なぜ工学部から法科大学院に行くのか
現在工学部所属の自分がどうして法科大学院を受験しようと思ったのか.どうして法律を学ぼうと思ったのか.
今の専攻のままでいいのかなと思っている人や、文転を考えている人にとっては役立つ情報があるかもしれません.
何か1つでも得られるものがあれば幸いです.
☺︎
そもそもの前提として自分は現在、工学部マテリアル工学科というところに所属している.ただマテリアル(材料)の研究にそこまで興味を持っているわけではないので,今後もこの道に進もうという気はない.なので,大学院も継続してマテリアルに行こうと思ったことはなかった.
そこで大学でのマテリアルに関する学習以外に,人工知能の分野に興味をもってインターンを通して勉強することになった.このインターンでは特にコンピュータビジョンの分野を扱っている.
そう,今流行りの人工知能ブームに乗っかったのだ.しかし,ただ流行っているから始めたと言う訳ではなく,実際にいくつか技術を学んだ上で,面白い!と思ったから始めた.
特にコンピュータビジョンの分野は結果が画像として表示されるのでイメージし易く,初心者でもとっつき易い.数式ももちろん出てくるが,他の分野と比べればそう難しいものではない.
☺︎
さて本題に移ろう.
ここまで読むと、面白いなら人工知能分野のエンジニアになればいいのでは?情報系の大学院に行くのが良いんじゃない?と思われるかもしれない.自分もそう思っていたし,そのつもりだった.
でも,そうはしなかった.理由は大きく3つ.
1つの理由としては,パソコンの画面を長時間見続けるのはしんどいからだ.いつもインターンの後には頭痛が襲ってくるので,僕はパソコンをずっと使い続ける仕事には向いていない.
2つ目の理由は多分僕の学力,技術力では希望の研究室に行くことはできないと思ったからだ.このことは3つ目の理由にも繋がる.
3つ目は僕の戦う場所はここではないと思ったからだ.
☺︎
さて,3つ目に挙げた理由がメインとなるなのだが,もう少し掘り下げて話したいと思う.
そこでまず,僕のプログラミング経験について話したい.
先述した通り僕はマテリアル工学科なので、大学の講義にプログラミングを扱うものはほとんどない。一応少しはあるが,とても基本的なものだけだ.
そんな自分がプログラミングを始めたのは,学部3年の5月頃だった.この時は単にプログラミングというものに触れたくて、PHPを扱うインターンに参加した.このインターンは選考もなく簡単なもので,3ヶ月ほどチームで簡単なwebサイトの機能を実装しようというものだった.このインターンを通してもプログラミングというものがいまいちよく分からなかったので,夏休みには,プログラミングスクールに通った.ここではRuby, Railsを用いたWebアプリ制作や、Pythonによる機械学習の基本を学んだ。この経験から,自分はwebアプリやサイト作成ではなく,機械学習,人工知能の分野を学びたいと思い,人工知能関連のスタートアップ企業でのインターンを始めた.それ以来先述の通り,インターンでコンピュータービジョンの分野を学んでいる.ちょうど今で1年くらい経った.
本格的にプログラミングと呼べることをしたのはこのたった1年である.つまり,自分はまだまだプログラミング初心者だ.
そんな自分だが,いくつかハードな環境に突っ込んできた.例えば,Google主催の機械学習イベントに参加したし,インドの人工知能関連スタートアップ企業でのインターンシップも経験した。そして,もちろん現在のインターンもそうであるし,人工知能に関する勉強会にもいくつか足を運んだ.
そうした経験を経て,常々痛感してきたことがある.それは,
「大学生よりも前からプログラミングをしている人たちには勝てない.情報系の学科にいる人たちには到底及ばない.」
といことだった.
この分野では、自分は敵わない、やっていけないと思った。
もちろんどんな分野も最初からできることなんてほとんどないのは分かっているし,もっとやってみて考え直す選択肢もあった.でも,いくら考えても僕には未来が見えなかったし,僕の戦場ではないと思った.
想像して欲しい.
2020年から小学校でプログラミングが必修になる。自分は大学3年生になってようやく出会ったプログラミングに、子供達は小学生という早い段階で必ず出会えるようになるのだ。そんな子供たちが大学3年生になったときどれほどのスキルを有するのだろうか.少なくとも自分の3年生の頃とは比べ物にならないだろう.
想像して欲しい。
自分が大学受験のための勉強をしていた時に同じくらい時間を使ってプログラミングを学んでいる同世代の人がたくさんいる.スポーツで言えば小さな頃からバレーボールをしている人が集まる大学チームに,初心者の人が突っ込むようなものである.
