ALGS Y4SP2プレイオフ EWCよりの世界スクリム変化推移と想定ロビーの総まとめ
29日夜、start
競技シーンファンの皆様ご機嫌。
世界スクリムも終わり、ついに本番を迎えるに至ったプレイオフドイツ。
世界スクリムを追えなかった、という貴方のために代わりに見ておきましたという更新であり、私なりの総まとめ書きなぐり。
これを読んでおけば、スクリムを追いましたというそれなりな顔で後方ニヤケ顔視聴ができるような記事にしたいと思う。
が、まあその、いつものそれなので信用するかしないかはあなたの判断にお任せ。
EWC直後世界スクリム開始~中盤
EWCを制したのはalliance。
ヒューズ(unlucky)、パス(Hakis)、バンガロール(effect)の構成で、スイングファイトを中心とした大外ムーブ。
allianceの大外ムーブについては省略するも、ロビー傾向としてはスイングファイト中心が想定される中、S22のUPDを経てどのような構成が登場するのかが一つの注目であった世界スクリムのスタート。
EWC王者allianceが不参加だった初日に衝撃を与えたのが、NOTMOISTのバンガロールヒューズクリプト構成だ。
対スイングファイトに備えるためのワットソン投入等、そこへ備える構成はやや目立つ中若干数を増していたクリプトインを試みるチーム。
当然ワットソンとクリプトというよく見るセットにはなるのだが、その中で異色を放ちそれを成功させたのがMOISTだ。
彼らのクリプト構成は、ファイトを有利に運ぶためというキルポイントを重視した外ムーブのクリプトであり20killoverという爆発的なscoreをたたき出したストームポイントの一戦から、世界スクリムはクリプトが支配するロビーへと動き始める。
MOISTのクリプト構成特徴は、数的優位を作ってからの運用にある。
Wxltzy、Gild、Timmyの近中距離に優れたスキルがある3人によりワンピックを成せたならば、その後にTimmyはドローンを操作することが多い。
その後にスモークを叩きつけ、前の2人がプッシュを仕掛けるのがMOISTの強力なパターンだ。
数的優位作り、その人数差を生かすために3人でプッシュを仕掛ける際、どうしてもドローンを操作している分遅れてしまうのがクリプトの問題点だ。
しかしにMOISTは、その順序を逆にすることで問題を解決した。
3人でプッシュを仕掛け、2人で仕留める。数的優位を人数で押し込むのではなく、ドローン操作による情報のアドバンテージ(スキャン)に変換してファイトを優位に運ぶ。
当然狭いエリアからの強引な移動や、そこでの耐えを咎める能力も非常に高いのがクリプト。そこへWxltzyとGildが襲い掛かるのだから、相手はたまったものではない。
NOTMOISTの衝撃的なscoreに影響されたか、元よりクリプトをテストしようと思っていたチームが多かったであろうこともその後押しを行い、世界スクリムはクリプトの採用率が高まる。
過程で増えるワットソンに備えるため、クリプトを採用する予定のないチームもクリプトへ引きずりこまれていく。
中盤までのクリプト増殖の流れ
1.外チームで、クリプトを求めて採用
NOTMOIST
ヒューズクリプト
中チームで、クリプトを求めて採用
SA勢の一部、APACS勢の一部、EMEAの一部、APACNの一部
ワットソンクリプト
2.中にも外にも動くチームで、クリプトワットソン対策にクリプトを採用
FNATIC、Falcon等多数のチーム
ワットソンクリプト
3.外チームで、ワットソンクリプトを攻略するためにクリプトを採用
TSM、SSG等
ヒューズクリプト(MOISTコピー)
4.ワットソンクリプトを攻略するためにクリプトを採用せざるを得なくなったチーム
FURIA、FENNEL等
anyクリプト
特にワットソンクリプトという構成が、中にも外にも万能(リソースが減った影響はある)であるが故に、構成の違いがムーブの違いに結びつかないロビー。
クリプトを使い続けたいチーム(求めて採用したチーム)と、クリプトを使ってみたら思いの他ハマったチーム等様々な事情はあるが、終盤に向けてここがどう変化していくのか?という部分は一つの注目ポイントであった。
新武器アキンボモザンビークの取り扱い
NOTMOISTの特徴は武器構成にも現れている。
