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【旅ログ】石川・金沢:非目的な読書

会社の制度で貰った休みを使って石川県・金沢市に3泊4日ほど旅行に行ってきたのでそのログを残していこうと思う。

Day0

旅行の予定を立てるにあったってあんまり目的というのに縛られたくなかった。会社から平日5日間のお休みを貰った都合上、それを上手く使わなければいけない。そんなプレッシャーを感じるのが嫌だった。
一生懸命休日を満喫しようとすることで、折角の休みだから…という風に休暇を消費するのに気が引けた。それだと何か労働のための休日、休日が労働に従属している感じがして嫌だった。
だからあまり予定を詰めて目的を立てるようなことがしたくなかった。

究極向こうに行って何週間か何カ月か普通に暮らすのが理想だけれど、時間とお金の都合上それはできない。結局前から気にしていたラーメン屋と直前にTwitter(X)で見かけていいなと思った図書館に行って読書することだけ決めてあとは行き当たりばったりの旅にしようと思った。

私の数ある積読本の中から以下の本を持って行って旅行中に読むことにした。

Day1

新幹線で移動。移動中に『暮らしは、ことばでできている』を読みきれた。
巻末の対談が面白かった。コンテンツ(内容)コミュニケーション(語り口)の話。紹介されていた京極夏彦と辻村深月の本は今度読んでみようと思った。

金沢駅につく最初西口に出てしまい。自分のイメージしてた駅(サムネ)の印象としがったので少し驚く。平日ということもあってか人通りは落ち着いているように見えた。新幹線から降りる時も降りた後の駅中も外国人旅行客が半分くらい占めているようだった。ちょっと京都みたいと感じた。

ホテルのチェックインまで時間を潰さなければならない。
駅から20分くらい歩いた所にある映画館に行くことにした。ちょっと歩いてみると駅周辺以外はそんなに商業施設が密集している感じはしなかった。
当たり前だけど関東に比べて鉄道網が発達している訳ではないので、車移動前提の土地なんだなと思った。バスも使えたけど町の雰囲気を感じたかったので歩きでいくことにした。

映画館の近くに着いた。周りに何か食べ物屋があるだろうと思っていったんだけど意外にない。デカいホームセンターが近くにあった。駐車場がとても広くて驚いたので何かあると思って一番デカい建物に近づいていってらパチンコ屋だった。がっかりしながら歩いていたら小さい事務所みたいな建物の下にゴーゴーカレーの店舗があった。関東にもチェーンもあるし特別感はあまりなかったが、発祥の地だし折角の気持ちと少し迷いながらも店に入った。

ドロッとしたルーで独特のスパイスが効いていて美味しかった。
映画館で映画を観る。平日の昼過ぎということで流石に閑散としていた。パチンコ屋の駐車場にはあんなに車が止まっていたのに…。
観たのは『進撃の巨人』。アニメの最終シーズンの総集編らしい。マンガは全巻集めていたけど、アニメはいつの間にか追わなくなっていたので見れて良かった。エレンの独白の場面で最近読んだニーチェ入門書の話を思い出していた。始祖の巨人の能力で未来が分かる状態でも人類の8割を踏み潰す決断をする。なんだか永劫回帰の問題と同じ気がした。

ホテルに着く。何故かクレカが読み取られず支払いできないトラブル。
念のために現金を下ろしておいて助かった。
部屋についてWi-FiつないだらYouTube観たり、Mリーグ観たり、ゲームしたり、自宅にいる時と変わらない過ごし方。インフラは偉大だ。
『チ。』の第Q集をちょっと読む。面白そう。
そういえば進撃の巨人でも「血」が沢山流れていた。

Day2

メインの予定としていたラーメン屋へ。実は以前池袋で営業していた時に4・5年通っていたお店で、名前を変えて金沢に移転してからはじめてうかがう。駅の東口はバスロータリーが発達していてザ・観光地という感じがした。兼六園があるから当たり前かもしれないが、朝から外国旅行客と思われる方達が並んでいた。

バスに乗ろうとするとSuicaその他一般のICカードが使えない旨が書いていてあった。その代わりICa(アイカ)という北陸鉄道独自のICカードを使うか、1日乗車券みたいなフリーパスを買うしかないみたいだった。ちょっと不便に感じたが、ICカードをタッチする仕組みはバスについていたので交通会社同士の体系統一によるゴタゴタなど色々あったのかなと想像してしまった。

