見出し画像

「ココナラ」リブランディング制作秘話。9年間使い続けたロゴ・VIをフルリニューアルしました!

こんにちは。株式会社ココナラでデザインマネージャーをしている外崎(@TakumiTonosaki)です。2021年の8月、ココナラは9年間使い続けたロゴ・VIのフルリニューアルを行いました。

1年間かけて戦略策定からデザインまでの全てプロセスをデザインチーム中心に行いました。インハウスのデザイナーがどのようにして事業会社のリブランディングを行ったのか、プロジェクトのプロセスや裏側をお伝えできればと思います。

この記事について
参考になりそうな人:デザイナーや事業会社でこれからリブランディングをやろうとしている人たち
書いてあること:事業会社のVIリニューアルの戦略〜実行まで。7000文字くらい。

1.リブランディングの背景

サービスや事業フェーズの変化
ココナラはスキルシェアのマッチングプラットフォームを運営しています。簡単に言うとスキルがある人と、スキルが必要な人をオンラインでつなぐサービスになります。例えばデザイナーと会社でLPを作りたいマーケの人などです。

画像8

ココナラのリリースは9年前までさかのぼり、当時は占いなどのプライベート向けの15カテゴリ、価格は500円均一ではじまりました。おかげさまで様々なサービスの売り買いが年々増えていき、今では450以上のカテゴリ、販売価格も500円~100万円まで拡大しています。

ココナラが目指す「すべてがそろうサービスマーケットプレイス」が徐々に見えてきた
当社は「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」というビジョンのもと、サービスの売買が当たり前に行われる世の中を作りたいと思っています。プロダクトとしては、ココナラに来たらどんなサービスでも受けられる「すべてがそろうサービスマーケットプレイス」を目指しています。

前述の通りサービスリリースから9年が経過し、プライベートからビジネス利用まで幅広くご利用いただけるようになりました。サービスの急成長とともに、ココナラの目指す世界観が実態として徐々に見えてきていたのです。

画像10

次の事業フェーズを見すえたブランドイメージの転換
一方で良くも悪くも「カジュアル」という印象が強いのがブランドイメージでした。このカジュアルという印象は、とっつきやすさというメリットはあるものの、「あくまで低価格で品質もそこそこ。プライベートで使うものだよね」というイメージを持たれがちです。

ビジネスシーンでも使える高品質なサービスもたくさんあるのに、カジュアルなVIの印象もあり、次のフェーズを見越すとブランドやVIを進化させていく必要がありました。スキルシェア領域で圧倒的No.1を目指していくには、ブランドイメージの転換が必要だったのです。

「事業フェーズの変化にブランドイメージが追いついていない」こうした課題感で始まったのが、このリブランディングのプロジェクトでした。

画像10

2.コンセプトを決めていく

はじめに着手したのがコンセプト作り。今までの「カジュアルさ」や「プライベート限定」な印象を変えたかったので、利用シーンやサービスの種類における「幅広さ」、そしてプライベートからビジネスまでどんなシーンでも使える「信頼感」を作っていきたいと思いました。

ユーザーの声をインプットしまくる
ユーザーが今のココナラの価値として感じていただいている部分を無視して、別のコンセプトを押し出しても、それは中身のないブランディングになってしまいます。特にココナラは購入者と出品者がサービスの体験を作っており、常にプロダクト改善もユーザーの声を起点にして行われます。

このプロジェクトもお問い合わせでいただいたご意見、そして毎年行っているココナラサービス誕生の時期に行う周年アンケートの読み込みをしました。特に毎年のアンケートは本当に嬉しい声が多く、まさにユーザーが感じてくれている「価値」が詰まっていました。

画像24

これを関連度と声の大きさに応じて、見やすいようにマッピング。ユーザーの声を可視化することで、ブランドのコアバリューの特定を行いました。

画像10

「このユーザーの声とココナラが目指したいところが重なる部分が新しいコンセプトになるのではないか?」
この考えのもといくつかワーディングを行い、ディスカッションを重ねて出来上がった4つのコンセプトがこちらです。

