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宇宙人、本当はいない?

 誰か、僕が最近気付いた「宇宙人、本当はいない」説を論破してほしい。

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人類究極の疑問

 Googleに「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」と問うと、「42」という答えが返ってくることは有名だが、人類にとって究極の疑問とは何だろうか。

 間違いなくトップ3に入るのは、

"Are we alone in the universe?"
「我々人類は宇宙で孤独な存在なのか?」

だろう。僕は職業柄、これまで「宇宙人はいるか」という質問を数え切れないほど受けてきた。その都度、僕はこう答えてきた。

「我々の住む天の川銀河だけで、2000億~4000億の恒星があります。そして観測可能な宇宙には、そんな銀河が2兆個あると言われています」

「超控えめに見積もって、恒星の100万に1つが惑星を持ち、その惑星の100万に1つに生命が存在し、その生命の100万に1つが知的生命であるとしても、全宇宙には100万の文明があるはずです」

宇宙人がいないと考える方が不自然ですよね

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ドレイクの方程式

 学部時代に受けた「宇宙科学」という授業で、ドレイクの方程式というものを習った。我々の天の川銀河に存在し、人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数Nを推定する方程式だ。

 ドレイクの1961年の推定では、天の川銀河に存在する地球外文明は、少なく見積もって20個、多く見積もって5000万個とのことだった。単純計算、全宇宙で見れば、少なくとも40兆個の文明が存在することになる。

※ドレイクの方程式には、各パラメータの決定に関して諸説あり、比較的最近の見積もりでは、Nはさらに広いレンジとなっているが、全宇宙で見れば最も悲観的に見積もっても100個の文明が存在するという計算になるようだ。

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 具体的な数はどうあれ、これだけ広大な宇宙に無数の星があって、高度な文明が我々地球人だけだと考えることは、状況証拠的に無理があることはお分かりいただけるだろう。「宇宙人はいると思うか」の問いに、論理的な思考をする人間なら、9割以上が「いる」と答えるだろう。

 僕もご多分に漏れず「宇宙人は当然いる」と思ってきた。最近までは。

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「宇宙人、本当はいない」説

 さて、本題。地球人が現在の文明を手に入れるのに、一体何年かかっただろうか。そしてそれはどこから数えればいいだろうか。

 科学を学び始めて500年。農業を始めて1万年。言葉を使い始めて30万年。道具を使い始めて280万年。ヒト族がサルを卒業して600万年。

 ヒト族の歴史としては600万年くらいと思えばいいだろうか。

人類の進化をわかりやすく説明してくれる面白い動画。※画面右下の[CC]ボタンで字幕をONにして、歯車ボタンから日本語字幕を選べます。

 では、そのヒト族が誕生する土壌が整うのにかかった時間も考えようとすると、結局地球最古の生命が誕生した38億年前ということになるだろうか。

 地球人が現在の文明に到達するまでにかかった時間は、たかだか38億年

 もちろん、これが最短距離ではないかもしれないし、この間、恐竜が誕生して絶滅したような"無駄"な時代もあったかもしれない。が、とりあえず38億年を要した、ということにしよう。

 というか、地球の誕生から考えても、たかだか45億年だ。

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 一方、宇宙が誕生したのは、138億年前。最初の恒星が誕生したのが、その1億5500万年後と言われている。

 つまり、最初の恒星が誕生して、地球に最初の生命が誕生するまでに、約100億年のリードタイムがある。

 これだけのリードタイムがあれば、この広い宇宙のどこかで、地球に先んじて生命が誕生し、その生命体が地球人に先んじて文明を持つに至ったはずだ。

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 では、なぜ、その知的生命体が地球に到達していないのか。あるいは、なぜ、その痕跡がないのか。

 また、生命体自身が物理的に到達しなくとも、なぜ、人工的な電波や有意信号が地球に到達していないのか。意図的であるとないとにかかわらず漏れ伝わってきてもよいのではないか。

 映画『コンタクト』で、26光年離れたヴェガから電波信号に乗せて送られてきたのは、2から101までの素数と、1936年のベルリンオリンピックの開会宣言を行うアドルフ・ヒットラーの映像という意図的なものだった。

