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人はなぜ他人を許せないのか?

※この記事はコンテスト入賞記事です

炎上騒ぎの燃料は人間の感情だ。一定量の「そんな悪いことするなんて許せねー!」という逆鱗げきりんに触れ、火力が発火点に達すると一気に燃え盛るわけだ。

何が怒りの引き金になるかはひとによって違うし、そこに「悪さ」の指標はあまり関係なかったりする。電車で暴れ回る犯罪者のニュースにはキレないが、芸能人が不倫したことに関してはキレるというひともいる。

僕たちはなぜ誰かのやることなすことにキレてしまうのだろう。

『人は、なぜ他人を許せないのか?』という本がある。脳科学者、中野信子さんが書かれたいわゆる「正義中毒」についてのものだ。ここに書かれている「怒りのメカニズム」が面白い。

そもそも人間は裏切り者やルール違反、モラルを犯したものを排除すると気持ちよく感じる生き物だという。

社会動物であるホモ・サピエンスは違反者がいると本能的に『自分の身に危険が降りかかるかも』と感じるから、安全性の確保により快楽物質が出るそうなのだ。
さらに日本人は自然災害の多さという風土もあって、古来から「集団の和を乱す者」への排除意識が鍛えられていった。

たしかに災害時に空気を読まない人間がいると大変だ。災害時に「異端なやつ」がいるとかなり気にさわる。

実際、僕も身に覚えがある。小学校一年生のときに阪神淡路大震災を食らったのだが、東京からボランティアの中学生がうじゃうじゃ来て、やたら騒ぎ倒していたのだが、かなりイライラした。

しかし「他人を許せない」というのはわりと生きづらい。僕がボランティアの中学生たちを許さなかったとしても状況は変わらないし、放っておくのが一番なのだ。

「許せない」という感情はすぐに「キレ」に繋がる。キレることが頻繁になると「キレることで気持ちよくなる」という魔力に取り憑かれてしまう。

職場や学校、SNSにもいるが、「キレて気持ちよくなっているひと」というのがいる。自分の中で信じているものを踏みにじられ、対象を排除しようとして、快楽物質が出ているのだろう。

成績の出ないスポーツ選手にマジギレしているひとまでいる。これもそのキレているひとにとっては「許せない」ことだからだ。本人にとっては至って普通なのだ。

では、どうしたら僕たちは許せるようになるのか。排除の気持ちよさ、正義中毒から抜け出せるのか。

大きな要素に「価値観の多様化」がある。

「考え方は個人によっていろいろな違うし、行動原理も異なる。俺にとっては許せない行動だけど、そうやって生きるひともいるのだ」ということを分かっていけば、僕たちは他人を許せるようになってくる。

中野信子さん曰く、価値観の多様化を認められるには「脳の前頭前野の発達」が必要になるそうだ。

前頭前野には長期的なものの見方や、感情を抑える機能がある。ここはいわゆる「人間らしく」なるための部位だ。若い頃に発達し、年をとればとるほど衰えやすくなるので、鍛えていかないと年を重ねたヤバイやつになってしまう。
分かりやすく言うと、「頑固でキレやすいうっとおしい老人」が完成する。そうなりたくなければ、前頭前野を育てないといけない。ではどう育てるのか。

・新しい経験の回数
余裕バッファのある暮らし
・食事と睡眠のクオリティ

これら三つが大事だという。

「新しい経験」というのは何もワーキングホリデーに出かけなくてもいいし、出家する必要もない。普段食べないメニューを頼んだり、聴かない曲を聴いたり、違う道を歩いて帰るぐらいの簡単なものでいいそうだ。

余裕バッファのある暮らし」というのは抽象的だが、「貧乏過ぎたり常に将来に不安を感じていたりすると脳に悪いよ」ということだろう。「そりゃそうだろ」とは思うし、余裕のある暮らしというのは手に入れるのも楽ではないが、ギリギリchopな生活をしているとシンプルにキレやすくなる気がする。

後はちゃんと食って寝てろという至極まっとうなものだ。空腹で睡眠不足だとイライラする。分かる。

具体的にはオメガ3脂肪酸の積極的摂取が必要。
サケ、マス、マグロ、イワシ、ブリ、サバ、サンマなど青魚と言われる魚の油や、カキなどの貝類、クルミなどのナッツ類、えごま油、亜麻仁油など。

睡眠不足は、一時的でも習慣的でも脳にとっては良いものではないので、隙間時間を見つけて少しでも睡眠を稼ぐことがおすすめ。昼寝が脳に良いことはあちこちで説かれている。

僕たちの脳はそもそも他人と対立することが自然であり、対立するようできているし、集団の意思に従いがちなせいで議論が苦手だ。暴走する条件が整ったら、誰しも正義中毒まっしぐらになる。

今日はいつもと違う道を通って、普段聴かない古いロックでも聴きながら、お笑い動画でも見ながら海鮮丼を食べてさっさと寝るに限る。

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