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人生のボタン対抗策

 突然だけれども、深夜の交差点で不思議な出来事があった。何故か信号が永遠に変わらず、いつまで経っても青信号が訪れない。どうしたんだろう。信号機が壊れちゃったかな?と思ったら、横に「夜間押ボタン式信号機」の記載があり、見事に一本取られてしまった。

 そして深夜だったからか、この信号機と同じようにボタンを押さないと、人生に何の変化も起こらないなぁ、とポエミーに思わずにはいられなかった。そして同時に、人生のボタンはもっともっと複雑だと感じずにはいられなかった。

 どのボタンを押せば何が起こるかも分からない。ボタンを押すために必要な対価もバラバラ。ボタンがどこにあるかさえも分からない。そんな人生に変化を起こすボタンたちの自由気ままな在り方に対し、自分たちはどんな対抗手段を取ることができるのか。少しばかり筆を走らせてみようと思う。

 一つ目の対抗策はボタン全押し。そもそも、どのボタンを押したら何が起こるか分からないなら、取り敢えず押してみるしかない。

 例えば自動販売機があったとして、喉が渇いて仕方ない状況。ボタンを押すとドリンクが手に入るけれども、何故か見たことも聞いたこともないドリンクばかりが表示されている。となればコインを入れて一つ一つ味見をしていくしかない、というイメージ。

 二つ目の対抗策はボタン探し。そもそも、目の前にあるボタンが全てとは限らないからこそ、探し続けてみるしかない。

 例えば自動販売機があったとして、普通は前面にボタンがあるけれども、側面にボタンがないか。地面と自動販売機の間の隙間、それこそ小銭が転がり落ちて回収できなくなるスペースにボタンがないかと探していくイメージ。

 三つ目の対抗策は特に思い付かなかった。深夜の思考に敗北だ。それはさておき、自分たちはそんな風にしていくつかのパターンで対抗できるけれども、実は対抗しないことの方が多い。

 このボタンを押したら何が起こるんだろう。ミカンジュースが出てくるって書いてるけど、トマトジュースが出てくるんじゃないかな。もしかしたら自動販売機が壊れていて、ボタンを押しても反応しないんじゃないかな。と、心配心配心配に絡め取られて、動けなくなってしまう。そして喉が渇いて脱水症状になって倒れる頃にやっと覚悟を決め、どうしてもっと早くボタンを押さなかったんだと後悔することになる。

 ボタンを押し続け、そして探し続けていこう。もしかすると想定外のトラブルに見舞われるかもしれないけれども、想定以上の幸せが舞い降りることだってある。待っていても自動販売機からドリンクが出てくることはない。昨日と違う今日を、そして今日と違う明日を願う皆様の一助となりますように。

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