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LOG ENTRY: SOL 14

 ああ、今日もやっちまった…。徹夜で出勤…。連休はどうしても昼まで寝すぎて昼夜が逆転してしまう。夜、眠りに落ちそうになるのに、あとちょっとのところで意識が戻ってしまう。仕方がないので早めに家を出る…。

 ところで週末は車の勉強ばかりしていた。火星探査車ではなく、僕が近々買おうとしてる車の方だ。直接ディーラーに話を聞きに行ったり、二人乗りベビーカーがトランクに収まるか試したり、聞いた話を持ち帰ってネットで裏を取ったり。買うというかリースにすることにした。リースとはいえ、人生で一番高価な買い物になるので、それなりに納得して決めたい。

 今日はいつもと違う駐車場に停めてみる。今まではメインゲートを越えて直進し、左手の山を登りながら空いてるところを見つけて停めていた。こっちの駐車場は全部屋外だ。今日はゲートを越えてすぐ右折し、坂をずーっと下って行く。通称「ストラクチャー」と呼ばれる5階建ての駐車場を見てみたかったのだ。実はこっちの方がオフィスには近い。が、早朝でないと下の方は空いてない。結局今日はぐるぐる回りながら最上階まで上がることになった。

 オフィスに着いてみると、なんと、電話機が届いてるではありませんか!ちょっと旧式で、たいした電話機ではないのだが、自分のデスクが段々とオフィスらしくなっていくのはちょっと嬉しい。よく見ると、画面に名前も表示されてる。つづり間違えられてなくて良かった=3。最近もらった学会論文賞の盾には「Takato Tshimatsa」って掘ってあったからな…。「タカト」はまだいい。「トゥシマツァ」って誰やねん。それはさておき、早速自分の携帯から試しに掛けてみて、オフィスに着信音を響かせてみた。うしし。

 J.H.がやってきて「今週水曜にJPLのいろんなクラブ活動のフェアがあるから行ってみれば?」と言う。ちょっと見てみたら、アジアンアメリカンコミュニティ、アフリカンアメリカンコミュニティ、LGBT(同性愛者)コミュニティーなど、いろんな人がコミュニティを作って、活動しているようだ。音楽系は、ジャズサークルがあって、バンド演奏もやるようだ。行ってみようかな。

 そのあとは、新入社員が入社してすぐ受けなきゃいけないオンライントレーニング。自分の好きなタイミングでやるような作りになっているのだが、退屈な内容だということは火を見るより明らかなのでしばらく放っておいたら、J.H.から今週中にはやりなさいと催促が。サイバーセキュリティー、企業倫理(Ethics)、利益相反(Conflict of Interest)、責務相反(Conflict of Commitment)、輸出入管理規制(Import/Export Control)など。ビデオレクチャー形式になっているもの、読み物+クイズ形式になっているものなどあったが、あまりに眠すぎて何回も同じところを行ったり来たりしていた。

 輸出管理に関しては、かなり厳しく取り決められている。貿易の話ではなく、技術的な情報が外国人に渡らないようにするための取り決めだ。外に情報が出る可能性のあるイベント(学会、講演、海外訪問、ミーティングなど)では、あらかじめ使用する資料の許可を取らなければならないことは一般の企業も同じだと思うが、それに加えてJPLは外国人に厳しい。キャンパス内では外国人訪問者は一人でうろうろしてはいけない。トイレに行くにも、アメリカ人ないし永住権保持者のエスコートが必要だ(さすがに個室の中までは入ってこないが)。僕が就職前に見学や講演や面接で来たときは、常に誰かが付き添っていた。それだけに、今自由に一人でうろうろできるのはとても新鮮。

 ちなみに、NASAが「指定国(Designated Countries)」と呼んで警戒している国のリストがある。「NASA designated countires」でググれば、そういう情報は一部出てくるが、やはり予想どおりと言うべきか、イラン・北朝鮮・キューバ・シリアなどが最も警戒されている模様。中国も指定国ではあるが、本国・香港・マカオ・台湾で扱いは異なるようだ。

 今日は眠いので少し早め(17:30頃)にオフィスを出ることに。ストラクチャーは全階同じ構造なので、何階に車を停めたか覚えておかないと、帰りに探すのに一苦労するということがわかった。いつもはメインゲートから帰るが、今日は東ゲートから帰ってみる。少し遠回りになるが、探検は好きな方だ。今日は疲れてるので、帰りに卵買って、納豆スパゲティでも作るか。

東ゲートを出て、うねうねした道を抜けると、JPL全体を見渡せる場所があった。右手前の格子状の建物が「ストラクチャー」。中央左の白いボーダーの建物が僕のオフィス。それにしても、ほんとに山の中にあるんだな。そりゃクマもライオンも出るわ。


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