
LOG ENTRY: SOL 3
今日は朝8:30から、僕が最初に就くプロジェクトのミーティングがある。ということで8:10頃出社。出社してみて自分のアカウントにログインし、スケジュールを見てみたら、そのミーティングは9時からだった。逆の勘違いをしてなくて良かった=3
記念すべき最初のプロジェクトは、将来の火星ミッションのローバー(探査車)のミッション&システム設計だ。現在JPLが計画しているFlagship(主要ミッション)のひとつに、2020年夏に打ち上げが予定されているMars 2020というものがある。ローバーが火星表面を探査しながら、火星の土や石のサンプルを集めて容器に格納し、それぞれの場所に置いていく、というミッションだ。そして、のちのミッションがそのサンプルを回収して地球に送り返すという想定になっている。僕の仕事は、その「のちのミッション」用のローバーについて考えることだ。
ミーティングでは、この研究プロジェクトの責任者E.N.と、実際に手を動かして研究していたA.N.に会った。僕はA.N.の仕事を引き継ぐという形。ちなみにA.N.は、3年前にMIT航空宇宙で修士を取って、JPLに来たそうだ。E.N.からひととおり概要を聞いて、A.N.が細かい説明をしてくれた。知れば知るほどわくわくしてきた。これまで、ローバーのシステム設計をやったことはなかったが、システムやミッションをモデリングしたり最適化したりするのが僕の専門なので、何をすればいいかイメージは湧いている。A.N.が「今日中に大量の資料を共有するよ」と言って、約1時間のミーティングは終わった。
その後、MIT時代からの10年来の親友であり、JPLは4年目になる日本人、M.O.に会いに行った。彼は、学位留学を志す日本人や宇宙を志す日本人にとっては、知らない人はいないくらいの有名人(ブログはこちら)なので、もはやイニシャルで書く意味はない。
小野は、僕の恩人だ。留学準備に始まって、MITでの生活、グリーンカード申請、JPL就活など、公私ともにずっとお世話になりっぱなしだ。普段は対等な友人のように接しているが、僕にとっては数少ない道標の一人。彼が優秀であることは誰もが認めるところだが、長いこと近くで見てきた僕は、彼が並の「優秀」で事足りるような器ではないことをよく知っている。強い情熱と意志と自由でオープンな精神と大胆な行動力。積んでるエンジンがハンパない。とてもじゃないが、僕には真似できない。
あまり友人を褒めちぎるのもキモチワルいので、話を戻すと、彼とはただ友人として会いに行っただけではなく、仕事の話をしようということで会った。彼はそれこそMars 2020の火星ローバーの仕事をしてきたので、JPLのことはもちろん、火星探査のことでも、いろいろと教わることは多い。彼と仕事仲間としてJPLで再会できたことは、僕にとって感慨深いことだった。
午後は、同じグループの大先輩R.S.が僕をまた別の「有力者」のところに紹介がてら連れて行ってくれた。僕のMIT時代の博士論文の核となるISRU (In-Situ Resource Utilization)という宇宙での現地資源利用の研究開発に関わりの深い4人の方に会った。皆ぱっと見50代以上のおじさんたちだった。僕のバッジを見て「LPRって何?」と聞かれた。永住権保持者のことだが、意外とアメリカ人は外国人事情に疎い。僕が「宇宙ガソリンスタンド」の研究を進めようと思ったら、おそらく避けては通れない有力者たちなのだろう。そのうちプロジェクトでお世話になるかもしれない。
今朝会ったA.N.から資料を共有してもらうまでは、特にやることがないので、タイムカードの入力の仕方を勉強した。JPLでは多くの職員が、「9/80」と呼ばれる、日本ではあまり聞かない勤務スタイルを取っている。1日の労働時間を8時間として、週5日40時間働くこと(これを「5/40」と表記する)が一般的な勤務スタイルだが、9/80とは9日で80時間働くというスタイル。すなわち、1週目の月〜木に9時間、金に8時間、2週目の月〜木に9時間働くことによって、2週目の金曜日をまるまる休みにしてしまおう、ということだ。つまり隔週で金曜日が休みになり、3連休がやってくる。
9/80は、とりわけ通勤時間の長い者にとっては、1回分の通勤をスキップできるので効率的と言える。渋滞のひどいロサンゼルスにおいて、R.S.なんかはサンタモニカの方に住んでいるので、1日2時間は車に乗っているそうだ。そういうことなら、8/80はどうだろうか。1日10時間働けば、毎週金曜日を休みにできる。あるいは、隔週で4連休。でも1日10時間はしんどいか。。などと考えながら、3日目が終わった。
夜は、家に食材がないので、自宅から徒歩3分の鉄板焼き屋へ。どこに行くにも車、のカリフォルニアで、こんなに近所でこんなにおいしい鉄板焼きが食べられるとは。毎週行くわこれ。