街 1
ブー、ブー、ブー・・・・ケータイのバイブレーションが枕の下でなっている。・・・無視しよう、眠い・・・ブー、ブー、ブー・・・しつこいな。
「・・・なんだよ」寝不足でだるい・・・若干二日酔いもある。
「お前が単位やばいから電話で起こせって言ったんだろ?」このカサカサした声は小1からの幼馴染の鎌田だ。
「・・・おう、でも昨日閉店まで打ってたし、そのあと飲みに行って・・・眠い・・・」スー、スーzZZ・・・
「あと10分後に迎えに行くからな!」
「・・・わかった。タバコある?」
「昨日負けたからエコーならある。」相変わらず糞みたいなの吸ってるな。
「行く前にコンビに寄ろう。とりあえずキャベジンとマルメン買わないと・・・」わかったというと電話が切れた。
高校の制服のスラックスを履いて、タンクトップに無地のパーカーを着る。ポケットにクシャクシャになったタバコが1本あった。
「ラッキー♡」とりあえずくわえて部屋を出ると珍しく親父がまだ家にいた。
「こんな時間にどうした?」と言うと、「お前こそもう始業時間になるんじゃないのか?」と真っ当な返しがきたので「これでも早いほう!」と満面の笑みで返してやった。
「今日は何時に帰ってくるんだ?」珍しく帰りのことを聞いてくる・・・嫌な予感。
「なんかあんの?」
「ちょっとな・・・そんなことよりくわえタバコでチャリ乗るなよ。次補導されたら停学じゃすまないんだろ?」たまに親らしいことを言うんだよな。
「捕まらないから大丈夫!ライター余ってない?昨日飲み屋に忘れてきた。」ほらっと100円ライターが飛んできた。番長の真っ赤なライター。いいセンスしてんじゃん。
「今日バイト22時までで、たぶん由佳ちゃんと飲みに行くから2時くらいかな?なんかあんなら飲みに行かないで帰ってくっけど。」
神妙な顔で「じゃあまっすぐ帰ってきてくれ。」そういうと部屋に戻っていった。「わかった。」そういって家を出た。
なんとなく想像は付く、まあいい話じゃないのは間違いない。
外に出ると鎌田も一服中。
「行こうか!まあ2時限目には間に合うべ。」
鎌田のケツに座りゆっくり煙を吸い込む・・・メンソールが起き掛けの口内をさわやかにすると同時にヤニの後味が襲ってくる。
「セブンでいいか?」
「うん、守山のセブンにしよう。あそここの時間キムの妹がレジやってるから。」
とりあえずマルボロメンソールのソフトを購入して、外の駐車場で一服。
「ねぇ!君さぁ西凌高校だよね?」サラリーマン風の男・・・やばい。
さすが鎌田!すでにチャリに跨り発進体制はできている。
「イチ、ニ、サン・・・」「どうしたんだい?」「だーーーーーー!」と同時に顔面に向かってコブシを振り上げた。見事に鼻にクリーンヒット!
「ごらぁー!いてぇ・・・」うずくまったところを蹴り倒す。
「糞がはなっから殺す気でこいや!」そういってチャリに飛び乗ると同時に鎌田は最高のスタートダッシュで発進した。
「最近朝の補導員も増えたな・・・別に誰にも迷惑かけてねぇんだけどな」タバコを吸っていて、遅刻をしていて、二日酔いであるなんて別に犯罪じゃない・・・20歳を超えているならね。問題はまだ16歳ってことだな。
鎌田の学校の前でチャリから飛び降りる。
「サンキュー!」というと門から体育教員が出てきて「・・・何時だとおもってるんだ!」と俺に向かって叫んできた。
「てめぇこそ、授業中だろ給料泥棒!他校の生徒かまってないで仕事しろ!カス!」中指を満面の笑みで立ててやる。
学校まで歩いて10分はかかる・・・もう一本吸うか。
「先輩!」「うん?」最近やたら寄ってくる一年の・・・佳織。
「ダメじゃないですかぁ、制服着てないし、タバコ吸ってるしィ~」
「いいかい、制服はちゃんと着ているでしょ!」そういってダボダボで裾はボロボロのスラックスを指差す。
「それにね、この煙はのどの調子を整える薬だからね。あとあんまり俺といると無駄に目をつけられるから寄ってこない。俺はルーズソックスをはいたギャルが好きなの、ニーハイはいてパンツ見せてる君には萌えないわけ。」
「べー!」っと言って走っていく。・・・薄いピンクか・・・
だからパンツ見えてんだつーの!
いつもの朝だ。別に特別なことは何もない。
ただひとつ・・・親父の話だけが心に引っかかっていた。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。