見出し画像

バンド活動が100倍捗る?!音楽業界との接し方 アレやコレ【金野和磨(Gerbera Music Agency株式会社 代表)】vol.3

ライブハウス、イベンター、ライブ制作、レーベル、マネジメント、チケットサービス、媒体…etc。
音楽業界にはバンド、アーティスト以外にも様々な立場で仕事をしている人達がいる。
しかし、彼等はいわゆる裏方。

彼等がどんな仕事をしているのか、どんな熱意や想いを持っているのか、中々外に発信する機会は少ない。

意外とアーティスト側と相互理解が追いついていない事も多いのではないか。
アーティストに、もっとこうしてくれたらお互いにとって良い結果になるのに…と思う事も。
もっと広まって欲しい想い、知って欲しい知識もあるのではないか。

どのくらいになったら食っていけるの?
タイアップってどうやったら取れるの?
どうやったらフェスに出れるの?
レーベル、事務所はどんなバンド、アーティストを探しているの?
音楽業界の人と知り合ったけど、この人とはどんな関わり方が出来るんだろう?
あのバンドが人気になっていった秘訣とは?

現役のバンドマンが抱える、誰も教えてくれない疑問や悩み。
QOOLANDのVo&Gtとして活動し、メジャーデビューやROCK IN JAPAN FESをはじめ、様々な大型フェスにも出演してきた平井拓郎が語り部となり、毎回様々な音楽業界人をゲストに招き、『伝えたい』『知りたい』を実現し、お互いの相互理解を深め、より建設的な関係性を目指す対談企画。

~第3回~
 
<HOST>平井拓郎


ロックバンド『QOOLAND』のVo&Gtとして、ユニバーサルレコードからメジャーデビューを果たし、3度のROCK IN JAPAN FESTIVAL出演をはじめ、様々なイベントで活躍。2018年4月に解散。以後、起業し経営者として様々な事業で手腕を振るう中、Noteに書き綴っていたブログがキッカケとなり小説「さよなら、バンドアパート」を出版、2022年春には映画化される。現在は、新たにロックバンド『jujoe』を結成し活動中。

 <GUEST>金野和磨

Gerbera Music Agency株式会社 代表。日本大学卒業後、人材サービス会社、音楽ITサービス会社、デジタルマーケティング会社などを経て、音楽業界特化型のデジタル広告代理店として同社を設立。Instagram広告やYouTube広告、TikTok広告をはじめとしたインターネット広告全般を扱い、レコード会社/音楽事務所など200社超の広告プロモーションをサポートしている。最新のアドテクロジーを音楽マーケティングに落とし込めることが強み。

まず自分達で着火させて、それを広告でブーストした方がより効果がある事をわかっているんですよね。

ー平井ー
金野さんがやられているGerbera Music Agencyでは、具体的にどんな仕事をされてるんですか?
 
ー金野ー
アーティストが新譜をリリースした際のデジタルプロモーションをYouTube、TikTok などのデジタル広告でサポートするというのが基本的な形になりますね。
 
ー平井ー
これはレーベルやマネジメント事務所から依頼されるものなんですか?
 
ー金野ー
そうですね、割合としてはざっくりレーベル7割、マネジメント事務所2.5割、0.5割で個人の方からというところだと思います。
レーベル内にこういう事をやる機能を持っているところは少なくて、外注するケースも多いんですよ。
 
ー平井ー
広告会社って色んなケースがあると思うんですけど、音楽に特化しているというのが珍しいですよね。今のような事業をやろうと思ったキッカケは何だったんですか?
 
ー金野ー
そもそも音楽業界でしか働きたくないって気持ちがまずあって・・・
最初はエージェントになりたかったんですよね。かつてレディ・ガガのエージェントをしていたトロイ・カーターみたいになりたかった。
でも何をやってもアーティストの役に立てなかったんです。一時期プレスリリース書いたりとかアーティストのインタビューやったりとかブッキングの代行をしたりとか。
今思うと、これって全部マネージャーやレーベルのアーティスト担当でも出来ちゃうことだったんですよね。自分がやることによって提供できる付加価値がない。
「何をすれば自分は役に立てるんだろう?」と色々試行錯誤をしていく中で、「あ!これは意外と音楽業界で出来る方いないんだ!これだったら役に立てるかもしれない」と思えたのがたまたまデジタル広告だったんです。
 
ー平井ー
クライアントからは具体的にどんな依頼が多いんですか?
 
