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坂本一成の建築研究⓪

概要

坂本一成は、篠原研に在籍する中で独立住宅の設計をはじめ、以後、集合住宅、そして学校や商業建築といった様々なビルディングタイプへその対象を広げていった建築家である。一方でその設計活動の中では、彼が現実社会との齟齬に翻弄されながらも建築を思考の形式として考えることで立ち向かっていった軌跡をみることができる。

そこで彼の作品とテキストをクロノロジカルに分析していくことは、建築が拡散していく現代に生きる私達が、建築そのものを再考する上で有効な手段になり得るのではないか?

告知ポスター
坂本一成に関する情報の整理


本研究会で扱うテキスト

本研究会で扱うテキストは以下の通り。

主に扱うテキスト

坂本一成『坂本一成 住宅-日常の詩学』(2001)
坂本一成『建築に内在する言葉』(2011)

上記の2冊で雑誌発表されたテキストが再編集されて掲載されているため、この2冊で充分にカバーできると思います。
他『日常の詩学』と『建築に内在する言葉』に記載されていないモノは、雑誌発表されたテキストを参照しましょう。

坂本一成・多木浩二『対話・建築の思考』(1996)

多木浩二との対話形式で集住までの作品に関して扱っている。難解な言説を議論するのに取り扱いたい。

坂本一成・長島明夫『建築家・坂本一成の世界』(2016)

今回の勉強会ではテキストと共に実体も見ていくため、作品集も参照する。


参照するテキスト

坂本一成 等『建築を思考するディメンション―坂本一成との対話』(2002)

内藤廣や妹島和世といった建築家との対話の中で、異なる視点で坂本論が語られている。

長島明夫『多木浩二と建築』(2013)(『建築と日常』の別冊)

坂本一成との対談が掲載されている。

補助線となるテキスト

多木浩二『生きられた家』(1976)

坂本一成が本書籍に大きな影響を受けているため、より理解を深めるのは読むことを推奨。
※奥山先生の修士課程の座学の講義にて本書籍をメインに取り扱う講義がある。

各回の予定

全三回を予定しています。今回はテキストに加えて、実作の分析も図面を参照する予定なので対面で行う予定です。各回で扱う範囲は次の通り。

第一回

散田の家(1969)から南湖の家,今宿の家(1978)までの〈閉じた箱〉〈家型〉が主題となった作品と該当するテキストを扱う。

第二回

〈家型〉から図像性や環境としての建築へと移り変わっていく時期である、散田の共同住宅(1980)、祖師谷の家(1981)、HOUSE F(1988)といった作品を取り扱う。また坂本研でのイメージ研究にも言及していきたい。

第三回

上記の2回では独立住宅を扱うが、第三回ではコモンシティ星田(1992)や幕張ベイタウン(1995)といった集合住宅、そして佐賀歯科医師会館(2017)までの様々なビルディングタイプへの展開と最終的なまとめを行う。

進めていく上での指針

第0回では、本研究会での全体的な論点を整理するために雑多に議論した。その中でいくつかのキーワードが挙がったので記載する。

構成と構築

坂本一成を扱う中で構成という言葉が重要になってくるが、テキストで抽象化された構成という視点で実体の建築が語られても、一方で実体としての建築は構築物として存在する。実際、坂本一成はその構成と構築の間に対して非常に苦悩していたことが見て取れる。

そこで本研究会ではテキストと並行して作品の分析を行う際に、構成と構築という指針を掲げることとした。具体的にはテキストでは語られることのない素材や架構といった即物的な部分をみていきたい。

東工大の系譜

篠原研、坂本研への流れと、そして現在我々が所属する各研究室までの思考の流れを確認する事で、研究活動を行っていく上で、より俯瞰的な視点を獲得することを目的とする。

例えば、アトリエ・ワンの活動を坂本研の構成論を基盤として成立しているという仮定の中で、見返すことによってより深く解釈が進むのではないか?など

テキストの空間(言説)と空間のテキスト(修辞)

テキストと実体との関係を考える。建築とはテキストとの相互関係にのみ成立してしまっているのではないか?という仮定の中で考えていく。関連する問題として、実際に坂本一成も多木浩二の『生きられた家』やハイデッガーを参照し、建築に対する建築家と一般の人との視点の違いに関して「〈住むこと〉、〈建てること〉、そして〈建築すること〉」(初出『新建築』1978年12月、『建築に内在する言葉』に収録)で言及している。


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