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三井の越後屋 × リーンキャンバス
「リーンキャンバス」は新規事業でよく使われるフレームワークです。
リーンキャンバスだけで検討を深めたり、検証結果をまとめたりするのは難しく、当然意思決定を引き出すのは難しいという面もありますが、初期段階、事業アイデアの仮説を立てたり、構成要素間の整合を確認するには適したフレームワークですよね。
最近、クライアントとのやり取りで「三井の越後屋」をリーンキャンバスに落とし込んでみたので共有します(呼び捨て表記になってしまい、失礼を承知しているのですが、「三井の越後屋」で1単語と考え、このように表記しました)。
T社のUさん、貴重なヒントをいただき、ありがとうございます!
リーンキャンバスの理解に役立ててもらえれば幸いですし、ちょっとしたネタとして三井の越後屋のビジネスモデルを引き出しにしまっていただければと思います。
三井の越後屋 × リーンキャンバス
早速ご覧ください。
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当時未解決だった課題
当時の呉服業界では、訪問販売・掛け売りが常識だったようです。訪問販売の場合、お宅にお邪魔して販売するので、顧客は現金の準備ができていないことが多く、自然と掛け売りになったのではないかと推測しています。
掛け売りになると、中には支払いを踏み倒す顧客も出てくるので、その分を価格に反映させる必要が出てきます。
さらに、切り売りをしないことも業界の常識だったようで、例えば手ぬぐいがほしいとなっても顧客は大きな布しか買えず、支払い額は多くなってしまいます。そのため、いいモノに手が届かない家庭も多かったのでしょう。
そこで越後屋は、「低価格」「利用しやすさ」という価値の実現のために、「店頭販売」「現金回収」「切り売り」という解決策をもって課題解決を行いました。
ビジネスモデルの優位性
ポイントはリーンキャンバス上の「圧倒的な優位性」です。サウスウエスト航空がLCCを作った後、大手航空会社がすぐには/簡単には真似できなかったのと同じような論理が隠れています。
訪問販売をしていた他社は、訪問販売員のクビを簡単には切れない
支払いを踏み倒す顧客は一定数いたとしても、しっかり回収できれば高い単価による高い収益を維持できる(と他社は思いたくなる)
(※ここは未確認で私の推測です)お店を持っていない/お店があまりきれいでない他社にとっては、店頭販売を始めるとなると、建物への投資が必要になる
切り売りをすると、単価が下がる。残った布は商品価値が下がる
(越後屋はどうなのかというと、これも私の推測ですが「フック商材」「フロントエンド商品」といった位置づけで、集客のために「切り売り」を実現したのではないかと考えています)
など、他社にとって「不都合」が多く出てきます。これが参入障壁になったのではないかと思います。
内容は主に三井広報委員会さんの下記Webサイトを参考にさせていただきました。
リーンキャンバスそのものの補足説明
先に具体例をお示ししましたが、リーンキャンバスそのものについてももう少し説明しておきます。
冒頭で「初期段階、事業アイデアの仮説を立てたり、構成要素間の整合を確認するには適したフレームワーク」とお伝えしましたが、9つの要素があるので、やはり検討するのは大変だと思われた方もいらっしゃるでしょう。
9つの内容を一気に考えようとすると大変ですが、最初期段階に検討すべき内容は4つです。
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① 課題(or 顧客セグメント」
② 顧客セグメント(or 課題)
③ 独自の提供価値
④ 解決策
すなわち、誰がどのような課題を抱えていて、どのような状態になったらうれしいのか(≒提供価値)、そして価値を実現・提供するためにどのような解決策が必要か、ということです。
(余談ですが、この順番は結構重要で、顧客・課題→解決策→価値の順番で考えてしまうと、論理的に整合した解決策は導き出せるものの、イマイチなアイデアになってしまいがちです。この内容は追って別記事にて)
この4つがまとまっていれば、事業アイデアの骨子はできていると言うことができます。
残りの5つの要素は、先に考えた4つの内容に従って整理していけば大丈夫です。逆に言うと、残り5つの要素は、顧客・課題・提供価値・解決策がないとなかなか検討が進みません。
最後に
どこかの機会に、呉服屋から両替商(銀行)への多角化についてもまとめたいと思います。それでは。