思考する教室とメモの魔力
H・リン・エリクソン,ロイス・A・ラニング,レイチェル・フレンチ著 遠藤みゆき,ベアード真理子訳『思考する教室をつくる概念形カリキュラムの理論と実践ー不確実な時代を生き抜く力』を読んで,英語の授業を通して学んだことを概念化,一般化させることにより公教育を受ける子ども全員に,たとえ将来英語を実用的に使わなかったとしても,様々な場面で,英語を学んで良かったと感じさせたいと思っていました。しかし書いてあることが難解でなかなか普段の授業に落とし込めませんでした。特に難しかったのは様々な事実の抽象度をあげて一般化させる方法です。そこで別の角度から抽象化させる方法を学びたいと思い,『メモの魔力』を手に取りました。
私はこの本から抽象化するためには事実の特徴を並べ,それを分類しまとめ,仮説を立てることが大切であることがわかりました。抽象化の例として,著者の前田裕二さんが子どもの頃に弾き語りをしていた話をあげていました。
この例で,
カバー曲・・・相手が歌ってほしい歌
オリジナル曲・・・自分が歌いたい歌
リクエスト→演奏・・・双方向性
という特徴から,
リクエスト(カバー曲)↔︎演奏 →仲良くなれる
オリジナル曲 ≠ 仲良くなる
といったように抽象化と仮説できます。
英語の授業に置き換えると
【事実】・3人称単数であるheやsheが主語の場合,動詞にsもしくはesを付ける
・最近では性的マイノリティ方の場合の主語にtheyを使うことがある
【抽象化】・性別やものの数によって,英単語の形を変える
・考え方の変化により,言語の形そのものが変わっていく
となります。
ここからなら,『言葉や言葉の規則には前提が存在するが,それは時代の変化に伴って作り直す必要がある。」といった概念形成が可能になります。
それが出来上がると転移を起こしやすくなり,たとえば
「看護婦」と「看護師」,「優生」と「顕性」,「部落」と「集落」などが挙げられます。
一般社団法人 みつかる+わかる代表理事の市川力さんは,概念」とは概「だいたい」,念「思う」つまり,「だいたい同じであると思うこと」と言います。
この思考パターンを身につければ実生活でも当たり前に思っていることを疑って吟味したり,物事を整理したり,何が起こるかわからない未来であっても「だいたい同じだろう」と仮説を立てて課題解決に取り組めるのではないでしょうか。
生徒たちは英語だけを学びに学校に来るのではなく,様々な知識が雑多に頭に入った中で授業を受けることになります。各教科ごとに頭を切り替えさせる,もしくは頭をパンクさせてしまうのではなく,雑多な知識をまとめあげて抽象度を上げて概念形成をさせることにより,総合的な学習の時間で探究学習や課題解決に取り組みやすくなるのかなと感じました。