LOG ENTRY: DAY 1 (SOL 1684)
1年1ヶ月ぶりの出勤。
リモートは辛かった。帰属意識は薄れ、働く意味はぼやけ、心も身体もゆっくりと死んでいく感覚があった。
ので、このまま化石になっちまう前に、プロジェクトを変えた。
出勤する仕事に。
そして今日初めてクリーンルームに入った。
長い1日だった。なんだか就職した気分。
DAY 1。
就職してしばらく不定期に付けていたJPL日記。タイトルは、映画『オデッセイ』の中で火星に取り残された宇宙飛行士マーク・ワトニーが日誌を付けていくやり方にならって「LOG ENTRY: SOL XX」としてきた。SOLとは、火星の1日(24時間40分)のこと。今日で就職1684日目なんだなぁ。
就職以来一番多くの時間を費やしてきた火星はいったんとろ火にして、しばらくは地球に目を向けるので、今日からDAY 1。ワトニーも地球に帰還して、宇宙飛行士候補生に授業を教える日をDAY 1としてた。
日記開始時「仕事に慣れてきた頃にDAYに変えるかも」と書いてたけど、こんな形でDAYを使うことになろうとは。
★彡
閑散。いつも血眼になって空きを探してた駐車場も、朝は1台たりとも停まってなくて、一瞬駐車を躊躇ったほど。夕方には2台停まっていた。
中庭にあった噴水も埋められていた。もともともう使われてなかったから別にいいんだけど。
僕のデスクやキーボードや娘が作ったマウスパッドは、1年1ヶ月分の埃をかぶってひっそりと佇んでいた。食べかけのラッキーピーナッツはさすがに捨てた。半年以上ぶりに電源を入れた僕の最強スペックマシンは、あまりに長いことログインしなさすぎて、アカウントが停止されていた。