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バカみたいに笑う日

先日、大学時代に所属していた野球部の先輩の結婚式に出席した。その人(頭文字を取ってKさんとしておこう)は確かに野球部員であったが、野球はズブの素人でバットにボールが当たるシーンをほとんど見たことがない。
それでもKさんは天性のムードメーカーぶりを発揮し、グランドでは誰よりも明るく振る舞い平気でヤジも飛ばす。「下手でもこんなに堂々としていいんだ」と、当時18歳の僕はKさんのおかげで新しい道が開かれた気がした。

僕たちは家が近くだったので、夜はKさんの家におじゃますることが多かった。彼は本当に食べることが好きで、お邪魔するからには手土産でポテチを持参することを忘れてはいけない。深夜4時ごろにマクドに行くか行かないか論争が巻き起こったことも数知れず。行くにしても、今行いくかor少し待って朝マックにするか論争もあることを忘れてはいけない。そして夜が明けて空が明るくなってきた頃に、僕たちは眠い目をこすりながら原付で近所のマクドナルドに向かうのだった。どうかしている。

そんな思い出の数々だ。社会人になってからも家が近くなり、僕がどうしても見たかったテレビの録画をKさんに頼んだところ、ブチギレられてしまったこともある。TVerがもう少し早く普及していればこんなことにはならなかったのにと悔やまれる。それも思い出としてカウントしておこう。

そんなKさんが結婚した。みんなよく笑い、泣いていた。結婚式ではその人の全てが出るといつも思う。それは新郎新婦の一挙手一投足ではなく、周りを囲む友人や親族のリアクションで分かる。Kさんの父親は元警察官だ。衣装チェンジのため親子で途中退席する際に、お父さんはKさんを連行するスタイルでそのまま出ていった。笑った。

Kさんの兄は古着屋2店舗を経営するカジュアルな男だった。僕は受付を任されていたのだが、軽い着こなしでふらっとやって来たお兄さんは、名簿に出席者の名前を書く際に自分の娘さんの漢字が出てこなかった。さらに祝儀を渡す際には「ちょっと抜いといていいからね」と言う。軽い。たった1分で強烈なインパクトを残した。

久しぶりに会った友人、先輩たちはずっと楽しそうで、その輪の中に自分もいれて良かった。みんなは僕に対して「太った太った」といじってくるので、僕も負けじと「胃カメラで胃が腐ってることが分かった」と応戦。笑いが起きる。2次会までその繰り返しだ。

たまにはこんな日があった方がいい。バカみたいに笑って、昔を思い出す時間も生きるために必要なことだ。

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松本拓郎
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。