①多様性、オープンな感覚
②可能性やワクワク感
③信頼感、安定感
④人や社会とつながり

コンセプトレベルでは、次のココナラが目指すべき方向性が見えてきました。

画像10

3.他社調査

コンセプトが固まってきたところで、ロゴやカラー、キービジュアルを中心に他社のVIの調査をしていきました。

カラー調査
主要ITサービスや競合、トレンドのサービスを色ごとにマッピングして、ざっと全体感をインプットしていきます。カラーはポジショニングの要素としては非常に大きいので、①同じマーケット②2C/2Bサービスごとの分析③幅広くトレンド等を見ていきます。

画像17

ロゴのモチーフ調査
同様にロゴのモチーフも幅広く見ていきました。それぞれのサービスがどのようなモチーフでロゴを作っているかを分析していきます。大まかにまとめると以下のような3つの傾向が見えてきました。

①サービスのコアUXを具体的なモチーフで表している
(Amazon→配送の箱)
②頭文字をベースにしている
(google,facebook)
③よりシンボルマークとしてジャンプさせたもの
(evernote→像)

クリエイティブ制作の場合このように既存のものを調査してパターン化することで、作る方向性のとっかかりを作ることができます。

画像25

タイプロゴの調査
タイプロゴについても、太さやサンセリフ/セリフ/スクリプト体などをポイントに調査していきます。最初は主観的でも良いので、調査したものをコンセプトや印象ベースでマッピングを行い、現在地と向かいたい方向をざっくり比較・可視化しておくとチーム間で共通認識がとりやすかったです。

画像10

4.作りまくることでデザインの方向性が生まれる

モチーフのアイデアを出す
コンセプト、そして調査がある程度が出来てきたところで制作を開始しました。まずはモチーフ作りを重点的に行いました。コンセプトと上記のモチーフの3パターンを念頭に置きながらひたすら作り続けていきます。

特に苦労したのが「スキルシェア」という領域で具体的なモチーフを考える点でした。この点は改めてコンセプトから派生したキーワード出しを行い、それをモチーフとして具現化していきました。

作りまくることで、ビジュアルデザインの方向性が見えてくる
この制作の初期のフェーズはプロジェクトの一番辛いところでした。コンセプトは決まっているけど、それを体現するデザインの可能性が無限にあったからです。クリエイティブとしてどう方向性をつけていくか、当たり前だけどこれが一番の課題でした。

画像17

このフェーズは僕らも上手い(効率的な)やり方は思いついていなく、愚直に案を作りまくった記憶があります。ただ佐藤可士和さんがインタビューか何かで「1案件につき200~300個作る」とおっしゃっていたのを見て、「超一流の人がそれだけ作るんだから、僕らはそれ以上作らないとなあ」と漠然と思っていました。結果として200~300個くらい作ったあたりから、おぼろげながら「この方向性で作るとコンセプトを体現してそう」というのが見えてきました。

ただこの段階では手当たり次第な感覚が強かったので、一度制作をやめて、今まで出た中で良いと感じたロゴ案の中に似通った点がないか分析してみました。するといくつかの共通項が出てきたので、それをコンセプトごとにまとめたのがこちらです。

画像11
画像9
画像10

コンセプトを体現するビジュアルを言語化・イメージ化できると、煩雑だった状態から徐々に精度の高い案が出てきました。こうすることでデザイナー間でも方向性の共通認識が生まれてきます。ある程度の共通項の抽出するにはイメージボードなどの制作を行うことも大事ですが、あくまで他社の表現の共通項であって、「ココナラとしてのクリエイティブ」として考えられる解像度の高いものではなかった気がします。

クリエイティブの方向性の場合は、調査や理屈立てで終わらず、しっかりアウトプットを出しながら、コンセプトを固めていくことをおすすめします。プロダクト同様に高速でプロトタイプを作り、検証を繰り返すことはこうしてリブランディング活動においてもとても有効です。

