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冒険する中小企業の挑戦 (1):目標管理から見える、人を大切にする仕事のつくりかた

安斎勇樹さん著「冒険する組織のつくりかた」に触発されて探究する、中小企業の冒険とは何か? 探究・実例記事シリーズの第1回です。今回は

第4章 冒険する「目標設定」のカギ
 [01]現場の目標にこそ〝追いかけたくなる意味〟を込める 

から触発された記事です。(目次一覧は安斎さんの記事でご覧いただけます)


縫製工場の、タイムスリップした風景


数年前、山形県のある工場を仲間たちと見学した時の話です。

特注のベストなどを製造している縫製工場でした。工場内には3つのラインがきれいに並び、入り口から材料置き場、裁断、縫製、そしていちばん奥で完成品となる、非常にわかりやすいレイアウトでした。

午後3時頃に訪問した時、非常に不思議な光景に出会いました。

時報が鳴ると休憩時間になるのですが、作業員の方々はミシンを止めて、10分間ただそこに座ってじっとしているだけ。トイレに行く人以外は全く動かず、再び時報が鳴ると一斉に作業を再開する。

え...この時代にこんな風景あるの?

まるで別の時代にタイムスリップしたかのような異様な雰囲気でした。

奴隷を働かせるような目標管理?!


さらに驚いたのは、ライン終点の電光掲示板です。

目標数と現在の完成数が表示されているのですが、作業の途中で突然!目標数が上方修正されるのです。

社長に尋ねると「このペースなら余裕があるので、自動的に目標を上げているんです」という説明でした。

えっ?! そりゃないでしょう???

これは例えるなら、マラソンで42.195kmを走っているランナーの目の前で、突然ゴールが1km先に移動するようなものです。走者の疲労や意欲に大きな影響を与え、最悪の場合、倒れてしまうかもしれない。

そういった状況が工場で日常的に行われていたのです。穴を掘っては埋め、また掘らされる奴隷のような仕事になってしまっています。

終わったら終わりの目標設定で好循環


そこで私たちは社長と話し合い、「終わったら終わり」という目標設定への変更を提案しました。例えば目標数を100と決めたら、それを達成したら今日は終了という形です。

京都に「佰食屋」というステーキ丼のお店があります。100食売り切ったら終わり!という明確なコンセプトを店名に掲げています。スタッフさんにとっては残り個数が明確で、それに向かってみんなで協力して進められる理想形です。

話し合った新しい仕組みのポイントは3つ。

・「終わったら終わり」の目標設定
・目標達成後は定時前でも帰宅可能
・早く終わっても給料は変わらない

この変更により、パートのお母さんたちは早く帰って子どものお世話ができる可能性が生まれ、作業効率を上げるための工夫も自然と生まれてきました。

さらに、あるラインが1時間早く終われるようになると、他のラインから「どうやったの?」と聞かれ、社員同士の自発的な教え合いも発生するようになりました。

どのような目標設定が人々の心に響き、挑戦し続けられるものになるのか? 目標を経営者も社員さんも共に意見を述べ合いながら作り、制度が作られていくプロセスを共有することが重要だと思います。

人をないがしろにせず、一人一人の潜在力を引き出し、挑戦が楽しいと感じられるような目標デザイン。引き続き探究を続けたいと思います。


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