LOG ENTRY: SOL 10
ぎゃぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!!!!出社するなり、いきなり「今日プレゼンできる?」とメールが…。いやまぁ、できるけどやなぁ…。もうちょっと早く言ってくれよ〜。一応メールには「今日が無理なら来週でもいいけど?」と付け足してあったけど、ここは逃げるわけには行きません。「Sure I can do it today!」と二つ返事で引き受けて、急遽今日の今日で、JPLの火星関係「有力者」たちの前で1時間のプレゼンすることになった。
とはいっても、話すのは僕がMIT時代にやっていた「宇宙ガソリンスタンド」の研究のことなので、プレゼン資料はばっちりそろっている。ソフトもプロトタイプは完成している。ただ、しばらくの間、この研究からは離れていたので、頭のリハビリが必要なのです。
僕がMIT時代に開発した、宇宙の物流を最適化するソフトウェア。ロゴも作ったりして、見た目にも結構時間をかけたので愛着がある。
プレゼンタイトルは「人類の火星への"最善"の道は?」。こういうときは、誠実で専門的で堅苦しいタイトルよりも、もっと大袈裟で抽象的で根源的なタイトルから入る方がいい。論文はもちろん誠実なタイトルで書くべきだが、プレゼンはあくまで論文に客を呼び込むための入り口。のっけからまじめにやりすぎるとオーディエンスの心はすぐ逃げていく。誰もが一家言あるようなでかいステージで挑戦的なタイトルを打ち出して、議論を白熱させる方がいいのだ。このあたりが下手くそな研究者は結構多い。
それから僕は、最初に必ず笑いを取るように心がけている。一番よく使っているのは、自己紹介のスライドで僕が宇宙服を着た写真。経歴詐称…。実はこれ、MIT時代の最初のアドバイザーで元宇宙飛行士の先生の写真をPhotoshopで首から上だけすげ替えたもの。あとネームタグも僕の名前に変えてある。そのネタばらしをすると、アメリカ人はたいてい笑ってくれる。でもこれ、もう6年前に作って(厳密に言うと仕上げは弟にやってもらった)、ずーっと使いまわしてるので、そろそろ新しいもの作らないとなぁ…。
1時間の予定だったプレゼンは、途中途中で議論が白熱したこともあって、1時間半にも及んだ。爆笑もあって、良い雰囲気だった。しかし皆さん頭が良い。ちゃんと本質を突いてくる。僕が作ったソフトのデモンストレーションをしているときに、皆であれこれ「ここを変えてみて」「あそこを変えてみて」といじりながら議論するなど。やっぱり火星コミュニティでこの話をすると、食い付きがハンパないな。最後は「とても楽しかったよ」と言ってくれて、プレゼンは無事終了した。仲間に入れてもらえた気がした。
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ところで、昨日注文していた90万円近いコンピューターは、上司J.H.にあっけなく承認され、それどころか「モニターはいらないのか、大きめのキーボードはいらないのか、あとTSAトークンも買いなさい」などといろいろ付け足してくる。TSAトークンではなく、RSAトークン*ね。J.H.は天然なのか?TFA (Two-Factor Authentication)とごっちゃになったのか?それとも、ただRの隣のTをタイピングしてしまったのか?いずれにしても、このRSAトークンを使えば、遠隔地からでもJPLネットワークに接続し自分のアカウントにログインすることができる。つまり在宅勤務や出張先などからの仕事も可能になる。
RSAトークンというのは、セキュリティ環境における個人認証のためのワンタイムパスワード生成器(合ってる?)。ちなみに、このRSAと呼ばれる公開鍵暗号システムはMITで発明された。発明した3人の研究者Rivest、Shamir、Adelmanの名前の頭文字を取ってこう呼ばれている。
明日は金曜だけど、例の9/80(SOL 3参照)によってお休み。隔週でやってくるこの金曜日のことをRDOと言う。「Resist, Destroy, and Occupy」の略で、労働者が徒党を組んで仕事を放棄し、抵抗・破壊・占拠する日。…というのは嘘で「Regular Day Off」の略です。JPLで働く日本人たちが、僕を歓迎するという口実のもと集まって、カリフォルニア工科大でBBQをやる予定。楽しみ。あと車も買いに行かなくちゃ。
山の上の方の駐車場から。やはりiPhoneでは満月や広大な景色は上手に撮れない。いかにもディダラボッチが出そうな雰囲気だ…。ごくり…。