5.偉大だった前ロゴ

クリエイティブの方向性が見えてきたことで、今回のリブランディングのコンセプトを表現する案が徐々に出てきました。そんな中で課題として残ったのは「既存のロゴの方がココナラを体現しているし、機能性も良いのでは?」ということでした。3色を使ったココナラならではのカジュアルさ。一発でCと読める機能性。9年も経てばブランドのイメージ資産として蓄積されてきたものがたくさんあると感じました。

画像12

例えば、少し前に原研哉さんによってリニューアルされたクロネコマークもまさに「黒猫の親が子を運んでいる」というモチーフはあまりにもイメージ資産として認識されすぎて大幅な変更はできなかったのかなと個人的な見解として持っていました。このように一般的なリブランディングでは、今までの方向性をリファインしていくことが既存のイメージを生かす効率的な手段となっています。

画像13


既存のイメージ資産をどこまで生かすか?この時点ではイメージ資産を一番残す既存ロゴをリファインした案も捨てきれずにいました。そこで今まで制作したものを3つに分けてグルーピングしていきました。

①リファイン案(既存のロゴを順当に進化させた案)
②C or CO案
③シンボルマークとして抽象化した案

スケジュールもぼちぼち迫っていたこともあり、「この段階まで来たら社員や経営陣の反応を見てみよう!」ということになりました。

画像25

6.全社員を巻き込んだフィードバック会

こうしたVIはユーザーはもちろん、社内のメンバーにも前向きにとらえてもらう必要があります。ココナラはミッションドリブンで集まったメンバーが多く、プロダクトや事業への思いが強い会社です。基本的にはあらゆる部署が「ココナラ」という一つのプロダクト・事業を作るために活動しています。ブランドを体現し、価値を作っているのは、一人ひとりの社員なのです。プロダクトや会社の顔となる部分ということもあり、VIは自分たちが目指すべき姿を定義して、モチベーションが上がるものにしなくてはいけないと思っていました。

全部署・リアルの場でフィードバック会を行う
前述の通り僕らのようなスタートアップでは、特にこうしたインナーブランディングは重要だと感じていましたが、やるなら徹底的にやろうと決めました。コロナ禍ではありましたが、(なるべく密にならないように)部署ごとでフィードバック会を企画。対面にこだわったのは、リアルな場で率直な反応を見たかったことと、その場で対話することでこの活動に社員を巻き込みたかったからです。

画像14

こうした活動にはそれなりにパワーがいりますが、多くの社員が盛り上がりながら前向きに参加してくれました。リブランディング活動はデザイナーやマーケティングのチームだけでなく、その後リリースしていくために企画やエンジニアやHR、PR、法務などあらゆる部署の協力が必要です。UIや各種マテリアルに当てはめたイメージ画像を見せることで、リブランディング後のイメージを持ってもらう、そしてワクワクしてもらうことが大事です。

画像25

社員は何から「ココナラらしさ」を感じるか?
ほぼ全社員となると多様な意見が出てきたのですが、言葉は違えど部署間でも共通する意見は出てきました。

①1,2色だとココナラらしいワクワク感や多様性を感じない
②角張りすぎたものは、ココナラのイメージとかけ離れすぎている

そして僕らが気にしていた今までのロゴを踏襲した「リファイン案」についてですが、これは思った以上に支持されませんでした。

画像18

「(今までの)ココナラっぽいけど、これならそもそもリブランディングする意味がない」
「toCっぽくはあるけど、ビジネスでも使える感じはしない」

社員たちは何から「ココナラらしさ」を感じていたか?それは僕らが気にしていたロゴのモチーフなどをそのまま踏襲することではなく、カラーや形状に本質があるんだということが見えてきました。何よりも今回のリブランディングの目的は、次の事業ステージに適した新しいブランドイメージに進化させること。目的に立ち返るとエッセンスは取り入れつつも、ロゴも新しい形で出すことが大事だと思いました。