各チームスクリム序盤こそ採用ケースの少なかったモザンボモザンビーク。スクリムが進むにつれ基本的にどのチームも積極的な採用を見せていく中、Moistはモザンビークをあまり求めなかったチームの一つだ。
Wxltzyはハボックをベースに、ヘムロックやネメシスを構える。
Timmyは非常に武器幅が広く、マスティフとセンチネル(後半ニューキャッスル時)であったりもするが、基本はハボックとヘムロックだ。
Gildが、アキンボモザンビークとネメシスの採用となっている。
これは近中距離のワンピック性能を狙ったものであると考えていて、特に現在ファーストフラッガーにアキンボモザンビークを使わせるかどうか?という部分に色が出ているように感じる。
ファイトのキッカケをワンピックに求めるか、もう少し小さなアドバンテージでも行くのかというチームのスタイルに表れていそうだ。
アキンボモザンビークの性能は非常に高く、簡単に相手を仕留めることのできる武器だ。
それは数的優位を作ったプッシュでもノーダウンでファイトを進めることが難しくなったということであり、近距離ファイトのリスクはハボックの腰撃ちナーフ後であっても更に増加した。
特に漁夫介入に備えるリソースの少ないクリプトワットソンバンガロール構成においてそのリスクは非常に見逃せない部分で、ワンダウンによるテンポロスは介入に備えるにあたり重大だ。
スクリム初期から中盤にかけてクリプト構成が猛威を振るったのは、この事情も大きい。
それでも介入に有利なクリプト(ドローンによる情報と、スタートのリブート)が、ノーダウンで終わらないファイトに備えているのだから仕掛ける側が非常に有利なのは道理である。
近距離ファイトにおいて圧倒的な破壊力を持つアキンボモザンビークだが、そこから少し距離が離れるとワンピック能力は非常に落ちる。
現在のメインストリームは、メインフラッガーをカバーするポジションのプレイヤーが所持することだ。
中盤~ BLEED、Shoobyのニューキャッスル
クリプトが猛威を振るう中、そこへ刺しに動いたのはBLEED。
元TSMでHalと組んでいたコーチのRavenが用いたのはニューキャッスル、そしてカタリストだった。
BLEEDがニューキャッスルを投入することで発生するのは、ニューキャッスルの相方としてコントローラーレジェンドで何を用いるかだ。
NA勢の例に漏れずBLEEDもポジションを保持することではなく、仕掛けることを重視している。
これまではバンガロールとシア、バンガロールとブラッドハウンド、バンガロールとクリプトというリコンレジェンドがタッグを組むことで、一定の攻撃性能が保証されていた。あと一枠をワットソンにしても、相手に仕掛けるのは十分だ。そこからの備えに関しては一考の余地があるが。
しかしにニューキャッスルを投入し、バンガロールを手放せない以上あと一枠は攻撃性能を与えてくれるリングコンソールにアクセスができるレジェンドである必要がある。
それにワットソンは当てはまらない。よってカタリストの投入となっているのだと考える。
この構成、特段ニューキャッスルというレジェンドは後で語るとして(バンガロールもカタリストも、語りつくしているからね)、大きいのは上記のためワットソンが構成から外れるキッカケとなったこと。
いつかに話したようにワットソンが存在しないのならば、無理にクリプトを採用する必要はない。
BLEEDのニューキャッスル投入により、クリプト支配が変化するキッカケがもたらされた。
ニューキャッスルの何故
実はニューキャッスルというレジェンドの特徴は、未だに掴み切れていない。
これを考えるのは本戦、その結果を見てからになるだろうというなんとも情けない部分だがご容赦願いたい。
現状、まとまりきってはおらず確信できてもいないことを書きなぐらせていただく。
ニューキャッスル、サポートでありモバイルプロテクターとキャッスルウォールを備え、鉄壁パッシブでダメージ軽減のあるレジェンド。
このレジェンドは、正直に当初はメタゲームへ刺さったように見えているだけだと思っていた。
クリプトを採用しないことで動きに自由度が増し、ファイトが強靭になっただけ。余計な情報アドバンテージに振り回されていた部分がクリアになり、動きがスムーズになっただけではないか?と。
しかしに、スクリムを眺める上で少しづつだが特徴を理解できたように思う。
まず、強引な移動を咎める力が強いのがクリプトだ。
