イタリアに学ぶ産業/事業 Ⅱ.事業編
前回に続き、個人的好みに従ったイタリアの話です。今回は特に特徴的な事業に関する記事です。「事業編」ではあるものの、内容からすると今回も「産業」と表現した方が適切かもしれません。ただ、前回ご紹介した内容よりはミクロな取組みの話ということで「事業編」とさせてください。
特に地方での事業開発に携わっている方に参考になればと思います。
アグリツーリズモ
さっそく事例の紹介に入ります。まずはアグリクルトゥーラ(農業)とツーリズモ(観光)が合体した「アグリツーリズモ」です。
ゆっくり時間を掛けて地域を周り、食事や自然を味わう旅行です。チーズ作りを行うなど、体験も含むプランもあるようです。
検索するとイタリア各地のアグリツーリズモを紹介するWebサイトが結構ありますね。
アグリツーリズモを言葉で表現すると、「なんだ、単にその土地のものを楽しむというだけの話では」と思われるかもしれませんが、単一の観光スポットやレストランなどを楽しむのではなく、スポット/レストランなどが複数連なった1週間程度の旅程で、徹底的にその土地を味わい尽くすという点が特徴です。
日本人が日本を観光する場合、近さ故に1泊2日~2泊3日の旅程が多く、目立つスポットや飲食店に行くのが多いと思いますし、海外を観光する場合、遠さ故に複数の都市にまたがって周遊するケースが多いのではないでしょうか?
特定地域内で観光客の滞在期間が延びれば、すなわちLTVも上がるわけですが、日本でここまでやりきっている観光地は少ないのではないかと思います。
アルベルゴ・ディフーゾ
これは「地域に散らばっている空き家を活用し、建物単体ではなく地域一帯を点在型ホテルとするイタリア発祥の取り組み」(下記Webサイトより)です。
もともとイタリアの震災復興の取組みのようで、北イタリア フリウリ地方の村が存続の危機に陥ったとき、廃屋や空き店舗をリノベーションし、街全体を一つの宿泊施設にしたことがはじまりです。
街全体が宿泊施設のようになると、あたかもそこに住んでいるような体験ができ、これもアグリツーリズモ同様、滞在期間を延ばすことにつながります。
これは日本でも、大阪府東大阪市の「まちごとホテル」や滋賀県大津市の「講 大津百町」といった事例があるようです。行ってみたいですね。
転じて愛媛・松山の話
最近、地元の愛媛・松山に戻ったときのこと。せっかくなので道後温泉付近の宿に泊まったのですが、歩道も広くなり、施設・お店も増え、道後エリア内を歩いて楽しむための配慮が増えていました。
旅館によっては内部にお風呂がなく、浴衣で道後温泉に行ってもらうスタイルもあり、その点では地域という単位で観光施設を作っている面もあります。
半径200~300m圏内で温泉も文化施設も食事も楽しめるという意味では、アルベルゴ・ディフーゾの要素を感じました。
個人的には、ここにアグリツーリズモなり、もう少し他のコンテンツを絡ませられれば、顧客層も拡げられ、滞在期間も延ばせるのではないかと思います。
例えば、四国八十八ヶ所全ては回れなくとも、道後温泉近くの石手寺や繁多寺は歴史含めたコンテンツとして秀逸だと思いますし、さらに承継者がいないと噂される染物 伊予かすりの体験もセットにできるのではないかと思います。染めるときの布のたたみ方や紐のしばり方で染まり具合が変わる体験は感動です。
一番組み合わせが大変かつ意味がありそうなのは、魚を寿司屋などで味わうだけでなく、漁船で海に出て、自分で魚を釣ってそれを調理してもらうという体験です。これらを組み合わせられないか。誰も手を出さなければ、そのうちやろうかと笑
まとめ
2週に渡ってイタリアをはじめ、個人的な好みで記事を書きましたが、次回からはまた「新規事業の戦略/方針/仕組み」や「業種/業界/領域毎の新規事業」に戻ろうと思います。
では。