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LOG ENTRY: SOL 366

 気が付けば1年。振り返れば、公私ともにいろんなことがあった気がするけど、一瞬だった気もする。とにかく1年勤めてみて思ったことは、

JPLって超ホワイト企業( ゚∀゚)

ってこと。それはもう驚きの白さ。何が白いって、白黒の濃淡を決めるのは結局自分ってとこ。監視する人間はいない、強制する文化もない。

 僕は生来、自らを律する力に乏しく、追い詰められない限り、真っ黒に働ける人間ではない。また、働き方にムラがあり、毎日同じ濃度で淡々と働ける人間でもない。だからある意味危ない。

 JPLがいくら超ホワイトといっても、年中白い働き方ばかりしていると、そのうち仕事は来なくなるかもしれない。僕のような人間には、適度に尻を叩いてくれるボスが必要だ。

JPLのセキュリティ。WELCOME TO OUR UNIVERSE。職員は毎朝ここを通って"宇宙"に行くわけだ。1年前にここを通ったときは、右も左もわからない宇宙に放り投げられた気分だったが、今はどうだろう。少なくとも「宇宙で右と左を区別するのは容易ではない」ことはわかってきた。

★彡

HQ

 この夏、実は非常に忙しくしていた。というのも、ワシントンDCにあるNASA HQから、緊急の検討要請が入ったからだ。HQとはHeadquarters(ヘッドクォーターズ)の略で、つまりNASA本部のことだ。

 僕が入社以来携わってきた火星サンプル回収用ローバーをどこまで低コスト化できるかというお題だった。言い換えれば、多少の機能や成功率を犠牲にするとどこまで小型化できるか、というお題でもある。

 それを1〜2ヶ月で検討してほしいというのが、HQからの要請だった。

 これまで一緒にやってきたメンバーに、急遽招集されたメンバーも加えて、全部で10人。僕はこれまでの流れで熱設計を担当することに。

面倒なITAR

 ややこしいのは、10人中7人がU.S. Person(永住権含む)で、残りの3人が外国人であったこと。

 データやドキュメントによっては、ITARという法律により外国人と共有してはいけないものがあるので、10人全員の共有フォルダと7人だけの共有フォルダが分けて作られ、ものによって前者に投げていいものと後者にしか投げちゃいけないものがあるのだ。

 また、ミーティングも外国人が聞いてはいけない部分があり、その間、3人は部屋の外に出て待つ。そして、外国人も聞いてよい部分になると、外で待つ3人を部屋に呼ぶのだ。

 そもそもその建物も外国人が単独で入ってはいけない建物なので、ミーティングが終わって解散したあとも、誰かが彼らを出口までエスコートしなくてはならない。

 皆「こんなルール面倒なだけ」と思っているけど、違反するとお縄なので、渋々守っているのだ。

ボイジャー賞

 そういうわけで、この7月〜8月はHQの突貫の検討要請により忙殺された。

 今後HQのリクエストがトラウマになるレベル。。ってのは言い過ぎにしても、システムズエンジニアって、こういうときにHQとの窓口、っつーか矢面になるんだな。。

 HQの仕事がひと段落した頃、いつものミーティングを終え、エレベーターを待っていたら、僕と同僚2人が中ボスに「ちょっと来い。ボスがお怒りだ」的な言い回しで声を掛けられた。

 中ボスの顔と声色がシリアスだったので、何か悪いことしたかな、と思いながらボスの部屋に入ると、

ボス「君たちにボイジャー賞が出た」

ボイジャー賞?なにそれ?

 すると、一人ずつ小さな封筒から紙切れを出して文言が読み上げられた。僕のはこうだ↓↓↓

「火星サンプルリターンミッションにおけるローバーおよびヘリコプターを用いた地上運用の卓越したモデル解析を讃えて」

 ヘリコプターの解析は僕がやったわけじゃないが、もらえるものはありがたく頂戴しておこう。

 後日、給料日にちょっとしたボーナスも一緒に振り込まれていた。なるほど、JPLには恒例のボーナスがないかわりに、こうやってちょいちょいアワードを出して職員のモチベーションをキープしているわけか。

