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ZARDとアイドル
AIに仕事を少しずつ奪われる時代さ
最近ZARDをよく聴いている。特にDON'T YOU SEE!!が好きだ。
坂井泉水の声は本当に耳に心地よい。耳だけ若返るような気すらする。
享年40歳。あまりにも早すぎる死が悔やまれてならない。
清楚な美人であることは言うに及ばず、坂井泉水の歌は何にも替え難い魅力がある。今回はその魅力は一体何なのかについて、考察していこうと思う。
80年代後半から90年初頭にかけて、アイドルブームだったと記憶している。
特に目立っていたのが「おニャン子クラブ」だ。放送作家出身の秋元康が手掛けたアイドルグループで、当時夕方から放送していた「夕やけニャンニャン」という番組に出ていた。
今のAKBの様な卒業システムはなく、ひたすら人数が増えていく形式だった。アイドルと言っても正直、女子大生に毛が生えた程度で、歌も素人そのもの。率直に言えば下手くそだった。
そこで出てくるのが「アイドル歌唱」だ。
可愛らしく歌うことによって、下手な部分をカバーして、なんとなく聴いてられる、平たく言えば可愛さで誤魔化す歌唱法のことだ。
しかもおニャン子などは、全員で歌うのでさらにぼやかされる。
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この当時はこういった歌唱法が主流の時代だったように思う。
尤も、従来のピンアイドル然りだ。
しかし、おニャン子などに代表される、このアイドル歌唱は突然パタリと途絶える。
工藤静香が出てきたことによって。
会員番号何番だか忘れたが、後期に出てきたこのフニャフニャしたヤンキー風のアイドルは、抜群の歌唱力を持っていたのだ。
アイドルでありながらこの歌唱力は一体どうしたことかと、当時中学生だった自分は驚いた。しかも、普段はフニャっているのに、歌い出すと別人のようにビシッとなるのだからたまったものではない。
このギャップ萌え歌手工藤静香によって、従来のアイドル歌唱は駆逐された。アイドルであってもしっかりとした歌唱力がなければ通用しない時代に入ったのだ。
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素人同然のおニャン子クラブから、例えばMISAのような本格的実力派シンガーまで、芸能界の女性シンガーの幅はとても広い。
では、坂井泉水はそんな中でどの辺の位置にいるのだろうか?
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本格的シンガーでありながら、どこかアイドル的要素を兼ね備えているのが、坂井泉水でないか。
抜群のルックスは言うに及ばず、その透明感あふれる歌声は、ZARD坂井泉水のイメージの範囲内にきれいに収まっているように思えるのだ。
特に高音部分の発声法にそれを感じる。
前段にアイドル歌唱について語った。
可愛さで下手さを誤魔化す歌唱法だと語ったが、それは裏を返せば、可愛いと思わせ、愛される為の歌唱法とも言える。
アイドルの仕事は愛されることだ。一度好きになってしまえばアバタもエクボ。カエルの声も小鳥のさえずりに聞こえてしまうものだ。
例えばMISIAのように、圧倒的な歌ボーカルを聴くと、すごい!と圧倒される。実際、坂井泉水はそこまでのボーカリストではない。少なくとも自分は圧倒されたことはない。本格的シンガーでありつつも、アイドルの要素を絶妙に含むのが坂井泉水の声だと思える。
あくまでイメージ内で収めているという点においてとても安定しているのだ。聞き手を裏切らないから安心して聴ける所が心地よいのだと思う。