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閉店するゲームセンターに思うこと
つい先日の話だが、京都のゲームセンター「a-cho」が、2025年1月31日をもって閉店する、という情報がTwitterで流れてきた。
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もちろん田舎住みのゲーマーだった私は店舗に行ったことは無い。ただ、まだYoutubeのような動画投稿サイトが無かったころから、a-choでは積極的に対戦動画を配信しており、毎週配信されるランキングバトルの動画を楽しく視聴させていただいていた。
「いつか行ってみたいなあ」
そう思いながら結局行く機会には恵まれなかったわけだが、近年ではこうしたゲームセンターの閉店は決して珍しい話ではない。
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そんな閉店するゲームセンターの店舗数を研究されている方もいらっしゃるようだが、結局はインカムの良い(投入されるコインが多い)クレーンゲームへ主力を切り替えた店舗は生き残り、昔ながらのビデオゲーム(一般的なアーケードゲーム)に依存した小規模なゲームセンターは淘汰されている、ということなのだろう。
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これはゲームセンターに限らずゲームショップもそうだ。去年か一昨年に、昔から通っていたゲームショップに久しぶりに行った際、店舗フロアの8割以上がカードゲームを取り扱うスペースになっていて困惑したことがあった。
ゲームセンターがビデオゲームからクレーンゲームを主力とする店に変わったように、ゲームショップも生き残るためにはテレビゲームを捨ててカードゲームを主力にする必要があったのだろう。
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残念に思う気持ちはある、悲しく思う気持ちもある、だけど私はそういう時、必要以上に感傷に浸らないよう気を付けている。何故なら、その思い出の場所が無くなる原因と、自分は決して無関係ではないのだから。
1.ウメハラさんの話
ここで一つ、関係のありそうなウメハラさんのエピソードを紹介してみる。たしか何かの講演会だった思うが、その質問コーナーでウメハラさんにこんなことを聞いた若い方がいた。
質問者:
「私はゲームセンターが好きなのですが、最近閉店する店舗が多く、将来的に無くなってしまうのではないかと不安に思っています。ゲームセンターという文化を守るため、将来私に出来ることはないでしょうか?」
うろ覚えだが、要約するとこんな内容だったはずだ。
もはや家庭用ゲームの方が快適に遊べるようになったといえる格闘ゲームとは違い、音ゲーなどの大型筐体を使用するようなゲームは、今もゲームセンターという環境でのプレイがベストだ。
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この方はそういったゲームをプレイされているのかもしれないし、またはゲームセンターに集うコミュニテイ、人とのつながりを大事にしている方なのかもしれない。
対して、その方へのウメハラさんの回答は極めてシビアなものだった。
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ウメハラさん:
「ゲームセンターが無くなる、ということはこれはもうしょうがない。時代の流れというか…止めることは難しいのかなと。だから、まだゲームセンターがある今の内に噛みしめておくしかないんじゃないでしょうか。」
想定を上回るドライな回答に、私も少し驚いたと思う。出来るだけ言葉を選び、慎重に答えてはいたものの「出来ることは無い」とはっきり言ったようなものだったからだ。
仮に、私がウメハラさんの立場なら
「ゲームセンターは今、厳しい状況だと思いますが、私たちも大会などのイベントを開催するなどして、今後盛り上げていければ~」
なんて無難な回答をしたかもしれない。
しかし、そんなものはただの気休めだ。一個人がどうこうしたところで、全国のゲームセンターが閉店していく流れは止められると思えない。
それに、ウメハラさんは幼少の頃からゲームセンターに通っており、大晦日と元旦を除く363日の全てでゲームセンターに行くことを自身に課してきたプレイヤーだ。
おそらくは質問者の何十倍、何百倍という時間をゲームセンターで過ごしてきている。ゲームセンターという場所への想いや、作ってきた思い出の数も質問者の比ではないはずだ。
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それでも、そんなウメハラさんでも「しょうがない」と思うしかないほどに、時代の流れとは残酷で抗い難いものなのだろう。
そして、それを正直に質問者の方へ伝えたのは、質問者に対して、閉店していくゲームセンターという場所に対して、ウメハラさんなりに誠実であろうとした結果なのだろうと思う。
2.閉店する原因を作ったのは"自分"
昔楽しい時間を過ごした、ゲームセンターという場所が無くなるのは確かに悲しい。
しかし、筐体の代金や電気料、人件費等の経費が高騰し、ゲームセンターが悲鳴を上げている時、アーケード版よりも快適にプレイ出来るようになった家庭用版のゲームを家でプレイしていたのは他でもない自分自身だ。
ゲームショップが経営難で苦しんでいる時、家でダウンロード版のゲームを購入し、プレイしていたのも自分だ。通販やDL販売といったサービスが充実していくにつれ、そちらの方が便利だと、合理的に切り替えたのは私だ。
アーケード版と同等の品質で、憧れのプレイヤーと遠く離れた場所にいながらも対戦出来ればいいのに、と願い続け、ようやくそれが現実のものになったと喜んでいたのは私なのだ。
閉店の報を聞きつけ、久しぶりに来店してくれたお客だったしても、私がゲームセンターを経営している側だったとしたら「閉店してほしくなかったのなら、なぜもっと来てくれなかったんだ」と言いたくなることだろう。
だからこそ、ウメハラさんはゲームセンターが閉店していくことはどうしようもない時代の流れとして受け入れ、せめてゲームセンターが残っている今を大事にするしかない、と答えたのではないだろうか。
3.さいごに
だから私は、思い入れのあるゲームセンターやゲームショップが閉店する時でも、必要以上に感傷的にならないよう気を付けている。
残念ではある、悲しく思う気持ちはもちろんあるが、時代の流れと共にゲームセンターではなく家庭用ゲームへとシフトしていったのは、私を含むかつてゲームセンターに通っていた人々だ。
それは極めて合理的な判断であり、決して非難されることではないのかもしれない。個人商店が並ぶ商店街が消え、イオンモールに取って代わったのと同じようなことだろう。
しかし、決して簡単に忘れていいことでもないはずだ。
私たちに出来ることは、ウメハラさんが言ったように、その好きな何かがある“今”を、悔いの無いよう最後まで噛みしめながら、応援して過ごすことだけなのだろう。
失うものの代わりに得るものもある。過去の思い出に浸るよりも、”今”を大事にしていきたい。