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Dragon's DogmaⅡの感想/雑記

◆自分"は"好き

 ※この感想noteにはドラゴンズドグマⅡの所謂真ENDのネタバレや他作品ネタを含みます。

 steamのレビューの荒れ具合を観てもらうと分かるが、かなり人を選ぶゲームである。ファストトラベルも重量制限もない令和のオープンワールドに慣れた人間が予防接種もせずに遊ぶと間違いなく苦痛に悶え、茂みから急襲しまくってくるゴブリンのストレスによって死ぬように出来ている。
 親切なゲームと違ってUIには一つしか追いかけてるクエストを表示できないし、普通に考えると存在する意味のわからないバッドイベントによって街をもみくちゃにされるし、道を歩くのは面倒くさいがゲームを進めても別に自分だけの馬や牛が手に入ったりする訳ではない。いや騎獣や駄獣ぐらいは手に入って良いだろ。

 ……昨今流行りのストーリードリヴン型(遊ぶ人間にとにかくストーリーを摂取させることを主目的にした作り方)のRPGを遊ぶ層との相性が悪いのは認める。自分で話を見出すゲームということは、逆に寄り道をしないととことん淡白なまま話が終わりがちである。かくいう自分も物探しが本当に下手くそなせいでオープンワールドを十全に吸い付くせているかというと微妙である。

 しかし、令和でないことにさえ目を瞑れば、「夜中の護衛中にゴブリンに囲まれ、必死の乱闘」や「何のカットシーンもなく乗っている牛車に急襲してくるグリフォン」といった生のシチュエーションによるRPGの原液を楽しむことができるようになっているのだ!
 大体色んなRPGで少しはデザインを捻られて表現されているゴブリンやリザードマンやハーピー、キマイラといったヴァニラウェアや初期のFGOみたいな敵のラインナップが本当にそのまま捻りのない直球でお出しされてくる。
 対する人間側も剣士や弓使いや魔法使いになり、時には敵の身体をよじ登って何もスタイリッシュに見えない一々泥臭い戦闘に身を投じる。(まあ進めると手に入る魔剣士やマジックアーチャーといった派生職使うと光景が見慣れたアクションRPGになるんだけど。)

 このゲームに「水辺の移動が不便だからクソゲー」と「ファストトラベルさせろクソゲー」の意見はよく見かけるのだが、世界変化後は水が干上がっている上に刹那の飛石が大量に手に入るようになっているので心配無用である。……ただし世界が派手に壊れた後だというのが大変嫌味っぽくはある。

 ぶっちゃけFF14を遊んでいてあの作品の過保護にも近い姿勢に若干飽きていた自分にとっては、剥き出しの敵意とアドリブだらけの戦闘で出来たこの世界は気分転換としては結構良かった。
 だからと言って決して褒められるような泥臭さだけではないことも確かではある。プレイヤーが戦闘時でもないのに斜面に弱すぎる挙動するところとか。


◆Dragon's Dogma Ⅱ

 「幼年期の終り」(トゥルーエンド)ルート絡みの話。

 最終決戦の直前、覚者がドラゴン退治の物語に乗っかるのを止め、突然竜殺しによる自殺を行うと状況は一変する。本来の筋書きからいきなり主役が降板したことで因果が壊れ、一言で表すと世界そのものが剪定事象とされてしまった。

 大地から川と海は枯れ果て、天地は荒涼とした赤に染められた。剥き身となった世界の上へ、ヒュージブルでできた抑止力の差し金どもが次々と降り立ち、国の民族の別け隔てもなく人と文明を貪り続けている。
 もはや正しい秩序はない。人理を守る覚者王はいない。何故なら、この世界では反旗を翻した覚者こそが悪なのだから――。
 敵モンスターのことをFGOに例えたのは適当にというわけでもなく、観る者くんが急に世界を物語扱いするFate仕草してきたから「お?躍動か?」と思っただけ加護なき世界に救いはないことを警告されながら、それでも意味いみを求めて進むことを選んだ覚者のルートは異聞帯のあり方に似ているなと感じるところがあったからである。この話の元にしているFateでは覚者はセイヴァーと呼ばれる救済者を指しているのは皮肉なことだが。

 観る者があからさまに黒幕ムーブをかましてくるが、冷静に考えると別にこいつは口が悪いだけで観てるだけの人である。紛らわしい。
 普通なら胡散臭いローブを被った観る者が最後の最後にケヒャリストと化してなんかでかくて強い生き物にでもなってラスボスとして立ち塞がってくることにしよう!とかそういうことを考えるはずだ。しかしそんなことも起きず、結局は最後まで観る者を殴り飛ばす機会は訪れなかった。というより、そもそも彼は殴る必要が無いのだろう。だって本質は観てるだけだし。
 観る者を敵としていたのはロセイエスであり、プレイヤーたる覚者ではない。あらゆる役から真の『自由』を求めたロセイエスにとっては観る者は最後に残った邪魔者だったが、観る者とは役者ではなく観客であり、順番を違えて観客に刃を振るうことなど出来ないのだ。

