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ユニバージン

オーストラリアでの4年間を除いてはずっと大阪兵庫で暮らしてきた。しかし、USJは生まれてこの方一度も行ったことがない。いわゆるユニバージンである(造語)。しかもUSJから3駅くらいのところに住んでいたこともあるのに、だ。これを言うと結構驚かれる。どうやら普通の人生を関西で過ごしていれば、どうしても絶対どこかでUSJにぶつかってしまうらしい。

USJに行けるくらいの友達が少ないというのも前提としてある。でもそんな僕でも年に一度くらい誘われることはあった。関西の大学生といえば、みんなバカみたいにハロウィンナイトのゾンビのような顔をして「ゆにば」しか言わない生き物だが、僕はそこに染まれなかった。当時付き合っていた彼女もまたUSJに行ったことがなく、初めて行く時は一緒に行こうと約束していたからだ。だからその子が「来月友達とユニバ行ってくるわ」と言ってきた時は心底驚いた。

社会人になってから入っていた英語のスクールでも「みんなでUSJに行こう」みたいな企画があったのでついに重い腰を上げる時が来たかと歓喜した。しかし「園内では英語しか話してはいけない」というルールに戦慄し、断念した。

そんなこんなでユニバチャンスを逃し続け、今に至る。みんなが行っているから行きたくない、という僕らしい天邪鬼が発動しているわけではない。結構行きたい。なんならディズニーは5回ほど行ったことある。USJの方が知っている作品が多いから楽しめるに決まっているのだ。ワンピースのショーみたいなやつとかなんやねんあれ。絶対おもろいやんけ。
でも30過ぎてからユニバデビューってどうなんだろう。もしむちゃくちゃに楽しかったら「もっと早く行っておけばよかった」と損した気持ちにならないだろうか。そんな気持ちを味わうくらいなら一生ユニバージンを貫いてもいいのかもしれない。

これはかまいたち山内さんの「ポイントカード理論」と同じである。人生を豊かにすることで得をしたいはずなのに、今まで損していた気持ちが勝ってしまう。前進しているからこそ後ろを見てしまうということは生きていく上でよくある。たとえば株。S&P500に代表されるような米国株指数への投資は早ければ早い方がいいと、この40年のデータが教えてくれている。理論上は得する確率が高いのに、途中参加という事実が我々の気持ちを乏しくする。もっと早くすればよかった、もっと早く行動するべきだった。過去を振り返れば、無駄だったと思う時間はたくさんある。人を殺しそうな目でスイカゲームをしていたあの時間、SNSで人の人生ばかりを覗き込んでいたあの時間、高速道路で降りる場所を間違って迂回したあの時間。もう少しなんとかなったんじゃないか。でもそんなこと言ってたら何も始められない。

ユニバだけじゃない。ドラクエもドラゴンボールもまだ保留状態だし、鹿猟もやってみたいけど一歩踏み出せない。過去の自分を肯定することと、新しいスタートを切るのは、相反しているようで実はイコールだ。僕からみなさんにできることは、ゾンビコスをしてハロウィンナイトを満喫している写真をここに投稿するくらいである。

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松本拓郎
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。