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職人後継者育成への取り組み
職人見習い 前田結嬉
匠宿では、ものづくり体験を通しての工芸技術伝承だけでなく、職人の後継者育成にも力を入れております。
そして今年度、職人見習いとして匠宿の仲間となったのが前田結嬉さん。
2023年3月に静岡デザイン専門学校を卒業し、4月から匠宿の工房「竹と染」工房長でもある、お茶染め職人の鷲巣恭一郎氏に弟子入り。静岡市のクラフトマンサポート事業を利用しながらお茶染めをはじめとした染色の修行をしています。
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■どんな思いで前田さんを弟子として迎えたか鷲巣恭一郎氏に聞いてみました。
―なぜ前田さんを弟子にとることに決めたのですか?
前田さんから「職人としてやっていきたい。」
その申し出を受けて私は先ず、
「将来独立して弟子を育てるまでのイメージと覚悟はあるか?」
という問いかけをしました。
「やります。」
そう即答してくれたので、私も彼女を弟子としてとることをその場で決めました。
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経験もなく何を根拠に覚悟をすれば良いのか分からない人が多い中で、自分の人生は自分で決めるというはっきりとした意思が彼女にはありました。
伝統工芸界に身を置く者として、業界の発展と後継者育成に寄与することは責務であり、私もそのために日々奮闘しておりますが、一個人ではなかなか難しいことが多いのも実情です。
しかし伝統工芸体験施設「駿府の工房 匠宿」という場があることで、静岡市、匠宿、職人の三者が協力しあいそれらを推し進めていくことが可能となりました。
彼女には私から教わった技術をもとに、自らの表現で多くの人達を笑顔にするものづくりをしてもらいたいと思います。
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■弟子入りするまでの葛藤や、ここまでやってきて感じることを前田さんに聞いてみました。
―弟子入りすることに迷いはなかったですか?
弟子入りするまでの葛藤は特になく、せっかく一度しかない人生なんだから自分のやりたい事をやっていきたいという気持ちだけで鷲巣さんを伺いました。
―弟子入りしてからここまでやってきて、感じることは?
弟子入りをして半年、様々な体験をさせていただきました。
お茶染めはもちろん染め物全般を学んでいく中で、躓くことや大変なこともたくさんありました。
しかし、それを忘れられる程の達成感や相手のもとへ届いた時のお礼のメールや、言動が私自身のやる気への繋がっています。
また自分がやりたいと思った事を口に出して受け入れてくれる師匠をはじめ、匠宿という施設があるからこそ伸び伸びと活動することができています。
これから先、自分がどんな事に挑戦し、どんな人達に出会えるのかとても楽しみに活動しています。
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匠宿は今後も、静岡の工芸を未来へ繋いでいくため、工芸職人を志す若者の育成をサポートして参ります。