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宇宙探査を「システムする」

 新年早々、巷では予算切れにともない米政府が閉鎖されていますが、皆様方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

 米政府が閉鎖すると当然NASAも閉鎖されるのですが、NASA長官から全職員宛てに「もし予算が切れたら仕事の閉め方について月曜までに指示する」旨のメールが来たあと、すぐさまJPL副所長と局長から、

「おまいらは働け」

と、メールが来ました。NASAの10箇所のセンターのうち、僕らJPLだけは半分カリフォルニア工科大という特殊な機関で、政府が閉鎖しても、仕事は継続、給料も途切れません。

なのでJPLの探査機は落ちません。


★彡


 というわけで、新年あけましておめでとうございます。平成も30年となってしまいました。平成生まれがもう30歳になるんですね。来年には新しい元号に改元されるそうで。昭和生まれなんてもはや、

歴史上の人物ですよ( ¯෴¯ )


 ところで最近、母校の同窓会の東京支部である東京修猷会の会報に、お仕事紹介の寄稿をさせていただく機会がありました。字数制限があったので、あくまで簡単にではありますが、宇宙システムズエンジニアがどういう仕事なのか書きました。せっかくなのでこちらにも転載したいと思います。
※転載許可はいただいてます。

ちなみに会報はこちらの第30号をご覧ください。お隣は昨年TBS入社の喜入アナ。大学も同じ。しかもカリフォルニア生まれ。妻が昨年までTBSに勤めていましたし、何やら縁を感じますなーσ(◎◎¬


★★★ 以下、転載 ★★★


宇宙探査を「システムする」

 修猷時代から見続けた夢が叶って、僕は現在、NASAのジェット推進研究所でシステムズエンジニアとして働いています。いわゆるSEとは違い、日本では馴染みがない職種かもしれません。

 僕らの仕事は、宇宙探査機のひとつひとつの部品(サブシステム)の詳細設計をするのではなく、ミッションを安全かつ低コストで成功させるために、探査機全体の設計トレードオフやどんな技術を採用するかなど、ハイレベル(システムレベル)の検討をすることです。ハイレベルというと聞こえは良いですが、実際は広く浅くの何でも屋です。

 現在の仕事は大きく2つ。

 1つめは、火星探査ローバーのシステム設計。火星に生命の痕跡を探るため、火星の石や土のサンプルを地球に持ち帰るミッションです。僕が携わっているローバーは2026年打ち上げ予定。かなり先の話なので、わかっている条件からざっくり考えていきます。着陸地点が大幅にずれても制限時間内にサンプルを回収できるか。昼に走行し夜に機器を温める電力を十分確保できるか。火星表面を半年ほどかけて走行する間に季節は移り変わり、砂塵嵐が発生する可能性もあり、あらゆるシナリオを想定しておく必要があります。すべてうまくいっても、地球に帰還するのは2029年。気の遠くなるような話です。

 2つめの仕事は、小惑星探査機を自律化すること。光速でも数十分かかるような遠方の探査機を地球からコントロールするには限界があります。そこで、地上局からの命令を極力減らすため、探査機にどんな「頭脳」が積んであればよいかを考えています。僕の担当は、システムに故障が発生したとき、自動でそれを検知し隔離して修復させるような機能を開発することです。正直言ってこれまでの専門と違う分野なので、日々学ぶことばかりです。

 今は主に無人探査に関わっていますが、将来の夢は、人類が宇宙を安全かつ低コストで行き来できる、持続可能な宇宙輸送インフラを構築することです。そして月から地球を眺めながら、月で採れた氷でビールを作って飲もう!と企んでいます。また、福岡に宇宙の仕事を創りたいです。いつか宇宙ベンチャーを設立したら、修猷の皆さん、力を貸してください!!


★★★ 転載おわり ★★★


 以下、過去にシステムズエンジニアに関してつぶやいたツイートを羅列しておきます。昨年はサボり過ぎたJPL日記、今年はもっと頻繁に更新していこうと思っとります。それでは今年もひとつ、どうぞよろしく(=´ー`)ノ


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