![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40946046/rectangle_large_type_2_eee9d84ff9cc968e60d6b0e5ad675e20.jpg?width=1200)
リアルの果ての、運命を求めて
女性作家が好きだ。小説は人並み以上に読んできたが、好きな小説家は不思議と女性に偏っている。
西加奈子大先生を始め、三浦しをん、窪美澄、川上未映子、柚月裕子、遠田潤子、若竹七海、、、挙げればキリが無い。
中でも窪美澄先生の「ふがいない僕は空を見た」と西加奈子大先生の「炎上する君」はとてつもなく素晴らしい。設定はぶっ飛んでいるが、徹底してリアルを追求しているのだ。
特に「炎上する君」は短くてすぐに読めるので、友達にプレゼントすることが多い。あ、そうだ。このnote読んでくれた人で「読みたい!」って人いたらプレゼントするよ。先着1名。条件は読んだ感想を僕に送ること。
nuke.is.over0629@gmail.com こちらにメールください。
僕が物を書くときは、どうしても現実離れしたロマンチックな展開に逃げてしまう。そっちの方が楽だし、分かりやすいから。でもそれじゃダメ。リアルを書かないと。
リアルとは何か。例えば、先日オーストラリアに住む日本人の友達で集まってパーティみたいなことをしていたのだが、その中の一人が「今から友達呼んでいい?」と言い出した。その時点で少し嫌な予感はしていた。知らない人ばかりのところに飛び込んでくるやつは大体ヤバイやつだからだ。
案の定、やってきたのは変な男だった。20代前半くらいだろうか。乳首が見えそうなくらいに襟元を開けて、短髪をワックスでガチガチに固め、日焼けサロンに3日に一回は行ってますと言わんばかりの茶肌。東京都は品川出身で、「クラブとかむっちゃ好きっす」アピールがすごい。
そう。僕の一番嫌いなタイプの人間がやってきたのだ。
うわー、どうしよう。こいつ混えて今日は朝まで飲むんかー、とか思っていると、僕の背後でバタンという音がした。そのシティボーイが酒に潰れて倒れたのだ。彼が登場してからわずか30分後の出来事である。
笑った。死ぬほど笑った。「クラブ好きなんすよー」とか「今日は朝までいくっしょ?」とか、無駄にお洒落してきた格好とか、全てが壮大な伏線だったのだ。もしかしたら「ワーホリデビュー」で、本当はむちゃくちゃ根暗なやつだったのかもしれない。
でもこれこそがリアルなのではないだろうか。明るく見せてるやつほど根暗、というリアルだ。物書きはこういう実体験を積み重ねていかないといけない。
それでも、だけれども、ロマンチックな何かを追い求めてしまう。
先日、知り合いの女の子にVISAのことを質問したくてメッセージをしようとしたら、ちょうどそのタイミングで彼女からメッセージが来た。
運命やん。そんなもん。
しかし恋に発展するようなやり取りはなかった。
学生時代、野球を見るため大正駅から京セラドームまで歩いていると、以前から少し気になっていた子とバッタリ会った。聞くと、今からその子も野球を見に行くらしく、しかもお父さんと合流するまでしばらく一人らしい。一緒に歩いて球場まで行き、マクドでご飯を食べ、ラインを交換した。
間違いない。これは運命や。
しかし、それはかすりもしない片思いに終わった。
大学生の時に付き合っていた彼女には、初対面の時から「なんか初めて会った感じがしないね」と言われていた。僕もそう思っていた。
ごめんなさい。これはもう間違いなく運命です。
しかし、その子とは3年付き合った後に別れてしまった。初めて会った気がしなかったのはただ単に、大学ですれ違ったりしていただけだろう。
いま僕はオーストラリアでラズベリーピッキングをしている。運命的な何かは、果たしてここで起こるのだろうか。例えばこんな展開はどうだろう。
以下妄想。
隣でピッキングをしているブロンドの彼女は僕が前から気になっている女の子。笑顔がキュートで僕にとっては抜群に魅力的な天使だ。聞けば、彼女は今日が最終日で明日からはシティに戻るらしい。両サイドから真ん中に向かってお互いにピッキングを進め、二人の距離が縮まっていく。そしてついに、ぶつかった。
「お疲れ様。今日が最後でしょ」
「うん。いつも一緒にピッキングしたね。Takuroはいつまで続けるの」
「僕はまだしばらくはいるかな」
しかし、二人の会話は続かず、黙々と僕たちはピッキングした。
ラズベリーにもいろいろ種類がある。商品になるもの、値下げすれば売れるような質の低いもの、ただのゴミとなるもの。僕たちはピックした。ひたすらにピックした。このピックが終わると彼女との別れを意味する。だから、いつもよりも時間をかけて、丁寧に見落としがないように僕はラズベリーを探した。
「ねえ」
彼女が口を開いた。
「いま私たちこうしてラズベリーを種類ごとに分けてるじゃない?」
「うん。それがどうかしたの」
「もし分けられないものがあったとしたら、どうする?」
「どういう意味?判断が難しいラズベリーがあるの?」
「違う。ラズベリーの種類分けは簡単じゃない。ベリーの表面を見れば分かる」
「じゃあ君は一体何の話をしているの。何が分けられないって言うんだい」
「……気になっている男の心とか」
彼女の頬がラズベリーより赤くなるのを僕は見逃さなかった。
「例えばずっと隣でピッキングしてた人が、一緒にファームを出ていってくれるかどうかの判断とか」
「それってつまり」
「これ以上は言わせないでよ」
丁寧なラズベリー探しは、この時点で終了。僕は見える範囲の中で一番赤いラズベリーを引きちぎり、彼女に見せた。
「このラズベリーみたいに、燃えるような、それでいて柔らかい恋愛になるけどそれでいいか?」
彼女は真っ直ぐに僕の目を見てうなずいた。
いいなと思ったら応援しよう!
![松本拓郎](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45799364/profile_3991cf36ab469dd451a4450778e219ed.png?width=600&crop=1:1,smart)