移動中などの無防備な部分を狙わせる能力が非常に高く、そのタイミングでダウン、キルまでつなげることができる。
ニューキャッスルは、その部分に対しての防衛力とリカバー性能が高いのだ。
モバイルプロテクターによる遮蔽、キャッスルウォールによるダイブや遮蔽作成能力で移動を成功させることができる。
これは決してノーダメージで移動ができる(アッシュのような)のではなく、その最中にダウンをギリギリでも避けることができるということだ。
ワンダウンによる数的優位キッカケのファイトを上手く運ぶクリプトチームが多い中、ワンダウンをすることは致命的であり近中距離においていかにしてダウンを避けるかというニーズにニューキャッスルはピッタリとあてはまった。
仮にEMPでシールドが消されないジブラルタルになったとしても、ドームはアクティブに動かすことができない以上ニューキャッスルとは違いニーズを満たすことができない。
そして動きながらのシールド展開蘇生は、クリプトドローンを回し数的優位を情報アドバンテージへと転換するファイトに非常に強い。
3人でスイングを仕掛けられれば容易に崩壊するが、自由に広く展開のできない2枚プッシュではニューキャッスルのサイドに回り込んで射線を通すことが難しい。
これにBOXのリセットにより金ノックダウンシールドが容易に獲得可能になった状況が加わった。2枚でプッシュを仕掛けてくる相手に対し、金ノック蘇生を行うことで3枚で押し返すことができるのだ。そこにキャッスルウォールも加わるのだから、カウンター能力は非常に優れている。
上記をまとめるとニューキャッスルは、クリプトと理不尽ワンピック能力の強みを万全に生かしたどうしようもない無理ゲーファイト、逃れられない敗北確定ファイトを押し返す可能性があるレジェンドだということだ。
クリプトを用いて殴り込んでくるチームに対し(特にクリプトワットソンで仕掛けてくるチーム)、これは有効に働いた。
終盤において、キャッスルウォールを用いることで詰み盤面をひっくり返すことのできる能力もある。
それまでを上手く運んだご褒美的な要素で、限界ポジションで常にそれを頼りに生き残ることを目指す運用法では上手くいかないのは最早今の競技シーンにおいて当然(電池が切れた城では、グレネードを防げない)だが、終盤においては話が違う。
これはパスファインダーが採用されていた理由と同じだ。
パスファインダーと異なるのは、大きな修正力(ジップラインの移動)がないこと。
その部分をカタリストの壁を用いることで補填することもできるために、ニューキャッスル構成のコンセプトとしてはパスファインダー構成を別ツリー(カウンター重視)へ発展させたものと言えるのかもしれない。SP1のコースティック構成と掛け合わせたイメージだ。
当然ワットソン構成に対しての攻撃能力は薄れている。
カタリストとバンガロールによって仕掛け性能は担保されているが、この辺りは各チームの動向次第だったように思う。
そういうのも、BLEEDも決してこの構成で圧倒的な成果を残し続けたとは言えないからだ。
下位に沈み切ることもなかったが、圧倒的上位はやはりクリプトファイトを押し付けるチームであった。
中盤~ クリプト嫌だチームにハマる、クリプトパスファインダー構成
ニューキャッスル構成をテストするチームが増えていき、ロビーに少しづつではあるがクリプトとワットソン減少傾向がもたらされれたころ。
1→2→3→4の順番で増えていった分、4のチームからクリプトを即手放すのかと思いきやそうではなく、4の一部のチームは最終日までクリプトを使用し続けた。
現在この構成を使用し続けているFURIAとFENNELに限って話せば、FENNELはプロリーグ期間中でも頑なにクリプトを採用しなかったチーム。FURIAはアッシュをテストするなど別の形を模索し続けたチームだ。
そして構成配置、ロールも大きくシャッフルされたチーム(特にFENNELはアンカー栗原がフラッガーニューキャッスルに、Pinotrがアンカークリプト)であると言え、予想では即座にクリプトを手放すものと思っていた。
それでもクリプトを採用し続けている彼らの共通点として、内部での積極的な仕掛けがある。
EWCでallianceが採用したバンガヒューズパスファインダー構成と狙いは同じく、積極的な仕掛けのためのパスファインダー。そこにニューキャッスルを投入した形だ。
