本の紹介10冊目 橘玲さんの著書『上級国民/下級国民』
今回紹介するのは橘玲さんの著書『上級国民/下級国民』です。
バブル崩壊後の平成では、労働市場生み落とした多くの「下級国民」たちが存在しています。
彼らを待ち受けるのは、共同体(社会との結びつき)からも性愛からも排除されるという残酷な運命です。
一方、それらを独占するのは少数の「上級国民」であり、現代は世界的レベルでこの分断(上級国民/下級国民)が起きています。
本書は、今現在わたし達がどのような社会を生きており、どのような潮流のなかにいて、これからどのような社会になっていくのかを学べる本となっています。
【著者の橘玲さんについて】
橘さんは、元・宝島社の編集者で雑誌『宝島30』2代目編集長を務め、日本経済新聞で連載を持っていました。
2006年には、『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補(すぐれた物語性を有する小説・文芸書に贈られる文学賞)となります。
デビュー作は、経済小説の『マネーロンダリング』であり、投資や経済に関するフィクション・ノンフィクションの両方を手がけてもいます。
2010年以降は社会批評や人生論の著作も執筆しており、主に『言ってはいけない—残酷すぎる真実(新潮新書)』、『働き方2.0vs4.0 不条理な会社人生から自由になれる(PHP研究所)』などが挙げられます。
【上級国民とは?】
まず、「上級国民」という言葉は、「エリート」や「セレブ」といった「上層(上流)階級」とはニュアンスが異なるということです。
本書では、
「エリート」や「セレブ」は、「努力して実現する目標」です。
それに対して、「上級国民/下級国民」は、個人の努力がなんの役にも立たない冷酷な自然法則のようなものとして捉えられているというのです。
と語られています。
まえがきでは、2019年4月、東京・池袋で起きた、87歳の男性が運転する自動車暴走の事件を引き合い出しています。
こちらでは、31歳の母親と3歳の娘がはねられて死亡したにも関わらず、運転していた本高級官僚の87歳男性は逮捕されませんでした。
その事件の2日後に、今度は神戸市営バスにはねられて2人が死亡するという事件が起き、運転手が現行犯で逮捕されました。
そこで、
「池袋の事件を起こした男性が逮捕されないのも、マスコミが“さん“づけで報道しているのも「上級国民(元高級官僚など)」だからに違いない」
「神戸のバス運転手が逮捕されたのは「下級国民」だから」
との憶測が急速に広まりました。
ちなみに、逮捕されなかったのは、高齢のうえに事故で骨折して入院していたからだと報じられています。
(本書はそこに端を発しています。)
【日本のサラリーマンは世界でいちばん会社を憎んでいる】
本書では日本が貧乏になった理由として、
「他国と比べて労働の生産性が低いから」であり、日本人の働き方社会の仕組みそのものが間違っていると著者は指摘しています。
日本のサラリーマン(15歳〜64歳の男性)は世界で一番仕事をしているにもかかわらず、労働生産性がアメリカの3分の2しかありません。
また、「エンゲージメント(会社への関与度合い、仕事とのつながりを評価する基準)」は、
日本は世界22ヵ国の中で最下位です。
(1位はインドの25%、日本はマイナス23%)
そこで著者は、
日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界でいちばん長時間労働しており、それにもかかわらず労働生産性が低いということになります。
と語られています。
【最後に】
本書では、今現在の日本および世界の社会についてと、今後どのようになっていくのかを学ぶことができます。
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!