庶民派もどき
テレビは「節約術」みたいな番組ばかりやっている気がする。いかに生活費を抑えるかをタレントが嬉々として語り、庶民派代表みたいな顔をして威張っている。スタジオでその家事育児の一部始終を見ている別のタレントが「すごーい」とか「それはやりすぎだろう!」と、死んだ目でヤジを飛ばし番組は平穏な空気のまま終わっていく。
チャンネルをそのままにしていると別番組が始まり、今度は「あの芸能人のおウチに潜入」的な太古昔から擦られ続けた企画を見せられる。小綺麗な少し広い家を映し、最後は土地代込みの建設費を芸能人が発表して、やはり何事もなかったかのように番組はエンディングを迎える。
もう日本は終わりだ。僕たちはおそらく他人の人生を覗き見し、指を咥えている間に死んでいく。
世帯収入、貯金、資産、それらが何億もあるであろう人たちの「節約術」なんて、僕のような低収入世帯をバカにしすぎではないだろうか。彼らの節約術は膨大な資産に護られた「なんちゃって節約術」でしかない。金があるのに倹約する自分に酔っている。車はあるのにあえて自転車で移動する、その「あえて」をクリエイティブな何かだと思っている。本当に追い込まれたやつの顔なんてテレビにもYouTubeにも流せない。
後から知ったことだけれど、僕が育った家庭は、親の事業が軌道に乗るまでかなり貧しかったらしい。確かに思い当たる節はある。僕にとって母親の原風景とは、夜な夜な机に向かって頭を掻きむしりながら家計簿をつけているその姿だ。母は一通り書き終えたあとは必ず、手でその髪の毛やらフケやらを集め、ティッシュに包んで捨てる。湯船の湯は2日は粘るし、その湯は洗濯機に入れる。4人×2日のお湯なのに。あの湯の汚さや、白髪混じりの髪に埋め尽くされた机の不気味さを、あのテレビタレントたちは知らない。
一時期お姉さん系マルチタレントとしておじさんを虜にしたあの人も、今やママタレへの転身に成功した。旦那さんは医者らしい。彼女もやはり節約系の番組に出ていた。
「朝昼は電気をつけない」としたり顔で発言していたが、そんな彼女にはうちの奥さんの実家を見せてやりたい。ギリギリまでつけないんだから。晩ごはんの時間になってもつけないことがあるので、自分たちがいま何を食べているのか分からないこともあるらしい。それはさすがにつけろよ思うが、橋本マナミさんにも、あ、ママタレさんにもそれくらいやってほしいものだ。