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恐怖のハゲメガネ事件

今年のクリスマスもオーストラリアで過ごしたわけだが、何とも不思議な体験をした。

順を追って話そう。
まず単刀直入に言うと、24日のイブと25日のクリスマスは上海出身の女の子(以下:上海ハニー)とデートみたいなことをしていた。その子とは数ヶ月前にクラブで知り合っていて、連絡先だけ交換していたのだ。そして先日、その時一緒にクラブに行っていた友人から「あの子最近暇らしいから遊んでみれば?」と連絡がきて、なんやかんやでメッセージのやりとりをして遊ぶことに。

一度冷静に考えてみてほしい。

ほぼ初対面の外国人とイブ&クリスマスを過ごすということを。

メッセージの流れで両日とも会うことになったわけだが、どうしてこうなったのかは今だに自分でも分からない。付き合っているカップルでもどちらかだけ会うという人も多いのではないだろうか。いま思うとお互いに寂しさを紛らわせたかっただけなのかもしれないし、向こうにそこまで深い意味はなかったのかもしれない。

そして僕たちは本当に会った。本当に二日とも遊んだ。なんてことはない。やらしいことも一切なかった。焼肉を食べ、コーヒーを飲み、イルミネーションを見て、韓国料理屋に行き、ブリスベンの街を歩き、2日目の最後にはカラオケに行った。ただそれだけのこと。泊まった場所もお互い別々だったし。

これが恋愛になるかならないかは、正直今も分からないが、多分それはないかなと思っている。どういうことかというと、最後に行ったカラオケでこんなことがあったのだ。

オーストラリアのカラオケは韓国人が経営している店がほとんどで、僕たちが行った店も例外ではなかった。それに従って、歌える曲は韓国の曲ばかり。次いで英語の曲、日本という順で、実は中国語の曲というのは古いものしかない。それでも上海ハニーは自分が知っている範囲で歌える曲を精一杯披露してくれた。サザンの「真夏の果実」って中国語でカバーされてるのねっていう発見があったり、コナンとスラムダンクの主題歌を日本語で歌ってくれたり、「ロマンスの神様」原曲キー熱唱はグローバルにウケることが分かったりと、それなりに盛り上がっていたとは思う。

時間も終盤に差し掛かり、最後に一緒にスラムダンクの「君が好きだと叫びたい」を歌って終わろうとしていたところ、ドアが開き、急に謎の男が合流してくるではないか。聞くと、彼(以下:ハゲメガネ)は台湾系のアメリカ人で上海ハニーの友人らしい。

するとハゲメガネ、来るや否やデンモクをいじり始め、なんと

3曲連続で歌いやがったのだ。

唖然とする僕。これがアメリカスタイルというのならば、星条旗を今すぐにでも破ってやりたいくらいだ。
ハゲメガネがゲリラパフォーマンスをしたことで時間制限を迎えてしまい、僕たちは「君が好きだと叫びたい」を歌うことはできなかった。

このやるせない感情はなんなのか。というかこいつはおそらく、上海ハニーとメッセージでやり取りしてここに来たのだろうが、上海ハニーがわざわざ居場所をそいつに教えたことがショックだ。普通デートしてる相手に好意が少しでもあれば、友達なんか呼ばないよね?ましてや、紹介するに値しないしょうもないやつなんて絶対呼びたくないだろう。

カラオケを出て、次どうするかとなった時に「とりあえずカフェかどこかでお茶でも飲むか」みたいな雰囲気になったので、3人で行動することに。なんで3人なの?
ハゲメガネはもちろん英語がペラペラだし、中国語も話せるようだ。だからもう、カラオケを出てからは完全にハゲメガネのペースになった。しかも、初対面の僕に全く話を振らない。上海ハニーと二人で英語と中国語を混えながら何やら楽しそうに話していた。

なんで僕はクリスマスにこんなやつと一緒に過ごさないといけないのだろう。
なんで僕はこんなクソハゲの英語が聞き取れないんだろう。
なんでこいつはここにいるんだろう。

タピオカを飲みながらいろいろ考えていると徐々に気分が悪くなってきて僕は「ごめん帰るわ」と行って、先に帰ってしまった。

バスを待っている間、少し泣いた。まだ上海ハニーと恋愛になる前で良かったが、さすがにカラオケからの一連の流れは堪えた。でもこれはハゲメガネが悪いわけでも、上海ハニーが悪いわけでもない。自分の実力不足。それに尽きる。つまりは、ハゲメガネだと馬鹿にしながらも、彼に屈してしまっているというのは釈然たる事実なのだ。

クリスマスプレゼントは、あげていない。そのことを友達に言うと「童貞なん?」と言われた。「安くてもいいからあげることに意味がある」と。確かにそうだ。ついこの前書いたショートショートでは、ちょうど同じようなシーンがあったにも関わらず、作者がそれを忘れているのだからどうしようもない。

バスはなかなか来ない。ベンチに座っていると、なんと上海ハニーが偶然前を通りかかった。彼女は家に帰る途中で、僕が出た後すぐにハゲメガネとも解散になったらしい。バスを待っている間、僕たちは少し話した。そして僕ははっきり言った。「あのアメリカ人好きじゃない」と。すると上海ハニー、「私もそんなに好きじゃない」。

じゃあなんで居場所教えてん!!!

意図が分からん!!!

新しい変態プレイですか!!!

もう、おいでやす小田ばりに脳内でツッコミの連発だ。
あんなやつを呼ばないといけないほど、僕と二人がキツかったのかな。そんなことを考えているとバスが来て、僕たちは別れた。

変な二日間だった。いろいろ反省点はあるが、何も行動を起こさなかったらこうして反省することもなかったんだなーとか、ぼんやりバスの中で考えていた。やっぱり動かないと分からないことはたくさんある。失敗しないと己の未熟さに気がつけない、なんていうような、学校の先生が言いそうなことを自分に言い聞かせていた。

去年のクリスマスに書いたnoteでは「来年のクリスマスは思いっきりカップルっぽいことをしてやろう!」と豪語している。ごめんよ、去年の自分。君が来年体験することになるクリスマスは登場人物が一人多い。
2021年のクリスマスははちゃんと好きな人と過ごして、誰にも邪魔をさせない。早くその場を去りたい一心で少し残してしまったタピオカミルクティーも、来年は笑顔で飲み切る。なんてことをここに書いておきます。メリークリスマス。

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松本拓郎
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。