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ただじゃイジらせねえぜ

徹底してイジられ役でい続ける人は、実は結構すごいと思う。自分もそうでありたいと思うがこれが意外と難しい。

僕はどちらかというとイジられる方だと思う。もちろん大歓迎だ。僕のことはどんどん笑いのきっかけにしていただきたい。イジられることはすなわち、その人から信頼されている何よりの証拠だと思う。「こいつならこれくらいキツいこと言っても笑いで返してくれる」、イジられ役はそんな期待を背負っているのだ。逆に言うと「イジらせない人」は変に気を使われているはずなので、一緒にいて心地よくない。だから僕はおじさんになってもイジられたい。いじくり回されたい。

そんな僕でも変なプライドが邪魔をして、キレてしまいそうな時がある。例えば正月に実家へ帰省した時も一度だけそんな場面があった。うちの家族は、家族以外の第3者を家に迎えたときに、必要以上にそのゲストを立てる習性がある。今回は僕の嫁がそれにあたる。そして誰かを立てるためには、誰かを落とす必要がある。必然的にその役割は僕になる。

基本的に僕の息子は、母親(僕の妻)にべったりだ。一緒に過ごす時間が長く、乳ももらっているのだから当たり前のことだと思う。僕の方には寄って来ず、妻の方ばかりにいく息子を見て、僕の父や姉は、
「あー、お父さんやと思われてないわ」
「父親って認識してないんじゃないか」
「(僕と妻が外出から帰ってきた時)あまねくん、ママが帰ってきて喜んでるわ。でもお前はあんまり関係なさそうやな」
「お前よりこっち(親戚)の方が懐いている」
などなど。そんないじりの数々。僕も適当にツッコんだりしてあしらっていたが、そんなことが3泊4日も続いたら流石に疲れる。妻の顔を立てているつもりかもしれないが、度が過ぎている。あんな仕打ちを受けるくらいならしばらく実家はいいかなと思ってしまう。

ところでうちの息子はやや中性的な響きを持つ名前だ。その名前のことで友達から「キラキラネーム」「DQNネーム?」などと言われた時も結構腹が立った。お前が知らないだけで結構いるし!とか思っているが、人の子の名前を「DQNネーム」と簡単に切り捨ててしまうようなやつには何を言ってもダメだ。思えばその友達は病気と闘いながらプレーする元阪神の投手を「昨日打たれたの糖尿病発症したからやろ」とかを平気で言うようなやつだった。いいやつではあるが、モラルは期待しないでおくのがいい。

イジられて怒ってしまいそうになった時、僕はいつも太田光さんから嫁いじりをされる劇団ひとりさんを思い出す。
太田さんは「お前の嫁(大沢あかね)、本当にブスだな」とひとりさんに浴びせるのが共演時のお決まりになっている。ブスというワードはあまりに強いが、これも信頼関係があってこそのイジリだ。それに対しひとりさんはブチギレた演技を見せ、笑いを2倍にも3倍にも大きくして返す。「うちの嫁はクイズヘキサゴンの頃からお馬鹿キャラでコツコツやってきたんだ!」などと捲し立て、カウンターを食らわせる。このメンタルだなと思う。ただじゃイジらせないぜ、みたいな。

別に僕のことは何言ってくれてもいいが、その枠から飛び出す時は最低限のルールは守ってほしいものだ。


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松本拓郎
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。