![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171057087/rectangle_large_type_2_bc29aabfa31749fb847300a08dbde7b4.png?width=1200)
【完全解説】日本のエンタープライズセールスが“世界一難しい”理由と、その乗り越え方
【完全解説】日本のエンタープライズセールスが“世界一難しい”理由と、その乗り越え方
こんにちは、マッキーです。社内でのエンタープライズセールスについて考えることがあり、言語化したのでnoteに残しつつ、シェアしたいと思います。
「日本のエンタープライズセールスは世界で一番難しい」──ちょっと大げさに聞こえるかもしれません。でも実際、大企業相手の営業には、数多くの障壁が立ちふさがります。ところが、その難しさを突破できる人材はとても希少で、今後さらに重宝されるはず。
この記事では、
なぜ日本のエンタープライズセールスが難易度MAXなのか
どう全体像を捉えて取り組めばいいのか
どんな能力を身につければ成功に近づけるのか などを、私の経験や具体
的な解説を交えながらまとめました。
1. なぜ「日本のエンタープライズセールスは世界一難しい」のか
1-1. 人材の流動性が低い → 役割が属人的になりがち
日本企業の平均勤続年数は約12年。アメリカと比べて3倍ほど長く、ビジネスパーソンの移動が少ない傾向があります。その結果、「引き継ぎに2年かかる」「担当者の仕事がブラックボックス化」など、意思決定までに時間がかかりやすい。いわゆる「この仕事はあの人にしか頼めない」状態が多発するわけです。
1-2. 組織構造が複雑 & 合議文化
「課長補佐」「部長代理」といった役職や、各会議体へのルートが複数存在することも珍しくありません。さらに、日本には “根回し” という文化が根強く、組織内のステークホルダー全員の納得を得なければ物事が進まないことも多い。スピード感に欠ける反面、多くの面子を尊重するための粘り強いアプローチが必須です。
1-3. 情報収集の難易度
LinkedInユーザー数(北米2.2億人に対し日本300万人)などを見ても明らかですが、日本では「オンライン検索だけで簡単に意思決定者にリーチする」ことが難しいです。個人情報保護が厳しかったり、そもそもSNSにまったく顔を出さない経営層が多かったり...。結果として「誰がキーマンなのか」を探す工程が長期化します。
1-4. 過剰奉仕文化の名残
1990年代以降、それまでの「猛烈営業」から一転して「顧客第一主義」を極端に推し進めた歴史があり、企業によっては過度な手厚いサービスが当たり前になっている場合も。
「顧客が自分でやるべきレポートまで営業側が代行する」など、どうしてもリソースがかかる。一部の大口取引先にがっつり奉仕し、なかなか他のクライアントを開拓できない...という現象が常態化しています。
2. エンタープライズセールスの全体像
エンタープライズセールスの核心は「大企業を相手に、大きな契約や長期的な取り引きを成立させること」。しかし一度決まって終わりではなく、その先の拡張(アップセルや別部門への水平展開)こそが本番です。
2-1. アカウントベースドマーケティング(ABM)
特定の大口顧客に絞る: マーケやインサイドセールスで広範囲にアプローチする“量”の手法とは違い、「この業界のこの10社に注力する」という“質”に特化した戦略がABMです。
ティアー分け: 絶対に押さえたい8社、チャンスが大きそうな20社... など、ターゲットに優先度をつけ、リソース配分をコントロールしていきます。
接点づくり: ラウンドテーブル(特定業界の役員同士を集める会議)などを仕掛けて顧客のハイレイヤーに直接アクセス。「ネットで探してメールを送る」だけではたどり着けない啓発手段を駆使します。
2-2. 営業プロセスは「Budgetの確保」がカギ
セールス活動では、そもそも予算(バジェット)があるかどうかが一大テーマ。ほとんどの場合、「競合が既に取っている予算を奪う」か「来期・補正予算から新しく作ってもらう」かの2択です。
予算を持っているか確認する質問術
いきなり「予算ありますか?」はNG。相手のビジョンやDX推進の背景を掘り下げつつ、「もし良い提案ができたら予算年出していただけそうですか?」と丁寧に誘導します。
10ステップのプロセス
コーチ(情報提供者)との接点
チャンピオン(推進者)把握
提案スコープ決定
ブリーフィング・上申資料のすり合わせ
エコノミックバイヤー(最終決裁者)との商談
コンペ(他社提案との比較)
内諾
法務(リーガル検証)
購買・セキュリティチェック
稟議・契約締結
2-3. アカウントプラン
別部門への展開を視野に
最初に1つの部署で導入実績を出し、その成功体験をタテ(上層)やヨコ(他部門)に広げ、最終的にグループ全体へリーチするのが理想。
組織図+ウェット情報「バイヤー相関図」
大企業の中には表面的な組織図に映らない“パワーの流れ”があります。なので「誰が反対派か?」「誰と誰が仲がいいのか?」といった人間関係の把握が勝敗を分けます。
3. エンタープライズセールスで求められる3つの能力
3-1. 変数をコントロールできる力
事業計画レベルでの提案
お客様の売上構造・コスト構造・採用計画など“事業全体の数字”を理解し、何をどう変動させると成果が上がるのかを俯瞰する力が必要です。「営業を頑張れば売上が伸びます」だけでなく、長期視点でROIを確信させる提案を組み立てる力がカギ。
3-2. プロジェクトを畳み切れる力
品質・コスト・納期・リスク管理
大規模な契約は、受注だけでは終わりません。納品~導入~運用までがひとつの「プロジェクト」。途中で発生する問題の火消しや、社内外リソースの巻き込みも含め、最後まで責任をもって畳み切る力が必要です。
情報伝達を徹底し、無駄作業を削減
分業や過剰なレポート作成などを見直し、本当に重要なタスクだけに集中する。
BtoB大企業案件はとにかく関係者が多いので、“誰がどこまで理解できているか”を常に把握する。
3-3. 価値共創の伴走ができる力
バウンダリースパナー
企業と企業、部門と部門をつないで新しい価値を作り出す“架け橋”となるのが理想のエンタープライズセールス。
“短期収益”と“長期ビジョン”の両立
目先の数字だけに没頭すると、大企業内で大きく広げるチャンスを逃しがち。
一方で、数年先のロードマップばかり語っても予算化はされません。
両方の視点を押さえ、最大のリターンに向かって伴走できる人は希少性が高い。
4. まとめ:エンプラは「難しいからこそ大きい」
日本のエンタープライズセールスは
組織が複雑
予算が取りづらい
根回し必須
過剰奉仕文化が残っている といった理由から、世界でも最難関レベル。 しかし、ここで結果を出すセールスは本当に希少で、一度信頼を得れば長期かつ大規模な取引を生み出せます。さらに、AI時代になっても人間同士の利害調整やプロジェクト推進力は代替しにくく、むしろ価値は上がると感じています。
エンタープライズセールスは、一朝一夕で身につくスキルではありません。ですが、大きな成果を出せば自社にも大きく貢献し、社会全体を動かせるような醍醐味があります。もし興味がある方は、ぜひ自社のターゲット企業を絞ったABMや、しっかりしたアカウントプラン作りから始めてみてください。私自身、「日本の営業水準を底上げしたい」という想いで、これからも知見を発信していきます。それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!