 そこまで気の利いた電波信号でなくてよい。自然のものとは異なる、何かしらの人工的な電波信号でいいのだ。が、それすらキャッチできていない。

ということは、高度な文明を持つ宇宙人は存在しないのではないか。

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 これだけ広大な宇宙に無数の星があって、100億年のリードタイムもあれば、とっくにどこかで高度な文明が誕生していると考える方が自然だ。

 地球人のここ100年の文明の進化の速度を考えれば、たった数億年、地球に先んじて知的生命が誕生するだけでも、今の地球人に大差を付けて文明が進んでいるはずだ。

 ここに来て、逆説的なことに、宇宙人の存在可能性を後押しするはずだった「広大な宇宙」「無数の星」が、宇宙人との接触のなさを不自然なほど浮き彫りにしている。

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フェルミのパラドックス

 僕がこの疑問を持って、少し調べてみると、これは「フェルミのパラドックス」として知られる類の矛盾だということを知った。

 フェルミのパラドックスとは、物理学者エンリコ・フェルミが最初に指摘した、地球外文明の存在の可能性の高さと、そのような文明との接触の証拠が皆無である事実の間にある矛盾のことである。

 そして、このパラドックスにはいくつかの"解答"があるようなので、ひとつずつ見ていきたい。

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①宇宙人はすでに発見されているが、政府により公表が差し控えられている

 これに関しては、SETI(セティ)と呼ばれる地球外知的生命体探査プロジェクトの発見時の取り決めを見ていただきたい。

「確証が得られた発見は、科学界および一般のメディアに迅速に隠すことなく公開されなければならない。発見者は最初の発表の権利を持つ」

 この取り決めを信用すれば、まだ地球外知的生命の確証が得られた発見はなされていないということだろう。

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②宇宙人は存在し、過去に地球に到達していたが、最近は到達していない

 もしこれが本当なら、なぜその痕跡が見られないのか。全ての痕跡を跡形もなく隠滅することは難しいはずだ。

 ピラミッドやナスカの地上絵がその痕跡であるというのであれば、そのような原始的なものしか作れないような文明が宇宙に旅立てるとは到底思えない。

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③高度な文明があっても、恒星間空間に進出し地球にたどり着くための進化・技術発展における難関を突破できない

 これが一番もっともらしい解答なので、丁寧に考察したい。

 ラジオ放送が始まって100年弱くらいだろうか。もし、地球から数十光年以内に高度な文明が存在していて、彼らがこの電波をとらえて地球に向かおうと決めたら、近いうち宇宙人がやってくる可能性もあるかもしれない。

 ところで、文明間の距離はどれくらいなのだろうか。

 天の川銀河の半径は50000光年。ドレイクの方程式の解には大きな幅があるが、仮に1000個の文明が均等に点在しているとすると、文明間の距離はざっくり約3000光年。多く見積もって、1000万個の文明が均等に点在しているとすると、文明間の距離はざっくり約30光年になる。

 ということは、一番近所の文明が地球の電波を発見して地球に行ってみようという意思を持ったとしても、まだ向かっている途中かもしれないレベルだ。

 このような長期間の恒星間航行には、生物ではなく人工知能のみが搭乗している可能性もある。

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 と、ここまでの議論は、光速を超えることができないという物理的制約を守った場合の話。ここでもうひとつの疑問が首をもたげる。ワームホール(連絡路)はやはり存在しないのだろうか。

 ワームホールとは、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道である。そこを通ると光よりも速く時空を移動できることになる。

 SF小説や映画などで扱われることの多いワームホールだが、実際に真面目な研究も行われている。しかし、この広大な宇宙からワームホールを通ってやってきた宇宙人がいないということは、文明がどれだけ発達しようと光速の壁は超えられないということなのではないか。

 少なくとも、人類が向こうたかが数十年で超えられる壁ではなさそうな気がしてくる。そしてそれは僕を落胆させる。

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 ここまでは物理的に到達しようとする場合の話。仮に、これが難しくても、先に述べた人工的な電波信号の検出の線はどうか。

 これならば、宇宙人の意図的な行動を伴わなくても、彼らの文明が電波信号を使用しているだけで、宇宙にダダ漏れている。それが光速で宇宙全方位に飛んでいくので、地球にもやがて降り注ぐはずだ。