観光地のだけあってか乗り降りする人が多く、意外にバスが時間通りに動かなかった。ある意味ゆったりした雰囲気でいいのだが、予定より10分ぐらい遅れて目的地の最寄りのバス停に到着した。
バスの移動途中、金沢城や兼六園付近になると急に緑が増えてちょっと仙台や札幌っぽい感じがした。天気も良かったし散歩したら気持ちいいだろうなと思った。

お店についた頃には既に開店から20分ぐらい経っていたと思うが既に5~6組が待っていた。食券を買って20~30分くらい待合室で座ってから着丼。2年ちょっとぶりの(一方的な)再会に内心ちょっと感動していた。

特製醤油とバター醬油飯を注文。鴨・豚・鶏の5種類のチャーシューとトロトロの味玉。スープはじんわりうまみを感じられる調和系といった感じで、前に自分が通っていたお店でも後半の時期に出していた醬油ラーメンに近い感じがした。卓上の説明を見ると石川県産の材料を使っているようだった。
懐かしかったのは、味玉の仕込みとバター醬油飯の味が前の店と変わっていなかったことだった。久しぶりに食べる実家の味みたいで良かった。
5種類のチャーシューをつまみつつ、温度によって変わるスープの味わいの変化を楽しみながら完飲。明後日も来るか迷いつつ、少し名残惜しい気持ちで退店。

直前に予定に加えた石川県県立図書館に移動する地図上で確認すると偶然にも近くだったので歩いて移動する。しかし、実際に移動してみると台地のようになっていて階段を上ったり、坂道を移動することになった。若干息切れしつつ軽く汗をかきながら図書館に到着。着いてみると向かいにも大学付属の図書館があった。

外から見ると一見平たい建物に見えるのだが、中に入ってみると楕円形のドームのような構造をしていて4階建てになっている。(写真撮らなかったので↓のサイトや画像検索して欲しい。)各階はフロアがきっぱり分かれているというよりも階段やスロープでなだらかにつながっている感じだった。

館内を歩いてみて本の展示の仕方も素晴らしいと思ったのだが、なにより素晴らしいと思ったのは椅子や学習スペースの多さだ。いたる所にソファや学習スペースが設けられており、どこでも気軽に本が読める空間だった。
都市部の書店でも昔は座って本を読めるスペースがあったと思うのだが、コロナ禍以降、三密を避ける傾向によりそういったスペースも消えていった気がする。もちろん、本を売るのがメインの書店と本を貸すのがメインの図書館という違いはあるのだが、なんかこういったスペースがあった方が余裕があっていいなと思った。

ちょっと日の当たるソファに座って『哲学史入門I: 古代ギリシアからルネサンスまで』と『無目的: 行き当たりばったりの思想』をちょっと読む。千葉さんの文章はドライだけどいつも勇気を与えてくれるなあと思ったり、無目的のエッセイの方には旅とかノマドとか芭蕉の話が書いてあって今の自分に少し重ねて考えてみたりしていた。
読む集中力というのも60分~90分ほどしか続かないもので、途中図書館に併設されたカフェで休憩しながらコーヒーを飲んだ。
机のついた学習スペースでは、高校生か大学生と思われる人たちが勉強していた。印象的だったのは皆教材やプリントをタブレットのようなモノやPCを使ってみながら勉強していることだった。自分が学生の時代は大学生ならまだしもタブレットでの学習はまだ普及していなかったのでなんか時代の流れを感じた。

暗くなる前にホテルに帰って『チ。』の第Q集の続きを読む。対談が面白い。魚豊さんと野口聡一さんの対談で宇宙にいった後の燃え尽き症候群の話がよかった。
自分もこの旅行が終わったらどうなってしまうんだろうと少し不安に思う。

Day3

昨日でメインの予定は達成してしまったので、特に目的は無くなってしまったけれど、駅の西側に大きな書店があるらしいのでそこに向かってみることにした。西の方にいくと日本海側の海岸が見えるようなので一応そこも目的地として途中で寿司か海鮮が食べれればとなんとなく予定を立てて移動しはじめた。

駅の西口からこの日はバスを使って移動した。書店の近くにある県庁前まで、西口から続く大通りを移動すると企業系のビルやでっかいテナントがあってオフィス街な感じがした。土地が広くて大きな企業の建物がいくつもあったので若干つくばに近いような感じがした。そしてこの日の気温が低いからか海が近いからなのが風が強くて寒く感じた。

