絶対に伝えなければならないという覚悟
「絶対に伝えなければいけないことなんです」
そんな言葉から強い覚悟がひしひしと伝わってきた。
毎日ビデオジャーナリズムラボの3回目。フォトジャーナリストの高橋智史さんの話を聞いた。高橋さんは長年カンボジアの取材を続け、毎日新聞社主催の土門拳賞をこのほど受賞している。
「望遠レンズはあまり使わないんです」
講義のテーマは、「聴く力~被写体との距離感」。ゴミ山で生きる人々や、弾圧に苦しむ人など、危険な取材現場も沢山経験している。だが、こだわりは、望遠レンズを使用しないことだという。「現場の中に入り込みたいんです。危険であっても、外から望遠で撮っていては伝わらない。取材を重ね、会話を重ね、いろいろ分かち合うことで、距離間が近くなる」。その言葉の通り、高橋さんの写真は、表情など距離間がとても近い写真が多かった。被写体との距離感。その距離間を近くするために、カメラを持たずに最初会話のみをすることもあるという。自分を知ってもらい、思いを伝える。そのことで信頼されるのだろう。異国の地でコミュニケーションをとり、距離間を近くすることで、臨場感溢れる写真となるのだろう。
写真1枚1枚から溢れ出る言葉たち
高橋さんの講義は、真っ直ぐな言葉が多かった。驚いたのは、約1時間近く話していたが、事前に講義の準備をしていないという。いつも、その場その場で溢れ出るありのままの言葉を伝えているという。「頭からポンポン言葉がでてくる。カンボジアのことを思うと」。話しながら、目に涙を浮かべる場面もあった。長年、カンボジアを取材してきた高橋さん。1枚1枚の写真からストーリーを話していたが、その言葉は溢れ出たもの。決して準備された言葉ではなかった。
一体、何を伝えたいのか。
自分もそんな問いに日々悩んでいる。
高橋さんのように自然と言葉が溢れ出るように、私もなりたい。
そのように感じる講義だった。