VOL.10「15分でわかる社会起業の一歩!その2!地域社会人大学院開校レシピ”一年間の軌跡”

2-2 第4回目

第4回目は、10年くらいの友人二人に講義をお願いしました。一つは「トポロジーの世界」、そして、「マニフェスト入門」です。

第1限の「トポロジーの世界」は大学院で博士号まで取得した数学博士の講義です。元々地元小学校のPTA卓球で知り合いになり、ご主人が私の前のPTA会長になります。

女性でもあり、主婦の方であるので人前でお話しすることに不慣れな面もあり、恥ずかしがり屋さんで、ストレスや抵抗感も間違いなくあったかと思われます。

また専門レベルが東京大学数学博士ということで我々のような数学の素人とはレベルが違いすぎるため、大学院講義のテーマである「小学5年生にもわかるようなクラス」ということに非常に苦労されたと思います。そこを本当に工夫してくださり、「ドーナッツ」や、「ひらがな」などを上手くサンプルとして活用しながら、誰にでも優しく且つレベルの高い数学の美しい世界を表現してくださいました。参加者にもとても好評でした。

よくこの「小学5年生」のコンセプトについては、「難しい」という意見をいただきます。もっと申し上げると「無理だ」っておっしゃる方も少なからずいらっしゃいます。

ただここばかりはこの大学院の理念にも関わる強いこだわりですので、容易に変更することは考えておりません。

なぜなら、これこそが長く社会人生活を経験してきた方が地域に溶け込む最初のハードルだと考えているからです。一般的に日本の会社は、いい意味でも悪い意味でも「よく知っている人の集まり」の中でかなり長い時間を過ごします。それはある意味効率的であり、経済的でもあり、また日本社会の当時の主要な産業の質からしても、競争力の源でもあったのではないでしょうか。(終身雇用や家族経営など)

私は40歳になり、地域の方々とお話しする際、一番反省したのは、“言葉使い”です。長くビジネスの世界で過ごしたおかげで、当たり前に使用している単語が全く当たり前でないこと、そしてさらに悪いことは、それを平易な言葉に変換、言い直せない自分がそこにはおりました。

もちろん、全く概念的に新しい言葉などは「カタカナ」から「誰にでもつたわる日本語」に変換しにくいことはわかります。例を挙げれば、「コンピューター」を「電子自動計算機」って言われてもピンとこないでしょうし、「ブラウザ」を直接日本語に私は訳せません。

試しに調べてみたら「WEBサイトを閲覧するために使うソフト」と書いてありますが、これでは知らない人への本質的な説明になりません。

そこで言い換える工夫が必要です。

私は一緒に住んでいる87歳の義父母と日々テレビをみながら食卓で過ごす時間が多いので、そこは少し鍛えられております(笑)。

例えば、「タクヤさん、ブラウザってなんなの?」と言われたら、「例えば、お母さんが、わからない言葉を辞書で調べたいときに、そのページを見つけることを探すことを手助けしてくれる機械みたいなもんかな〜」って答えます。(説明センスないですね…泣)

もちろんこの答えは、ブラウザーの正確な答えにはなっていないと思います。ただこれこそが私は地域社会で受け入れていただくための最初の努力ではないかと実感しております。

「郷に入れば郷に従え」は、誰でも知っている言葉なのに、アメリカにいけば多くの日本人は無理してでも英語を話す努力をするにも関わらず、地域に入る時には使う言葉に気を配らずに、“そのままの言葉”で強行突破しようとしてしまいます。

この言葉の違いが、“新人地域マン”の最初の挫折ではないかと仮説を立て、まずは「小学5年生」にも伝わる言葉をコンセプトにしているのです。

そして第二限目は、「マニフェスト入門」です。こちらも私の長男の同級生で、子供が小さい頃からの仲の良い「パパ友」です。歳も同じで、感覚は近い方の講義になり、事前の打ち合わせもかなりスムーズなものでした。お仕事自体は、建築家ですが、今はコンサルタント的な幅広い活躍をされていて、例えば、「ラグビーワールドカップ会場の資源分配の最適化」のお仕事や、オリンピックなど、公共性のあるお仕事もされている方です。

事前にどういうものが良いのかをブレストしながら、意見交換をさせていただきました。私が常に意識しているのが、生徒さんのクラスへの参画、双方向性です。つまり、講義を一方的に聞く立場ではなく、自らも参画して、より知識を体現できるようなクラスを求めております。

そのクラスを簡易な言葉に変換する(小学5年生)こと、そして、何かアウトプットする機会を設けることにより、知識が知恵へと変換されます。

知恵へ変換されたことにより、参加された方が、家に帰って、「ねえねえ、今日社会人大学院という集まりで、トポロジーって聞いたんだけど聞いたことあった?トポロジーって地下鉄の地図にも応用されている学問なんだって〜」というたわいもない会話を媒介して、

大学院の講義がどんどん家族や知人の“間”を紡いでいくことが目的なのです。

さて講義の話に戻りますが、二人で話した結果、「もしもあなたが落合中井村の村長であったら?」というタイトルで、地域の課題の炙り出し、そしてどうしたら解決できるのかをグループで話あい、みんなで共有する会にいたしました。

地元の議員の方にもご参加いただきましたが、多種多様な住民の方から、「地元で甘いものが買える店が欲しい」「朝の踏切が開かない」など地域の“虫の目”でみた生きた意見を抽出することができました。他の方の“お困りごと”を伺うだけでも、へぇ〜そういう視点もあるのかと気づくことができました。

講師の方にはなんと一つ一つの付箋をまとめていただき、その後フィードバックまでいただきました。まさしく自分の社会人生活で得た知見を地域に還流していただき、思い描いた通りの会でした。やはりビジネスマンの蓄えたスキルを生かさない手はございません。

「MOTTAINAI(もったいない)」です。国連のSDGs項目にも追加して入れていただきたい「地域住民の無形資産の再生化」です。



次回は3/14の配信を予定しております。

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