2016/9/1
人の話を聴いたり、音楽を聴いたり、読書とかのことをインプットと言う。
行動したり、何か書いたり、歌ったり、話したり、作ったりとかをアウトプットと言う。
どっちかが欠けてもダメらしいけどそうかな。
昔からインプットの10倍ぐらいアウトプットをしてきた。音楽を聴かずに書いてばかりいた。
「インプットをしなくてはアウトプットができない」
世間で、まことしやかにささやかれている、一つの法則だ。
もちろん真理でもあるし、言葉の意味も分かっているつもりだ。
僕もさんざんインプットをしている。
それでも、「いくらなんでもインプットしすぎじゃない?」って先輩がいた。
先輩もバンドをやっていて、僕と同じくソングライターだった。
その人は一日に映画を何本も観ていた。
本もむちゃくちゃ読んでいた。
音楽もマニアックなのを散々聴いていた。
もはや自室が変なものがいっぱいある、「変なモノ資料室」みたいになっている人だった。
よく分からんフランス映画や、太宰や安吾にシェイクスピア。
そしてアメリカの、誰も知らないようなバンドに詳しい人だった。
僕はその人に、やたら目の敵にされていた。
その人の頭の中の構図は「オレは勉強家で平井は怠け者」だった。
いつも「おいこら、もっとインプットしなきゃダメだよ」と言われていた。
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たしかにその人に比べたら、僕はあまりインプットをしていなかった。いろいろなことを知らなかった。
僕は全面的にインプットの量が少なかった。
だが、その人が何をやっていたのかと言うと、年間に5曲も作っていなかったのだ。
これはちょっと燃費悪すぎるのでは無いだろうか。
COME TOGETHERやそれでも弾こうテレキャスターを作るのに、3年かかってしまう。
インプットするのは、良いのだが何もアウトプットしていなければ、ワケ分かんないことになる。
映画も本も音楽も、娯楽として受信する側として、楽しんでいるだけならば、もちろん発信する必要もない。
だが、先輩は違う。
先輩は自分の口で「より良いアウトプットのためにインプットをしている」と言っていた。
それにソングライターであった先輩は間違いなく、表現者であり、発信者であった。
アウトプットをする係なのだ。その係に自分で自分を任命したのなら、面白いものや、素晴らしいものを作って、人を楽しませたいはずだ。
しかし、先輩のアレは間違いなく「インプットイキり」だった。
「勉強しているオレ」というブランドをただひたすら誇示していただけだった。
そして、自分よりインプットの量が少ない人(ぼく)を見下していた。
後輩ながら僕は「なんかそれ違くない?」と思っていた。
思っていたらだんだんと、その気持ちは大きくなってしまった。
自然と僕は先輩と疎遠になっていった。
僕のアウトプットは音楽を始めたての頃、異常な偏りを見せていた。
僕は中学生のとき19(ジューク)というユニットに、強くインスパイアされていた。
14歳の頃は19かビートルズしか聴かなかった。
その極めて少ないインプットで50曲ほど作っていた。
だんだんと質と書き上げる速度が、目に見えて低下した。
すべて同じコード進行、メロディ、歌いまわしになった。
何か新しいエッセンスを入れたくても脳の資料室には、19とビートルズしか入っていない。
正直大変だった。それでも、資料室にある2冊の資料のみで、なんとかやりくりしていた。
19とビートルズの、既存のリリース曲を、何回も繰り返し聴いた
何か新しい発見があるのではないかと思い、顕微鏡をのぞくように19を聴いた、ビートルズを聴いた。
未発表音源があると知ると、ファン交流サイトBBSで譲ってもらったりしていた。
音楽との触れ合い方が、我ながら変だった。
とうとう曲が作れなくなった。
吐き出したい感覚があるのに、出せない状態は地獄だった。
だけど、僕はひたすらにひねり出していた。
脳内資料室には、資料が2冊しか無い。
それを逆さに読んだり、 文字を入れ替えたり、絵にしてみたり、ひたすら深く入り込んだ。
なんとか工夫の限界を超えようとしていた。
その後、必要にかられて、いろいろなアーティストを聴くようになったが、あの頃の苦しみながら何かをひねり出していた時間は、かけがえのないものになっている。
「何も無くても、なんとか出す」というフォームが培われた。
今はインプットの大切さを知って、本当にいろいろなものを見聞きするようになった。
それでも断然アウトプットの方が多い。
これは僕だけの考え方かもしれないし、僕のやり方でしかないけど、インプットはアウトプットの10分の1ぐらいでちょうどいいと思っている。
アウトプットとは考えて書いて話して歌って作ることだ。
インプットとして、見たり聞いたり読んだりもする。
それでも、「外になんとか出そうとする馬力」みたいなものはインプットからは得られない。
根性論かもしれないが、僕の人生には必要なものだった。
ちなみに新しい連載は、「僕のインプット」にスポットをあてたものになる。
「外になんとか出す」は素晴らしいインプットの素材があって、またいっそう素晴らしくなる。
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