書店に入ると中は3フロアに分かれており、1階には文芸書や雑誌、文具、DVD販売コーナー、タリーズコーヒーがあり、2階は各種専門書や文庫、新書のコーナー、3階には絵本館やコミック館、イベントホールが設置されているようだった。企業の建物が近くにあるからなのか、ビジネス書系や新書系の棚が充実しているように感じた。2時間ほど書店内をめぐってから海岸の方に移動することにした。

海岸の方に歩いていくとちょうど寿司屋があったのでそこに入ってみる。回っていないカウンターとテーブルのあるお店だったけれど、各テーブルにはタッチパネルがついていてそれで注文する形式のお店だった。

朝限定の握りの盛り合わせセットを注文。握りは写真の見た目よりは小さくていわゆる手毬寿司のようだった。ふっくらしたアナゴとキュッと締まったしめ鯖、そしてトロが特に美味しかった。これで4000円弱、ボリューム的にはちょっと高い気がした。

寿司を食べ終えた後に海岸に向かって歩く。マップで調べるとクルーズターミナルという場所があるらしいのでそこに向かってみることにした。
施設に着くとレストランやイベントホール、展望デッキなどの総合施設のような感じだった。1階のイベントスペースでは100人以上いたと思うが小さいプランターの即売イベントのようなものが催されていた。2階の貸し会議室では何かの表彰式のようなものが行われていた。展望デッキで海を眺めて30分くらいしたら駅の方に戻ることにした。

この日は結局時間が余って、初日とは別の映画館でまた映画を観ようとも思ったけど、バスで駅に戻ってから東口方面にある書店を何件か回った。カフェが併設されている書店で1時間くらい『哲学史入門II: デカルトからカント、ヘーゲルまで』を読んだ。やっぱりスピノザは面白い。

駅のコンビニで特産品のつまみを買ってホテルに戻る。
そういえば、バスに乗ってた時に聞こえてきた会話やお店の店員さんの言葉遣いを聞いていると「~やね」みたいな関西・近畿っぽい喋り方に聞こえた。また、コンビニの店員さんに「またおいであそばせ」みたいな挨拶をされておおっとなった。

『チ。』の第Q集の続きを読む。アダム・タカハシさんの評論で『チ。』とニーチェの思想の関連について語られていて面白かった。
結局旅行中もニーチェのことばっかり考えている気がする。

Day4

何もすることが無くなった。あとはお土産を買って帰るだけだ。
温泉に入ったり、兼六園を見たりするのもありかと一瞬思ったけど、何かしなきゃという目的に駆られている感じが嫌でやめた。
駅のお土産コーナーと一体になっているレストランで牛肉を食べることにした。

折角なら能登牛を使った品を食べたかったのだけれど、普通のより値段が1.5倍くらいになるので量で普通の牛肉のものを選んでしまった。それでも味は美味しかったのでよしとしよう。

お土産を買って帰りの新幹線では窓際の席をとれたので、景色を眺めながら帰る。日本海沿いの景色を眺めながら長野あたりで山々が目立ってくる。だんだんと景色が移り変わりながら群馬あたりで平地が目立つようになってくる。ここまでくると関東平野にもどってきたという感じで日常に戻っていく感じがした。

振り返り

実際の旅行から1週間以上が経ってから、この旅ログを書き起こしている。できるだけ当時の感じたことを時系列で書いたつもりだが、どれだけ伝わっているだろうか。

あまり目的を持たず、行き当たりばったりで旅をするというのが今回のテーマだった。仕事とプライベート、職場と家という二項対立ではなく、第3の要素として「旅行」をこの機会に自分の生活に取り入れてみたい、そんな思いがあった。後から思いついたのか、最初から考えていたのか、途中で思いついたのか、今ではもう思い出せないが、そういったことが裏テーマだった。この試みは、半分は成功していたと思う。1日目や2日目は、目に入るものすべてが新鮮だった。非日常を味わいながらも、どこか日常に根差した安心感があった。

3日目以降は、少しずつその新鮮さが薄れていくのを感じたが、それでも新たな発見があり、のんびりと過ごすことの大切さを再認識した。特に予定を立てず、自由に時間を使うことで、自分のペースを取り戻せた気がする。旅行というのは、何かを見に行くことももちろん大事だが、心のリズムを整える機会でもあるのだと実感した。

今回の旅で感じたのは、完璧でなくても良いということ。思い描いた通りにはいかなくても、その場で感じたことを大切にし、楽しむことができれば、それで良いだと思う。これからも、機会があればこんなふうに心の赴くままに旅をしていきたい。

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