性交を書く
訳あって、起承転結のある濡れ場の描写をコツコツと書いている。起承転結だから、キスからピロートークまできっちり最初から最後まで書く。なぜそんなことをしているのか。それはこの本を読んだからに他ならない。
花村萬月さんの「たった独りのための小説教室」を夜寝る前に読んでいる。現役の売れている作家さんがこういう類の本を出すのは最近では珍しくないが、小説作法のハウツー本としてはかなり実践的で、具体的なものが多い。基本的に辛口な語り口調なのも説得力がある。なにせ「たった一人のため」の本だからだ。
例えば、大体の小説コンクールには募集要項に「新しいアイデアで誰も読んだことがないものを」と明記している。現に審査員も革新的な作品を待っていて、応募者も対策を練って臨むものだからそんなことは知っている。しかし、実際に応募されるのは右にも左にも振り切れていないひどく中途半端なもので、なおかつ応募者たちに謎の自信があるのだと花村氏は言う。
我が子は可愛いので、僕たちは自分の作品にはどうしても甘くなりがちだ。そんな甘えは本書では認めないし、バッタバッタと切り捨てる。裏を返せば、小説で売れるのはそれくらい狭き門ということか。
普通にハウツー本なら「斬新なアイデアでまずは書き切れ」などと適当なことを言って、手の内を明かさないままあとがきに入るだろう。しかし本書は違う。紹介している鍛錬の方法はどれも斬新で、実践的で、目から鱗だ。はい、そこで冒頭につながる。本書第5講の課題は「セックスの一部始終を書け」という何ともセンセーショナルなものなのだ。
花村氏は「精神的な描写ではなく、なるべく肉体的な描写を表現することが大事」だと言っている。場面が場面だけに、直接的な表現は読者を興醒めさせてしまう。だからこそ比喩やレトリック、セリフから飛び交うパワーワードをしっかり書く必要がある。なるほど、濡れ場描写こそ文章表現の高みにあるのかもしれない。
ただこれを書き上げたところで僕はどこで発表すればいいのだろうか。noteに載せたところで、アカウントバンとかされたら嫌だ。ただ、どこにも発表しないのも嫌だ。有料記事にでもすればいいのだろうか。官能小説界隈に詳しい人、教えてください。