ー金野ー
最近だと、「Instagramのリールで上げた動画がバズって、追い打ちをしたいけどこの後どうしたらいいんでしょう...?」というのが一番多いですね。
 
ー平井ー
なるほど、「バズらせてくれ!」ではないんですね。
 
ー金野ー
「バズらせてくれ!」もあるんですけど、レーベルの方も広告を使ってバズらせるのではなく、まず自分達で着火させて、それを広告でブーストした方がより効果がある事をわかっているんですよね。デジタル広告で兆しをつくることもできますが、自然に生まれた兆しをデジタル広告でブーストするほうが威力が多い傾向はあります。
 
ー平井ー
こういう手法は再現性はあるものなんですか?
 
ー金野ー
そうですね、最近は野球でいう「ヒット」以上は最低でも打てるなっていう感触はあります。2〜3年前は三振のときもあったんですけれども、最近は最低でもヒット、上手くハマったときは三塁打、ホームランも打てるようになったかなと思います。
リピーターになって下さる会社さんも増えてきていて、長くお付き合いさせていただくケースも多くなってきましたね。

 バズにも二種類ある。

ー平井ー
最近、印象的だったなと思うプロモーションは何かありますか?
 
ー金野ー
そうですね、具体名として出す事は出来ないんですが、Youtube Chartsにおける日本のウィークリー楽曲ランキングで今1位になっている楽曲がありまして、その曲は僕達が広告を仕掛ける前からバズってる機運があったんですけど、その中で僕達がブーストのお手伝いをしていたら、あれよあれよと伸びていって。いつの間にかMVが数千万再生を超えているんです。
これは元々バズるポテンシャルがあるものに、少し後押しをさせていただいたみたいな感じですね。
 
ー平井ー
成功例で、具体的にどのくらいの予算感でどのくらい数字が伸びたというのを教えてもらえますか?
 
ー金野ー
さっき話したような、SNS投稿がバズったんでどうしたらいいですか?っていう時に、これはもう大チャンスなんで、「何も言わずにTikTok広告に100万円配信させてください!」とお願いして、実際に担当させてもらったことがあったんですけど、それでApple musicの再生数が数十倍になったっていう例がわかりやすいですかね。
 
ー平井ー
その数字はわりと早く元が取れてしまうかもしれない上がり方ですね。
ちなみに大型クライアントになるとどのくらいの予算がついたりするんですか?
 
ー金野ー
本当に大きい時は4桁万円に達したこともありますね。
InstagramやTikTok以外にもYoutubeやXなどのフルコースの総額でしたけど。
 
ー平井ー
ちなみに、色んなバンド・アーティストが一番難しく頭を悩ませているところだと思うんですけど、バズの作り方って何かコツがあるものなんでしょうか?
 
ー金野ー
バズにも、2つ段階があるということに最近気付いたんです。
「自家発電する」と表現しているんですけども、例えば自分たちが自分たちのSNSアカウントでショート動画をバズらせることに成功するというのがフェーズ1です。最近はアーティスト自らショート動画で火をつけないといけないっていうのが大前提かなと思います。
 
ここから次に行けるかどうかがまた別問題なんですけれども、次にフェーズ2としてUGCのバズが来る。
※UGC=User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)
特定の投稿がバズるだけにとどまらず、その楽曲を使った動画を色んな人が投稿し始めるという、「UGCバズ」に到達できるかどうかが2個目のハードルになると思います。最近でいうとこっちのけんとの「はいよろこんで」がフェーズ2に到達した楽曲の代表例ですね。
 
まずは自分達でフェーズ1をクリアする事ですね。
今年で言うとラッパーの Kvi Baba(クヴィババ)とか、バンドで言うとLET ME KNOWとか、シンガーソングライターで言うと冨岡愛さんはフェーズ1を超えた経験を何度もしている印象です。こうした人達の動画ってどういうものなんだろう?って研究して、自分達なりのスタイルに落とし込んで投稿するっていうのが1番いまバズるために必要なことなんじゃないかなと思います。
 
ー平井ー
サブスクの再生数の伸びとライブ動員を比例させていくにはどういった努力が必要だと思いますか?
 