 火星のような様相となった世界を眺めるのは苦痛を伴うかも知れない。各国の住人をひとまとまりに避難させるために今まで世話になった各地を周り、自分の手で町を手仕舞いさせていく手順がメインの導線に存在する。そして最後には僅かばかりの警備兵しか残らなくなり、風ばかりが吹き渡る文明の跡が各地に出来上がるのだ。元は自分が引き起こした天変地異であるにも関わらず、人々はまさか覚者の選択が元凶だとも気付かず接してくる。――世界を救うとはこういう行為だったか?
 誰もいなくなったバルバタルの市場でかつて購入した家に泊まった時の、もう取り戻せない光景に対する郷愁のような気持ちは独特なものである。世界に火を付けたのは自分だ。でもどうして――?

 ロセイエスの言う「界王」になるべく世界を異聞帯に変えた覚者は、世界の剪定を否定するために「覚者様」として奔走し、やがて最後にⅡ頭目のドラゴンと思わしき巨竜と相打ち、消滅する。
 為すべきことを成せ。それはドラゴンに言われた言葉ではない。自らが自分のために決めた約定。覚者とドラゴンが永遠に殺し合う輪廻の輪に終わりを。
 この物語を読む人間はもういないとしても。世界は砕かれ、役者が虚無に呑まれたとしても。それでも――自分で結末を選んだ意志いみは残り続けて欲しいから。

 これが覚者と竜をイコールで繋ぐ「延命」ではない意志の力、世界にありえざる二つ目の竜の理ドラゴンズドグマが成立し、幼年期の終りルートは完結する。クリア後の世界を歩けないという意味では本来の世界からの空想切除が成し遂げられた。

 エンディングの解釈だが、最後の覚者と最後のドラゴンが同時に消滅し、編纂事象・剪定事象のそのものの概念が無くなってしまったので滅びは止まり、恐らくあの異聞世界には二度と戦いの輪廻は持ち込まれなくなった……ということなのだと自分は解釈する。覚者が真に目覚めた者となれば輪廻から抜け出す道を行くのは仏教的だが、覚者が自らを犠牲に全ての輪廻を持っていったという結末はキリスト教的でもある。
 「RPGとして作られながら己がRPGであることに苦しんでいる」という矛盾を孕んだある種の自我を持った世界の機構を介錯する話だった、というのが真相だろう。RPGは役割を演じるゲームなのでプレイヤーが役割を降りればゲームはご破算になるので、黒幕たるドラゴンの駒と一緒にPCの駒を全て破壊し、もう何のイベントも起きないただの平和な世界として盤を残すことにした、ということなのだろう。


 すごい。コテコテ王道RPGですというラッピングをしながら悪を単なる悪にしないという捻くれRPG仕草をもきっちり完遂している。幼年期も終る。
 よくファンタジーにSF持ち込んだ時に幼年期終わりがち問題はあるが、これも人間が敵意のない上位存在の庇護下から自分の意思で抜け出すという幼年期フォーマットを守りつつ幼年期を終わらせていた。
 個人的にはしっくり来る終わりだったが、メインクエスト上の演出や戦闘を盛り上がるように仕向けてくれても良かったかな~という気はする。あのラオシャンロンよりでかそうなSUPER BIG DRAGONを実際の戦闘で討伐するの絶対盛り上がっただろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 卓RPGと言えば表の黒幕を演じてたドラゴンのPLさんめっちゃいい奴なんじゃないか?低音イケボだし顔もよく見たら王冠かぶった悪魔みたいでイカしてるな……好きだな……


◆ドグマの三位一体

 幼年期の終りの語りでネタバレされるが、ドラゴンとは覚者の成れの果てである。まあこれは道中出会う野良の眷属ドレイクがポーンの洗脳(命令権の上書き)を行えたり「貴様も鼓動なしか」などと言ってくることからおおよそ察しはつく。

 ではポーンの『竜憑き』とは。ラストでメインポーンが役割を剥がされながらも自己に目覚めたように仮初の知能に過ぎない知能存在がシンギュラリティを起こし、自我=意志の力を獲得しつつあるのではないかと思った。
 竜憑きになるとポーンは傲慢になるというが、その言動も腰が低いポーン基準の傲慢であるためかただの気さくな言動にしか見えず、どちらかというと従者が戦友へとスライドしたようにしか感じない。このことからも何か熱病のような症状であるというよりただの自我の形成(とそれに紐付いた副反応)に近いように思える。
 そしてドラゴンは世界を延命するために破壊活動を行うので、同じ意志の力のベクトルを手に入れたポーンも同じ世界の延命のために町を破壊しながら一人で異界へと帰っていく構造。

 つまりドラゴンと覚者とポーンは根底の部分でドグマの力で駆動している同じ生命体であると推測している。三位一体説とか見たことある気がする。


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