こうした社員の意見に勇気づけられて、「リファイン」の方向性を思い切って無くし、5つのアイデアに方向性を絞ることができました。

画像19

役員を交えて最終決定
取締役の3人にロゴツアーの結果を改めて報告。ラスト5案についてディスカッションを行いました。ここは驚くほどスムーズに進み、満場一致でこちらの案に決まりました笑。社員同様にマネジメント陣もデザインやブランディングへのこだわりは人一倍強く、実は初期段階から5,6回はディスカッションをしながら進めていました。「最初はあれだけ紛糾したのに、これだけすんなり決まるんだから良いものに違いない」と勝手に思った記憶があります笑。ブランドを体現している社員や役員のフィルターを通して決まったものなので、僕らとしても自信を持って「これでいこう!」と思えたんだと思います。

画像23

​7.強度検証・仕上げ

最終ロゴ案が決まったので、あらゆるデバイス・タッチポイントに反映して問題ないか大きさやカラーの検証をしていきます。視認性やブランドイメージをポイントにおきながら、パターンを出しては検証を重ねます。特に色と形の調整は最後までこだわって調整していきました。加えてこの辺からカラーパレットやキービジュアルのパターンも出していきました。

画像20
色調のお話し01
画像22

8.社員へのお披露目

最終案が決まってから、「slackで、はいコレです」と伝えるのも味気ないので、月例のMTGで社員みんなの前で発表させてもらいました。発表の演出にもこだわりスライドを作成、ロゴのコンセプトを表現したモーショングラフィックで発表をしました。(こちらは博報堂に作ってもらいました)

改めてロゴのコンセプト、そして今後の展開や社員とブランドの関係を伝えました。みんなが受け入れてくれるか相当ドキドキしましたが、反応が上々だったので一安心しました。

VIリニューアル発表用.001

9.ユーザーの方や周りからの反応

リリース後もドキドキでしたが、賛否様々なご意見いただきつつも、概ねポジティブな反応だったのではと思っています。

他社さんもやっていますが、ここで良かったのは、ロゴのプロモーションページを作ったことかなと思います。コンセプトをしっかりビジュアルで1枚のページとして伝えることでユーザーの方もなぜVIを変えたのか?ということを理解して受け入れていただきやすくなったのかなと思っています。

10.事業会社のリブランディング活動で学んだ大切なこと

インハウスデザイナーが自社のリブランディングをやることの意義
今回のプロジェクトは、事業のフェーズが変わることに対するリブランディングだったので、VIもゼロから新しいものを作る必要がありました。結果的にインハウスで制作することになったのは、このような根本からのリブランディングは、「事業や会社、ユーザーをよく知っている必要がある」のと、「自分たちも作りたいものがまだ見えていないので、高速でプロトタイピングしながら方向性を固めていく」必要があったからだと思っています。前の章でも書きましたが、考え方としてはプロダクト作りと同じで、デザインを作り、フィードバックをもらいリーンに開発していくというやり方です。

現状のブランドをブラッシュアップしていく形であれば、丸っと外部にお願いすることでもワークしたかもしれませんが、今回のようなプロダクト作りと同じような制作スタイルだと「フィードバックをもらって素早く反映を繰り返せる体制」が大事です。さらにココナラが既存とは異なる「オンラインのスキルシェアマーケット」のような新しいマーケット創出にチャレンジしているという点でも、サービス・事業理解にどうしても時間がかかってしまいます。

その点で日頃から事業やユーザーに共感して、実際にものを作れるインハウスのデザイナーが今回のようなプロジェクトをリードする意義は大きかったと思っています。社内の人間が誰よりも熱意を持ってリードすること。そして素早く作って、フィードバックを得る、そして改善していく体制をいかに作れるかが大切な気がします。

11.twitterでも発信しているのでぜひフォローを!

長い内容お付き合いいただきありがとうございました。ブランディング以外でもデザイン、プロダクトマネジメント、組織作りとかについても発信しているので是非Twitterのアカウントもフォローいただけると嬉しいです!





いいなと思ったら応援しよう!