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【体験談】学芸員課程のすすめ

大学で学芸員課程の授業をいくつか持ちつつ、博物館では学芸員実習を受け入れるというそれなりに学芸員課程と関わりのある仕事をしています。
そんな私が学芸員資格を取ろうと思ったきっかけと、学芸員課程を履修した感想をお話しします。


学芸員資格を取ろうと思うまで

大学に入学すると、はじめに卒業に必要な単位などの大学生活の基本的なガイダンスがあります。
多くの大学では教員免許、博物館学芸員、社会教育士などの取得できる資格についても説明があると思います。
私は教員免許をとろうと考えていましたが、その他の資格については関心がありませんでした。

そんな私が博物館学芸員の資格を取ろうと考えたのは学部1年が終わる春休みでした。
その2009年2月、ルーリン彗星という彗星が地球に接近し、肉眼でも見られるという天体イベントがありました。
地球科学を専攻していた私はルーリン彗星を見るため同級生たちと八ヶ岳に行きました。

ホコリでも撮ったのかと思うほど何も撮れていない夜空の写真(よく見ると線が…)

そしてその帰り、山梨県立科学館に立ち寄りました。
山梨県立科学館は愛宕山こどもの国という公園に隣接する博物館で、メインの利用者は幼児~小学生です。

博物館と言えば国立科学博物館というイメージを持っていた私にとって、調査研究や展示よりもレクリエーションや教育に注力している山梨県立科学館の施設や活動はとても新鮮なものでした。
もともと教育に関心があった私は教育といえば教職というイメージを持っていましたが、この経験を経て博物館でも教育に携わることができると感じ、学芸員資格を取ろうと考えるようになりました。

学芸員課程を履修してみて

博物館学芸員の資格を取るためにはいくつかの方法がありますが、最も一般的な方法は大学において所定の学芸員課程の単位をすべて取得し、大学を卒業して学士の学位を修得することです。
そのため私は学部2年から学芸員課程の授業を受けることにしました。

2025年現在、学芸員課程で履修しなければならない授業は9科目19単位です。
この単位数は2008年の博物館法改正によって定められたものですが、現行の制度に移行したのは2012年からでした。
ですので私が学芸員資格を取りたいと思った2009年は2008年改正前の制度で学芸員課程を履修することができました。

当時は科目の読み替えという制度があったことや、学芸員課程の必修と教職課程の必修で同じ授業があったことから、教職課程を履修中だった私は4科目履修するだけで済みました。
3科目を学部2年で、最後の実習を学部3年で履修して学芸員資格を取得することができました。
日本の博物館は圧倒的に人文系の博物館が多いため、学芸員課程でも資料の扱いや保存といった授業が多かった印象です。

博物館実習で作った展示

しかし2000年代後半というのはサイエンスコミュニケーションが急速に広まった時代でもありました。
2006年に内閣府が第3期科学技術基本計画を策定して科学コミュニケーションを推進し、国立科学博物館は「サイエンスコミュニケーター養成実践講座」を開始しました。

こういった時代背景もあってか、学芸員課程ではわかりやすい情報発信や伝わるコミュニケーションといった授業もありました。
私は大学院に進学して高校で理科の非常勤講師を勤めることになりますが、教職課程の授業よりも学芸員課程の授業の方が役に立ったと思っています。

最近ではビジネスでも伝える力が注目を浴びています。
ですので、学芸員にならなくても学芸員課程の授業はきっと皆さんの役に立つと思っています。
もし学芸員に関心があれば、ぜひ学芸員課程を履修してみてください。

ちなみに、もう大学なんてとっくに卒業したよという方もいるでしょう。
数は少ないのですが、通信課程だけで学芸員資格を取得することができる大学がいくつかあります。
私は博物館側として通信課程の博物館実習を受け入れたことがありますが、20代の私が小学校の校長を退職して博物館ボランティアになるために履修された方に指導するという変わった経験をしたこともあります。
既卒の場合は最短1年で学芸員資格を取得することもできますので、今からでも遅くはありませんよ!

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金井拓人  // 石文化研究者
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