 たぶんボイジャー賞は、遅かれ早かれ皆もらうボーナスみたいなもんなのだろう。それにしても、タイミングがメモリアルだった。

 というのも、奇しくも、昨日はボイジャー1号の打ち上げ40周年。JPLでは連日40周年イベントが開催されていた。人工物で最も遠くに到達しているボイジャー1号。約200億km彼方を飛んでいる。

ボイジャー関係者で結成されたバンドが打ち上げ当時のヒット曲を演奏するなど。ボイジャーに搭載されたゴールデンレコードに収録されている『Johnny B. Goode』もあって楽しかった。下手くそだったけど笑

★彡

メンタープログラム

 2ヶ月ほど前から、メンタープログラムが始まっている。僕らのような新人に、JPL歴の長い先輩職員(メンター)をあてがって、いろいろなアドバイスをしてもらうというプログラム。

 2週に一度、1時間のセッションをしてもらっているが、これがすんごく良い。僕のメンターのW.W.は超ナイスガイで、日本の大学で数年教えてたこともあって、日本語も少ししゃべれる。

 彼は日本人の礼儀正しさと丁寧なサービスを絶賛していた。数年ぶりにアメリカに戻ったとき、ガソリンスタンドで知らない人に罵倒されて「あぁ、アメリカに戻ってきたなぁ」と、ため息が出たそうだ。

 彼が日本社会を"predictable (予測可能な)"と表現していたのが面白かった。彼はバスや地下鉄が時間通りに来ることなどを指してそう表現したのだが、僕にはそれがもう少し広い意味で皮肉に響いた。

ちゃんとした冊子があって「このメンタープログラムを通して何を達成したいか」などの具体的な目標を持って取り組むよう設計されている。

 最近のメンターセッションのテーマはもっぱら、良いプロポーザルの書き方。プロポーザルとは、研究・開発などの企画書のことで、これを書いて予算を取ってきて初めてプロジェクトにお金が付き、そこから給料が支払われる。

 僕は入社して半年くらいのときにプロポーザルをひとつ書いたが、それは通らなかった。電話がかかってきて「これは火星プログラムオフィス経由でHQと直接交渉するような案件なので、このJPL内部の資金は別の案件に回すわ」とのこと。このへんがまだよくわかってないんだな、おれ。

 そして最近またひとつ小さいやつを書いた。結果は来月。

★彡

NPオフ会

 6月末にNewsPicksのLAオフ会がビバリーヒルズで開催され、第一部で「NewsPicks×宇宙」と題して講演させていただいた。

 ピッカー懇親会ということで、学会発表みたいな話をしてもつまらないので、できるだけ視覚に訴えて、広く浅く網羅した。

 宇宙関係はビジュアルコンテンツに強いからズルい、と思う。いつも下駄を履かせてもらっている。それに、宇宙探査は誰かと誰かが傷付け合う話ではないので、たくさんの人から純粋に応援してもらえるところもズルい。

 まさかビバリーヒルズで講演することになろうとは思ってもみなかったが、僕の知識や考えをまとめる良い機会になった。講演の内容は、NewsPicksさんが以下のリンクにまとめてくれている。

宇宙のニュースを楽しむための豆知識【ピッカー懇親会リポート前編】
宇宙をめぐるメガベンチャーの競争【ピッカー懇親会リポート後編】
※懇親会ということで家族も一緒に参加したのだが、普段宇宙に全く興味のない妻は講演よりこの記事の方が面白かったと言っておりました。。(`⊿´)チッ

 第二部のBBQでは、他の業界の方々とお話できて楽しかった。いつもNPでアイコンを拝見してた方々もいらっしゃっていて、心の中で「ほんとにいるーっ」と叫んだ。

 自分で講演しといて言うのもなんだが、専門家による講演+ピッカー懇親会の形ってNPならではの良いソフトだなー、と思った。

★彡

勤続1周年の記念品にボールペンもらった。たいしたことのない普通のボールペンだった。さて、2年目。もう新人の言い訳は通じないな( -人-)

 今日はこのへんで。100日以上ぶりの日記となってしまったが、勤続1周年ということで重い筆を執った次第である。。(。_。)φカキカキ

 ってか書きたいことはいろいろあるんだけど、なかなか時間が取れねーーーーーーっヾ(*`Д´*)ノ"彡☆

 ってのは言い訳だね。次回は、皆既日食旅行、娘のイマージョンスクール入学、キュリオシティのことなど書きたい!乞うご期待!


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