し、ジュネーヴ美術学校の学生2人により映像が付けられた。数日後にジュネーヴ音楽院大ホールでも再演された。
2015年には東京日仏学院のCCMC (Concert et colloque de musique contemporaine) にて音声のみ再演された。
錬金術 拡張版 Alchimie prolongée ヴィブラフォン、マリンバとエレクトロニクスのための (2023年)
2011年に5分の作品として作曲したが、今回はこれを30分に拡大し再作曲した。(スイス音楽著作権協会SUISAには別作品として登録してある)
マリンバは木質、ヴィブラフォンは金属質の鍵盤を持つ楽器である。物理モデル音響合成プログラムModalysによって、体鳴楽器としての木質と金属質の間を漸次的に行き来するさまざまな打撃音を生成して用いている。
2011年にJSSA先端芸術音楽創作学会の主催により、東京電機大学で行われたACMF (Asia Computer Music Festival) アジア・コンピュータ音楽祭で正木恵子により初演。2014年にスイス・ジュネーヴ音楽院内の自主演奏会にてチンシュン・チュウにより再演し、同年ジュネーヴ音楽院打楽器科教授フィリップ・スペーサーによりスペイン・マドリッドの夏期講習会で課題曲として取り上げられた。これらは全て5分版である。
今回は拡張版の初演となる。全5楽章で、第3楽章はフラクタル(細部の断片が全体の形状に相似すること。パセリや人参などのセリ科の花や、野菜のロマネスコ、リアス式海岸の地形などに見られる)を用いている。第4楽章は1,2,3,5,8,13のフィボナッチ数列(前の数字を足すと次の数字になる数列)を置き換え、その総配列をまたフィボナッチ数列の順に採択した。それぞれアルゴリズム作曲プログラムOpenMusicで自動作曲した。1, 2, 5楽章は手書きで作曲している。
プロフィール
會田瑞樹
1988年宮城県仙台市生まれ。2010年日本現代音楽協会主催 ”競楽Ⅸ” 第二位入賞と同時にデビュー以降、これまでに300作品以上の新作初演を手がけ「初演魔」の異名をとる打楽器/ヴィブラフォン奏者。作曲家として2019年第10回JFC作曲賞入選、2021年リトアニア聖クリストファー国際作曲コンクールLMIC特別賞受賞。最新アルバム『いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の叙情』は年間最優秀ディスクとなる第59回レコードアカデミー賞受賞。 ヴィブラフォン、現代作品の魅力を多彩に紹介した成果により令和2年度大阪文化祭奨励賞、令和3年度宮城県芸術選奨新人賞受賞。かなっくホール レジデントアーティスト。郡山女子大学短期大学部非常勤講師。 [website] http://mizukiaita.tabigeinin.com
[CD] いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の抒情 會田瑞樹
(今堀拓也《ほたるこい》収録)スリーシェルズ 3SCD-0058 https://www.3s-cd.net/2020-11-03/
有馬純寿
エレクトロニクスやコンピュータを用いた音響表現を中心に、現代音楽、即興演奏などジャンルを横断する活動を展開。これまでに数多くの演奏会で電子音響の演奏や音響技術を手がけ高い評価を得ている。2012年より国内外の現代音楽シーンで活躍する演奏家たちと現代音楽アンサンブル「東京現音計画」をスタートする。第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞芸術振興部門受賞のほか、秋吉台国際芸術村「ペルセポリス」ソリスト、東京現音計画、東京シンフォニエッタのメンバーとして、サントリー芸術財団佐治敬三賞をこれまで複数回受賞している。国内外の実験的音楽家や即興演奏家とのセッションや、美術家とのコラボレーションも多い。現在、東京音楽大学准教授、帝塚山学院大学、京都市立芸術大学非常勤講師。
今堀拓也