ー金野ー
これも「フェーズ1をきちんと経てからフェーズ2を狙う」が答えになるかなと思いますね。
たまに楽曲が独り歩きするケースというか、フェーズ1を経ていないのにフェーズ2が起きてしまう事があるんです。
そうすると、ただBGMとして使われているだけで、めちゃくちゃ使われているのにバンドの動員には繋がらないケースが結構起きているんです。
それを防ぐ意味でも自分達で着火させる事にこだわったほうがいいと思います。

 サブスクの再生回数もお金を払って回すって出来ない。

ー平井ー
いま話されたようなことは老舗のマネジメント事務所とかが困ってる印象がありますね。いわゆるタイアップ系で売ってきた人たち。
サブスクは回るから元は取れるんでしょうけど、ライブの規模感が見合っていないなと感じることは多いですよね。
少し話題は変わり、この記事を読んでくれているようなバンドマンが金野さんと知り合ったら、具体的にどんな相談をする事が出来るんでしょうか?
 
ー金野ー
グッズやチケットの販売促進をサポートさせていただくこともありますが、やはり一番はサブスクまわりになりますかね。サブスクでの楽曲再生数をあげるって難しいと思うんですよ。
YouTubeの再生回数だったら、頑張って自分で YouTube広告を勉強して広告を打てば数字自体は取れますけど、サブスクの再生回数もお金を払って回すって出来ないじゃないですか。
InstagramからSpotifyに誘導するとか、何かから何かに遷移してもらってから楽曲を再生してもらわなきゃいけないので、YouTube の再生回数より遥かにハードルが高いと思うんですけど、そこを上手く出来るっていうのが1番大きいと思います。

 THE FIRST TAKEのような歌唱動画を自分で撮って投稿。

ー平井ー
バンド側にどういう動きをしてもらえたらやりやすいとかはありますか?

ー金野ー
先ほどの話に戻ってしまいますが、フェーズ1を作るための自家発電です。例えば、定期的にスタジオに入って、iPhoneでいいので自分たちの演奏動画を撮って、それに歌詞をつけてTikTokに週1本は必ず出すみたいな、そういう習慣を持っている人だととてもサポートがしやすいですね。

ー平井ー
なるほど。いわゆるアマチュア、インディーズバンドで予算がない中でも、例えばちょっとコミックバンドっぽいとか、振り付けができるとかって結構有利だと思うんです。でもそうじゃない、いわゆる正統派な人たちって一番仕掛けがしづらいと思うんですけど、 今まで見てきた中で 、そういう人たちでも、これなら出来るんじゃない?っていう自家発電の例が他にもあったら伺いたいです。

ー金野ー
そうですね、わかりやすいところでいうと、THE FIRST TAKEのような歌唱動画を自分で撮って投稿している方は良く見かけるようになりましたよね。これはチャレンジしやすいと思います。
あとはスタジオで定点カメラで撮っているシンプルな動画なんですが、ハク。という4ピースバンドが、MONO NO AWAREの楽曲のカヴァー動画を上げていたんですけど、「このリズム感がクセになる」みたいなコメントがたくさんついていて、アメリカをはじめ海外でバズったんですよ。その投稿の再生数は1000万を超えていたかと思います。

ー平井ー
こういうふうに具体的に示してくれると凄くわかりやすいですね。ほとんどの人たちが、最初の着火させる段階でつまづいているはずなので、そこに対して具体的なアイディアを求めてるケースも多いと思うんですが、そういう相談も受けてくれたりするんですか?

ー金野ー
そうですね、アイディア出しについても力になれればとは思っています。

20万円がひとつのライン。

ー平井ー
冒頭の話で、殆どがレーベル・マネジメント事務所からの依頼ですが、中には個人の方もいると仰ってたと思うんですけど、個人だと中々予算を大きく積むことは難しいですよね。ぶっちゃけ、どのぐらいの予算からだったら効果が出ますよと言えますか?