 仮に、地球より数億年早く、現在の地球人の文明に到達した知的生命体が存在しているとして、彼らの電波がすでに地球に届いているためには、彼らが数億光年以内にいればよい。さきほどの物理的到達よりはだいぶ範囲が広がる。

 しかしながら、人類はいまだ有意信号を検出できていない。やはり宇宙人は本当にいないのか。

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④文明が発展すると、核戦争や著しい環境破壊などのために滅亡してしまう

 これは一理あるが、全ての文明が必ずしもこうなるとは言い切れないので、決定的な解答にはなり得ないだろう。

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⑤知的生命体は、高度に発達すると異星人の文明との接触を好まなくなる

 これも、必ずしも全ての知的生命体がこのような性格を持つという論理的根拠はない。むしろ、一部の地球人のように、知的好奇心により突き動かされる宇宙人がいてもよいはずだ。

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⑥現在のところ地球人が宇宙で最も進んだ文明である

 これも、あり得なくはないが、先に述べた「広大な宇宙」「無数の星」「100億年のリードタイム」に鑑みると、こう考えるのは不自然だ。

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⑦地球を含む宙域は保護区指定されている(動物園仮説)

 これは面白い仮説だが、果たして何のために?

「余りに文明のレベルに差がありすぎるため地球に混乱を与えないため」
「地球の文明の自力での発展を妨げないため」

といった解釈があるようだが、宇宙人がそのように考える根拠が分からない。

 また、これを全ての宇宙人が厳守するだろうか。複数の文明が存在するとき、文明間でこれらの合意が取れていることも考えにくい。

※ちなみに、この仮説は1973年MITの電波天文学者によって提唱された。

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⑧宇宙人は高次元の世界に存在するため、地球人が認識出来ない

 これは案外あり得る話だと思っている。

 2次元の紙の上で生きている者がいたとして、彼らにとって我々3次元の存在は、その紙面と交差する面でしか認識されない。

 それと同様に、もし宇宙人が高次元の世界に存在するなら、いつもいつも我々の3次元世界と交差しているとは限らない。そしてときどき交差する瞬間に現れるのがUFOだ(これでUFOも説明できる)。

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⑨シミュレーテッドリアリティ

 映画『マトリックス』の世界のように、我々が生きているこの世界が、誰か外界人によるシミュレーションの中であるという解釈。

 ここまで来ると、もはや宇宙人の有無はどうでもよくなる。というか、宇宙人=外界人でよいだろう。

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まとめ

 念のため言っておくが、僕はこれをもって宇宙人の存在を否定する者ではない。そもそも、我々の宇宙のモデルが間違っている可能性だってある。

 SETI研究所の天文学者によれば「20年以内に宇宙人を発見する可能性は極めて高い」そうだ。何を根拠にそんなことを言っているのかわからないが。

 ちなみに、NASAのエンジニアとして、これだけは言っておこう。

20年以内に地球外生命体あるいはその痕跡を発見する可能性は極めて高い

 文明を持つに至ってはいない生命体でよければ、太陽系内にすら存在する可能性が高い。それは火星かもしれないし、木星の衛星エウロパかもしれないし、土星の衛星エンセラダスかもしれない。

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 僕自身は宇宙人はいてほしいと思っている。敵対的接触はしたくないが、友好的ならば会ってみたい。

 宇宙人が存在しないことの証明は悪魔の証明だが、宇宙人が存在することの証明は宇宙人を見つけてしまえばそれまでだ。その方がずっと簡単だ。

 願わくば、僕が生きている間に、せめて、この広い宇宙のどこかに宇宙人が存在することを知りたい。

だから誰か、どうか僕を論破してほしい。

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 最後に、映画『コンタクト』のセリフを引用して終わりにしたい。

宇宙にも人がいるの?

いい質問ね どう思う?

分かんない

いい答えだわ
科学的よ
大切なのは自分で答えを探すことなの
1つだけ確かなのは――
宇宙はとても大きいってこと
想像もできないほど
どんなものより大きいの
地球人だけだと――
スペースがもったいないわ

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