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教養として知っておきたい地政学(神野正史)

 将来、東アジアにおいて国際的な仕事をしたい僕にとって地政学の観点から東アジアを勉強するのはいい機会だと思ってこの本を手に取った。

 まず、「地政学」という言葉になじみが薄い人も少なくはないかもしれない。それもそのはず、地政学は戦前の日本の戦争戦略を理論的に支えるものとして、活発に研究されたもので戦後アメリカによりその研究は事実上禁止に追いやられた学問であるのだから。しかし、いくら政治・経済を勉強してもこの分野の知識がないなら、国際関係の把握は難しいかもしれない。

 今回は東アジア中心に地政学を紹介してみたい。


1.日本の大陸進出

まず異論は多いかもしれないが、地政学的には日本の戦前の大陸進出は自己防衛であった。「え?帝国主義の行き過ぎの結果ではないの?」そんな声が聞こえてきそうだ。けれど考えてみてほしい。資源もない小国であった日本は明治以降列強の植民地化の危機に常に脅かされていた。宗主国と仰いでいた清帝国が英仏により半植民地化するなど時代は激変していた。当時の日本にとって最大の脅威は北の大国「ロシア帝国」だ。ロシアは常に凍らない港「不凍港」を目指して南下政策をとっていた。そのロシアの最大の関心は太平洋。朝鮮や日本を占領して太平洋に進出することを目論んでいた。日本が大国ロシアに占領されないためには、日本海の制海権と海への出口となる朝鮮、満州を抑える必要があった。と本書は言う。「資源の宝庫である同地域を占領すればロシアの脅威に対抗できるかもしれない。」そのような考えで、日本の大陸進出は始まったのだ。


2.第二次世界大戦

 第一次世界大戦まで日本は国際社会の支持を取り付け目覚ましい成長を遂げた。しかし、太平洋地域において勢力のバランスが崩れることを恐れた英米から「日本、脅威」とみなされる。そこから孤立化が始まり、日本にとって迎い風の時代となった。第二次世界大戦中日本が掲げた「大東亜共栄圏」は表上は「列強からのアジアの解放」を掲げたが、実際は日本のアジア支配の正当化と資源の搾取が本当の目的であった。この大戦の敗因を、僕は地政学的に①ランドパワーの大国ソ連・中華民国とシーパワーの大国アメリカを敵に回したこと。②小国、日本の割に合わない戦線の大きさになってしまったこと。そして、③日本防衛のための手段たる大陸進出が、目的にすり替わってしまったこと。にあると考える。もちろん、支配地での横暴な統制が民衆の反感を買ってしまったことも大きいとは思うのだが・・・いずれにせよ感情論が理論に勝ってしまう状況が当時の日本にはあったのかもしれない。


3.戦後の日本

戦後日本は、アメリカの「核の傘」に守られ軍事費に支出を減らす一方で大部分の国力を経済発展にそそぐことができ、世界2位の経済大国に上り詰めた。特に冷戦中には、日米安全保障条約のもと日本は「共産圏への防波堤」としての役割を担った。特に沖縄は、対中対ソの地政学的に「アジアの中心」としての役割から米軍のアジア作戦の中枢的役割を担った。

4.現代の日本

現代の日本において諸外国と解決すべき問題は多くあるが、ロシアとの「北方領土」問題が大きな一つであろう。そもそも、北方領土は日ソ共同宣言において2島の返還が約束されたが、日米安保条約の改訂によりソ連は2島返還を破棄。そして今に至っているという。ロシアが返還に二の足を踏んでいるのは、米軍が返還した島に基地を作ることを恐れているからだという。それもそのはず。資源豊富で太平洋の出口となる島は返したくはない。

 また、日本が中国との関係に気を配りつつ中国の海洋進出に敏感なのは、南シナ海がの日本の石油輸入ルートである「シーレーン」の通り道にあたるからだ。仮に、南シナ海が中国に占領されたら日本は石油を絶たれ経済が立ち行かなくなる恐れがあるのだ。

日本にとって韓国との関係も重要だ。現在両国の関係は冷え込んでいるが、韓国が日本の味方であることで、日本が「潜在的な敵国」である北朝鮮や中国と国境を接することがないようになっている。つまり、韓国が日本の緩衝地帯になっているのである。これは台湾においても同じであり、韓国や台湾が侵攻の危機に遭遇するならば日本の自国の国防上、全力で韓国と台湾を支援することが肝要なのである。


5.朝鮮半島・中国

 北朝鮮も中国やロシアにとっては重要な緩衝地帯であり、北朝鮮が崩壊すると中ロは「潜在的な」敵国である韓国と国境を接することになる。それゆえ、北朝鮮の崩壊は中ロにとって悪夢であり、中ロは北朝鮮を結局のところ支援する。このように朝鮮半島の分断は日米中ロといった大国の思惑が一致してしまった悲劇であると言えよう。

 中国が海洋進出するのにも大きな意味がある。中国は歴史上、大陸の騎馬民族との戦いに焦点をあわせる必要があり、海洋への進出は軽視していた。しかし、近代以降列強に海から蹂躙され海洋防衛の重要さを身に染みて学んだ過去がある。それゆえ、海洋強国になり時刻を防衛することの重要さを体現しているのである。また、海洋強国実現のため、中国は2050年までのハワイ進出を目標に掲げ、2020年までにフィリピン沖までの進出を計画していたという。

また、中国にとって主な仮想敵国の一つにインドがある。中印は互いに包囲網を敷いていて、中国による対印包囲網を「真珠の首飾り」と言い中国、バングラデシュやパキスタン、東アフリカによるインド包囲を目指す。一方で、インドは「セキュリティダイヤモンド」という対中包囲網を形成しており、それにはインド、日本、米国、オーストラリアが含まれる。

6.感想

東アジアの地政学を学んでみて、やはり政治や安全保障は地政学なしには語れないと感じた。これから地政学は日本でも注目される学問の一つになるのではないだろうか。


どうでしたか?地政学のことをもっと知りたいと感じたら、ぜひ「高評価、フォローよろしくお願いします!!









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