僕にはこの現実から正攻法では勝機が見出せなかった.
良く言えば,自分の戦えるフィールドを探した,そして,悪く言えば,僕は逃げたのである.
☺︎
どちらに捉えるかは人それぞれだが,少なくとも僕は前者のように捉えている.そして,その中で考えたことをまとめていきたい.
先ほどプログラミングをしている中で,自分は敵わないと思ったという話をしたが,それはつまり「あ、俺この分野では ”活躍” できない」ということだ.たぶんある程度良い企業に入ってある程度良い収入をもらうことはできるだろう。でも,その程度で終わってしまうのが,僕にとっては怖く,またつまらないと感じてしまった.
だから考えた。どうすれば活躍できるのだろうかを考えた.大学の教授を始め友人などいろんな人にも相談した.
そこで辿り着いた答えが、分野を掛け合わせるというものだった.つまり,自分の場合は法律とIT分野(特にAI)である.
法律家はたくさんいるし,AI開発をしている人もたくさんいる.でも法律の知識を持ち,AIの知識も持っている人はそうはいない.理系出身の弁護士は貴重だという話も聞いた.さらに近年はIT技術が多様化し,これまで以上に需要が大きくなりそうだ.
狙い目のように感じないだろうか.少なくとも自分はココだと思った.
戦わずして勝てる選択肢があるならそっちを選ぶ.
人工知能分野の競争は熾烈で,どんどん技術は発展していき,常にそのトレンドを追い続けなければならない.さらに,計算機のスペックといった,どうしようもない所で勝負がついてしまうことがザラにある.そう考えると,日本がアメリカや中国を相手に戦うのは中々厳しかったりする.
そして,法曹も同様.弁護士の数が以前と比べ急激に増えてきていることは周知のこと.その中で活躍することは難しいだろう.
他の選択肢はないだろうか。避けることができるならそんな戦いは避けたい.「逃げる」のではなく「避ける」のである.無駄な戦いはしない方が良い.
以上が工学部から法科大学院に進学しようと思った理由である。
☺︎
おまけに,分野を掛け合わせることのイメージを語っておきたい.
上の絵の中では法律(青)とAI(赤)の分野を1つの山に見立てて,書いている.
どんな分野でもテッペンまでいくことは難しい。絵で言えば三角形の上の先っぽの方である。一方、真ん中の方くらいまでは比較的すぐに行くことが可能だ.これは学生の頃の試験の成績を想像すれば理解しやすいと思う.例えば、偏差値40の人が偏差値50まであげることはそう難しくない.基本的なことさえ詰めれば、グングン伸びて行くからだ.他方、偏差値60の人が偏差値70にするのは難しい.基本的なことはすでに身についており、あとはその知識をいかに上手く使いこなすかといったセンスが問われるてくるからだ.つまり、単純なインプットだけである程度のレベルには到達する.しかし,それ以上のレベルに到達するためにはセンスや感覚が必要になり,それは一朝一夕で身につくようなものではないのだ.
そこで注目して欲しいのは,真ん中の紫色の三角形だ.
ヤマとヤマが重なると,そこには新しいヤマができる.
もうすでに何が言いたいのかわかるだろう.
法律とAIのヤマで真ん中まで昇りつめれば、そこはすでに新しいヤマの中では上位に位置するのである.
ヤマの大きさはまだ小さい.だが、そこの人口が増えていけば,それに従って,ヤマは大きくなる.最初にそのヤマに気付いた人間がそのヤマを開拓して行くのだ.僕はこの新しいヤマで戦って行こうと思った.なぜなら,そこに勝機を見出したからだ.
この選択が吉と出るか凶と出るかはまだまだ分からない.偉そうに語っているけど,これが正解なのかなんて分からないし,むしろ正解だと言い聞かせているところもある.正直怖い.
友達は理系の院に進むか就職するかのどちらかだし,法科大学院の未修コースは3年制なので理系の院より1年長い.さらに,大学院修了の先で司法試験をパスしなくてはならない.
先の見通せない将来というのは非常に怖いものである.でも,今の自分の中では、怖さよりも楽しみや期待が優っている.少なくともこのまま理系の道に進むより、将来に希望を持てている.
☺︎
最後に,僕にとって心の拠り所となる教訓で締めくくりたい.
スティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの中で,"Connecting the dots"という話がある.
その中の一節がこちら.
簡潔にまとめると,一見無関係のように思われる点(経験)と点が,今は分からなくても,後で振り返ってみると繋がる.だから自分を信じてやりたいことをやりなさい,という話だ.
僕は僕が信じた道をとことんやってみようと思う.
☺︎
楽しんでやってます☺︎