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短考:拡張する物語宇宙(バーズ)

今日の昼頃、エンタメに関する大きなニュースが2つ入ってきた。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』最新予告映像が解禁 あの教授がMCUに参戦か (ign.com)

“シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース”が始動! 『ゴジラ』『エヴァ』など、庵野秀明氏が参加する『シン・』シリーズ4作品による夢のコラボプロジェクト | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com (famitsu.com)

MCUへのX-MENの参戦、そして日本の特撮バースとも言うべきシリーズのコラボレーションが発表された。

最近、この手の作品同士の垣根を跨いだ所謂マルチバース的な手法の作品が増えてきた。MCUシリーズ、DCシリーズ、スパイダーマンのスパイダーバース、ゴジラシリーズのモンスターバーズ、最近発表されたジュラシックシリーズなど多数のシリーズでマルチバースの形成が確認できる。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が7月29日に日本公開決定 旧キャストがカムバックする最新予告も解禁 (ign.com)

これらの作品におおよそ共通するのは、過去作品のリブートの側面が少なからずあるということだ。
その背景には、YouTubeやtiktokなどの短い動画コンテンツ、NetflixやAmazonプライムなどのサブスクリプションコンテンツの台頭によって、映画館に映画を観に行くという行為自体が何か前時代的な嗜好品のような立ち位置になり、過去作を新規作品のメタバースの中に取り込みんながらリブートすることで、旧作のファン層(中高年)の獲得を狙っている姿勢が透けて見える。
(さらには、新規作品から入った若いファン層に過去作品を視聴してもらうきっかけ作りという側面もあるかもしれない。)

そして、これらのメタバース的手法の発展には、虚構(フィクション)の生き残りをかけた側面もあるのではないかというのが今回考えたいことだ。
批評家の宇野常寛さんがよく指摘するように現代は、モノよりもコト、他人の物語よりも自分の物語、つまり、虚構よりも現実が重視される時代だ。
映画館で大衆の夢としての映像(虚構)を見るよりもパブリックなリソースと情報技術を用いて想像を具現化し、グローバルな経済を通して直接世界(現実)に影響を与えることの方が重視されるし、時代に合っている。
スクリーンよりもスマホの画面の方を人はよく見るようになったのだ。

ここで起きているのは、現実に対して虚構の力が弱体化しているということだ。そして、その虚構が抱えているのは目新しい構造の物語や想像力が生まれてこないという課題だと思う。皆がSNSで個人の物語に熱中する中、それ以上に面白く、刺激的な想像力を持ったコンテンツを作り出すことは中々難しい。
日本のネット・サブカルの文化圏ではおそらく2000年代中盤頃からニコニコ動画を中心にMAD動画と呼ばれるようなミクスチャーコンテンツが本格的に流行していたと思うが、まさに2020年代の今、ハリウッドの最新作や日本で行われようとしているのが、そうしたコンテンツ同士をごちゃ混ぜにしたマルチバースの創造であることは、新しいモノが生まれない中で既存のコンテンツを混ぜ合わせることで何か新しそうなモノを作りだすという虚構の一種の生存戦略に私には思えてならないのだ。

作品同士が連結して拡張することで現実に対抗するこの手法はどこまで通用するのか?
過去作のリメイク、既存コンテンツの融合から新しい想像力は生まれるのか?
私は観測者として映画やアニメをこれからもじっくり観ていくつもりだ。

2022年にリメイク・続編が登場する「懐かしアニメ」5作品 謎は残るも…期待しかない!(マグミクス) - Yahoo!ニュース

これらの作品がノスタルジーに浸って終わりにはならないことを願いたい。

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