ー金野ー
20万円がひとつのラインではないかと思います。一旦まずやってみて、それでもしフィットしたら増額を検討してみるとか、そういうやり方がありますね。

ー平井ー
4人組バンドだったら1人5万か、ギリ手が出るかなってところですかね。今ガソリン代も宿代も上がっているから、赤字の地方遠征ライブを何本か削ってこういうところに使ってみるというのも手かもしれませんね。
では最後に、こういうお金事情もそうだし、プロモーションの手法も年々変化していく中ですけど、今後の御社のビジョンや目標があったら教えてもらえますか?

台湾で成功事例を積むっていうのが一番手堅い

ー金野ー
そうですね、日本から海外で活躍していくアーティストを輩出するお手伝いがしたいというのが1番強いです。
今ですと藤井風やYOASOBIのように、国内外でのUGCバズに後押しされてグローバルチャートにもランクインするような事例が少しずつ出て来ていますよね。そうした事例をもっと増やしていき、日本と海外の活動に境目がなくなってくるような状況を生み出したいです。

例えば「インドネシアでSpotifyのスーパーリスナーがこのくらいいるから動員はこのぐらいが見込めるかもしれないな、じゃあこのくらいの会場でライブをブッキングしよう」とか、「多分このぐらいの規模のツアーを回ればこのぐらいの利益が出せるから、このぐらいの投資ができるね!制作頑張ろう!」みたいな、そういう実体を伴った活動が海外各国においても出来るようになっていくと、「海外進出」というふわっとした言葉も現実味を帯びてくると思うんです。

今だと、自分たちの担当アーティストが韓国や台湾で火が着いたことに対して、ファンベースが増えている実感を持てない方もまだ多いんですよ。でもこういう方も、現地にライブに行って歓迎されれば実感が伴ってきて「韓国台湾頑張るぞ!」ってなると思うんです。まだそういった実感を得られている方はそこまで多くないのではないかと。

当社としてはそこを、「もっと行けますよ!」って押して行きたいんですよね。個人的には、日本のアーティストのツアーにおいて、東京・大阪・名古屋・仙台・札幌・広島・福岡の次くらいに、台北やソウル、香港が当たり前のように入るようになったらいいなと思っています。

ー平井ー
そんなにお金かからなく行けますもんね。この視点が、きっとサブスクをメインでやってらっしゃるからだろうけど、見えてる目線が世界規模なんですよね。国内に留まってないっていう。 

ー金野ー
個人的にはやっぱり台湾で成功事例を積むっていうのが一番手堅いと思ってますね。色んなアーティストの海外向け広告をやってきたんですけど、どのアーティストやってもほぼほぼ台湾が常にパフォーマンスが一番高いので。

やっぱり本物の親日国なんですよね、音楽の分野においても。なので一旦台湾の台北でも台中でもいいからライブやってみて、こんなに海外の人達聞いてくれてるんだ!日本語なのにシンガロングしてくれるんだ!みたいな体験を早くした方がいい。

ー平井ー
何かこう聞いてると難易度が国内の話より低く感じてきますね。旅費が上がってるだ景気の悪い話じゃなくて。 

ー金野ー
ちょっとマニアックな話かもしれないですけど、個人的にすごくポジティブなニュースだと思ったのが、2022年の11月ぐらいから Meta 社が NVIDIA社 の GPU(半導体チップ)を大量に買ってたようなんですね。

Meta社としてはTikTok よりもおすすめ精度の高いAIレコメンドエンジンをリールに実装したくて、それを実現するために必要なGPUをNVIDIAからがっつり買っていたようなんです。そうしたら今年に入って、先に挙げた 冨岡愛さんやLET ME KNOWのように、日本のアーティストが上げたリールが韓国やアメリカでバズるケースが結構起き始めていて。

さっき話したような、スタジオで動画を撮って、頑張って海外の字幕をつけて動画上げることによって、もしかしたら日本にいながら、台湾で100人ぐらい動員できるようになるかもしれない。そういう点でいまはとても面白い時代でもあるなと思います。

  • 文=TAKAI

  • 企画・監修=大井勇/テディ(エルブリード)

Vol2はこちら↓



いいなと思ったら応援しよう!

takuro(juJoe)
音楽を作って歌っています!文章も毎日書きます! サポートしてくれたら嬉しいです! がんばって生きます!