世界のご冥福を
「ご冥福をお祈りしたい」とその人ははっきりと言った。
飯塚幸三氏の池袋暴走事故から5年。飯塚氏は10月に刑務所内で死亡した。2021年に禁錮5年の実刑判決が下され、その最中であった。
当初、ブレーキとアクセルの踏み違いによって起こった事故にも関わらず、飯塚氏は「車の故障」だと主張し続けた。娘と妻を一瞬にして奪われてしまった被害者遺族の松永拓也さんは、強い憤りを感じながらも怒りは抑え、事件と向き合った。決して表向きに取り乱すことがなかったのは、娘さんが松永さんの怒った顔を見たことがなかったからだ。
コロナもあり、事件から逮捕までは長い時間を要した。一向に進まない裁判の渦中にいながら、心は2019年のあの日に取り残されてしまった松永さんを想うと居た堪れない気持ちになる。なぜ娘と妻を奪われなければいけなかったのか。それをはっきりさせたいだけなのに、被告は嘘をつき、メディアは上級国民だと横展開をし、心の休まらない日々が続いていることだろう。
死亡を受け、被害者遺族である松永拓也さんは会見で「ご冥福をお祈りする」以外にこうも言った。
「大きな責任を背負いながら刑務所で最期を迎えたのはとても残念なこと。天国で真菜と莉子に会えたなら、一言謝ってほしい」
この方が2019年に残されているというのは大きな勘違いだったのかもしれない。同じような悲惨な事故が2度と起こらないように、松永さんは前に進み続けている。
同じ立場なら、僕は絶対に松永さんのような態度は取れない。一生犯人を恨み続け、汚い言葉を浴びせまくるだろう。どうしたって許せない。上級国民への忖度として煽るメディアをおおいに利用する。悲劇の未亡人を演じる。僕は悲しいんです、被害者遺族なのです、社会の圧力と戦っているのです。
どう考えても松永さんのように強くは生きられない。
高齢者は早めに免許を返納し、車がなくても高齢者の生活が成り立つ社会にすることが松永さんの願いであり、それが活動の目的だ。全面的に支援したい。ちょうど一昨日、さや香の「免許返納」のネタを見て笑っていたが、次見る時はネタの意味合いが少し変わってくるかもしれないな。