カタリストorヒューズorパスファインダー、というのが現在の選択肢。狙いでいえばallianceそれに近く、カタリストニューキャッスルバンガロール構成よりもカウンターより仕掛けに重点を置いている構成だ。
利点はなんといっても、対ワットソンチームに対して有効に働くリブートを用いれるということ。
そして、ニューキャッスルを加えた分内部からの破壊も可能だということだ。
ヒューズクリプト構成の弱点は、ポジション保持能力が非常に弱いこと。
定点でも強い圧力をかけることのできるヒューズだが、それは前でプレッシャーをかけるフラッガーのヘイトカバーありきであり狙われると非常にもろい。クリプトを採用することで圧力も減り、ポジションを守る(受け手側に回る)際に十分なパワーを発揮できない。これはMOISTも抱えていた問題点で、彼らは回遊魚のごとく破壊しまわるか(ワールズエッジ)、ヒューズをワットソンと入れ替えるか(ストームポイント)で対応している。
ニューキャッスルを採用することで、守り切ることはできないが一旦に耐えることはできる。一旦に耐え、パスファインダーのジップラインで厳しいポジションに入ったチームの破壊を狙うのがこの構成だ。
これが思いのほかハマった4のチームは、積極的に厳しいポジションを破壊し、チャンピオンポジションに繋げたりすることで好成績を残した。
終盤 変化していくゲーム、スイングファイト中心に終わりが
ニューキャッスル構成が広がるにつれ、その内情はBLEEDのものから変化していくチームが増えた。
特にニューキャッスルをどのプレイヤーへ担当させるか?という部分での試行錯誤が非常に大きく、そしてその推移によりEWCから続いたスイングファイトが中心のロビーから、ゲームは変わり始めている。
以前よりスイングファイトが中心ではなく、プレイオフは大幅ではなくとも、小規模なエリアコントロールならハマるマイルドなロビーになったのではないかという感想だ。
特にフラッガーにニューキャッスルを置くチームにおいて(FNATICもエリアを広くする過程や出張をYukaFが一人で行うこともある)、ニューキャッスルが一人になるシーンが目立ち始めた。
これは、Apex一人にしてもいいレジェンドルールに適合する新たな枠にニューキャッスル加わったのかもしれない。
レイスを失い、ホライゾンを失い、ブラッドハウンドを失った結果空白になった単独枠。新たな単独枠(カバーを必要としない)としてニューキャッスルが名をあげるのかどうか。
モバイルプロテクター、万一のキャッスルウォールでの帰還が果たせるニューキャッスル。現状は五部五部といった予想だが、希望としてはこの部分が埋まることでApexの競技シーンは更に面白くなるだろう。
クリプトがナーフされるかどうかという部分も大きくかかわってくる(透明化は消されそうだが)ために、本戦の行く末を期待したい。
終わりに、簡単な予想
Y4SP2、プレイオフドイツはメタゲームが固まり切っていない中で行われる非常に面白いものとなりそうだ。
序盤よりファイトバリューが優れていたMOIST型のクリプトチームはそのままに、そこへ対応すべくカウンター重視のBLEED型ニューキャッスルが構える。
そして仕掛けを重視したFURIA型のパスファインダークリプトニューキャッスル構成が有利を取り、Falcon型のカタリストクリプトチームはそこに対して有効だろう。
総じて交戦距離が若干伸び、以前よりスイングが中心ではなくなった(にらみ合う時間も増えた)ことでエリアコントロールが光る。FNATICが得意とするそれは、BLEED型やFalcon型のチームに対しては特に有効なはずだ。
そうなると、RC(NewJ)等に代表される中飛び込みのワトクリヴァルは滅茶苦茶に刺さるのではないか。そんな想像が尽きることはない。
SP1ではファイトカタリストvsエリアコースティックの二軸、Y3においてはファイトカタリスト合戦。ようやっとApex競技シーンは、2つ以上の選択肢を手に入れた。
恐らくは圧倒して採用されるレジェンド(8割超え)はバンガロールをして存在をしないのではないか。
突如としてオフメタ(レイス等)が刺さるシーンもありそうな、とても興奮できるALGSになるに違いない。
ビザ問題でeffectの出場が叶わない等、悲しいニュースはあるがどのチームも全力を尽くせるように望む。
そして、APACN全チームの活躍を、それ以上に。