1978年横浜生まれ。2001年玉川大学文学部芸術学科卒業、2003年パリ・エコール・ノルマル・アルフレッ ド・コルトー音楽院高等ディプロム修了、2005-06年フランス国立音響音楽研究所IRCAM作曲研修課程修了、2014年スイス・ジュネーヴ州立高等音楽院修士課程作曲専攻修了。2017年イタリア国立ローマ・アカ デミア・サンタチェチーリア研究科課程作曲専攻を満点および賞賛付きの最高位評価で修了。ならびにミラノ市立クラウディオ・アバド音楽学校指揮予備科修了。土居克行、三界正実、平義久、ジャン=リュック・エルヴェ、フィリップ・ルルー、ミカエル・ジャレル、ルイス・ナオン、イヴァン・フェデーレに作曲を師事、ローラン・ゲイ、杉山洋一に指揮を師事。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会(ドイツ)、サントル・アカント講習会(フランス)、ロワイヨモン「新しき声」講習会(フランス、下記オランダ・ガウデアムス財団より奨学金を得ての参加)、コンポジット(イタリア)、サヴェリスパヤ(フィンランド)、ISA(オーストリア)、武生国際作曲ワークショップ(福井県)、秋吉台の夏(山口県)の作曲講習会、ティチーノムジカ(スイス)の指揮講習会を受講。2001年に16人アンサンブル作品《Circle of Time 時の環》でガウデアムス国際作曲賞(オランダ)を受賞。ドナウエッシンゲン音楽祭(ドイツ)、ラジオフランス・プレザンス音楽祭、横浜みなとみらいホール委嘱演奏会「ジャストコンポーズド・イン・ヨコハマ」、旧・自由ベルリン放送(現ベルリン・ブランデンブルク放送)「現代の音楽 Musik der Gegenwart」番組公開録音演奏会、ニコシア・ファロス国際現代音楽祭(キプロス)、ジュネーヴ・アルシペル音楽祭(スイス)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア)等で作品が演奏されている。ゴットランド島ヴィスビー国際作曲家センター(スウェーデン)2012年および2015 年レジデント作曲家。2018年4月より6月までオーストリア共和国文化庁ウィーン芸術レジデンスKulturKontakt Austria招聘作曲家に選出される。2019年に三管オーケストラ作品《Con mille fiori che sbocciano così belli 綺麗に咲く千の花とともに》で、バーゼル作曲コンクール(スイス)第3位受賞。同年イタリア共和国マッタレッラ大統領よりゴッフレード・ペトラッシ賞奨学金を受賞。2020年、三管オーケストラとエレクトロニクスのための《Cristallistion 結晶作用》でKLANG国際作曲コンクール(フランス)第1位およびモンペリエ国立オペラ管弦楽団特別賞受賞。
今堀拓也 今後の予定
(詳細は全て、下記・今堀拓也ウェブサイトをご覧下さい)
映画『ネズラ1964』
(監督:横川寛人、音楽:今堀拓也、制作:スリーワイ 2021年)
2023年10月4日 Blu-ray 発売 Amazon他で販売予約受付中
映画『HOSHI 35/ホシクズ』
(監督:横川寛人、挿入歌作曲:今堀拓也、制作:スリーワイ 2023年)
2023年10月21日 劇場公開 池袋HUMAXシネマズ
クラリネット協奏曲《鳥たちの対話 De Avibus Dialogum》 アンサンブル版(2017年)再演
ヤルダ・ザマニ指揮 アンサンブル・レゾナンツ(アンサンブルのクラリネット奏者が独奏)
2023年12月11日 於 エルプ・フィルハーモニー小ホール(ハンブルク、ドイツ)
楽譜販売
Universal Edition
https://www.universaledition.com/takuya-imahori-8411
本日のコンサートは、後日動画配信を予定しております。(有料 1,000円)
約2週間後より公開し、1ヶ月程度配信いたします。
詳細は下記・今堀拓也ウェブサイトにて近日お知らせいたします。
[website] https://takuyaimahori.mystrikingly.com QRコード右記