「形容詞に逃げない」という考え方

今回は、ひきたよしあきさんの著書、『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』について紹介したい。

著者は博報堂のスピーチライター・クリエイティブプロデューサー。
会社の社長や政治家のスピーチを書く仕事をされているそうで、話すこと書くことのプロの方である。

本書では、"言葉にできないコンプレックス"を抱える、社会人3年目の山崎大くんと、広告会社に勤めながら大学で言葉について教えている和田先生との対話形式で話が進んでいく。


紹介されている25個のメソッドの中から厳選して、これは今からでも試してみたいと思ったものを3つ挙げる。

30秒で、ものの名前を10個言う

和田先生はまず、「語彙力が不足している」「頭が真っ白になってすぐに言葉が出てこない」と悩む山崎くんへ、こんなトレーニングを勧めている。

「30秒で、図形の名前を10個、声に出して言う」
「30秒で、ヨーロッパの10都市の名前を言う」
「30秒で、売れている小説家の名前を10人言う」


頭の中で思うだけではだめで、声に出すことがポイント。
一見簡単そうだが、やってみるとけっこう言葉に詰まってしまう。
私はどれも6~7個しかでてこなかった。
特に売れている小説家が10人出てこなかったのには自分でも意外だった。
これは単に私の知識が不足しているからだろうか。

ただ、和田先生はこのように言う。
言葉が出てこない原因は、決してボキャブラリーがないということではなく、脳にインプットされている言葉が湿った花火のように、パッと閃かなくなっているだけなのだと。

そして、「30秒で、ものの名前を10個言う」トレーニングを続けていけば、言葉の花火がバンバン上がるようになるらしい。

ほんとうなのか?

それはともかく、この「湿った花火」という言葉は言い得て妙である。

要するに、サッカー選手がリフティングするように、歌手がボイストレーニングするように、言葉を豊かに話すためには、脳を使ってアウトプットするトレーニングが大切ということだ。

ちなみに「ものの名前」は、「日本の歴代首相10人」でも「人気の芸人コンビ10組」でも何に置き換えてもいいらしい。

私は、風呂場でぼーっとしていることが多いので、遊び感覚でこのトレーニングを取り入れようと思っている。

形容詞に逃げない

続いて、形容詞で自分の感想を言うのはやめようという話である。

形容詞とは、

例えば、「みかん」という名詞があるとする。これに「おいしい」「すっぱい」「大きい」「丸い」「重い」なんて情報を加える言葉のこと


私はこの「おいしい」をよく使ってしまっている。
他にも、「おもしろい」「面倒くさい」など、形容詞だけで感想を言っていることが多い。

和田先生曰く、それは、受身の姿勢で、起きている出来事にただ反応しているにすぎないのだとか。

みかんの例で言えば、「みかんが、おいしい」ではなく、「みかんが、甘い」でもなく、

「柑橘系の匂いで、気持ちがリラックスしました」
「ビタミンCが豊富で、風邪を引かない気がしました」
「指が黄色くなって、みかんをたくさん食べていた子どもの頃を思い出しました」

などと考えていく。
これらのように、嗅覚や視覚などの五感を使って表現する、過去の思い出の中から探してくる、などはおすすめの方法らしい。

そして、

何よりも大切なのは、形容詞を使わないって決めることだ。


「形容詞を使わない」、なるほどこれは分かりやすいし、実践しやすい。
完全に形容詞を脱しきることが難しくとも、「〇〇だからかわいい」とか、「〇〇のところが特に良かった、ありがとう」などと、形容詞+〇〇というふうにやるだけでも相手への伝わり度は変わってくると思う。
こういうちょっとしたアレンジからはじめていって、いずれは形容詞から完全におさらばしたいものだ。

「〇〇という考え方」で仮説を立てる

もし人から、「その発言は誰かの意見の受け売りで、オリジナリティがない」などと言われてしまったらどうするか。
オリジナリティをどうやって作り出すことができるのだろうか。

悩む山崎くんに対して、和田先生は「仮説を立てる」ことを勧めている。

難しい話じゃない。「〇〇という考え方」と最後につけると、だんだんと仮説を立てて語れるようになってくる。

例えば、アイスクリームを見て、「このアイスは、白くておいしい」というのではなく、

「アイスは、バケーションという考え方」
「アイスは、国民食という考え方」
「アイスは、クールビズという考え方」
「アイスは、映画という考え方」
「アイスは、いのちという考え方」
「アイスは、プロポーズという考え方」
「アイスは、祝福という考え方」

というふうに「という考え方」を最後につけると、だんだんと仮説を立てて語れるようになる。それがオリジナリティにつながるのだと。

私は、「仮説を立てる」なんて考えたこともなかったし、ものすごくハードルが高いものと考えてきた。ただ、和田先生は、そんなに難しいものではなく、「〇〇という考え方」をくっつけるだけで、だんだんと語れるようになりますよ、と言っている。
確かに上にある例は、オリジナリティに溢れている。読みたくなる記事の見出しのような、要約力が感じられる。

自分なりの切り口を磨いていくためにも、「〇〇という考え方」を日頃から取り入れていきたいと思った。

まとめ

①言葉が出てこない原因は、決してボキャブラリーがないわけではない。脳にインプットされている言葉が「湿った花火」の状態になっているだけ。
「30秒で、ものの名前を10個言う」トレーニングをして、自分の頭の中にある言葉を知り、さらに続けることで、語彙力を広げていくことが可能。

②形容詞(おいしい、すっぱい、大きい、丸い、おもしろい、面倒くさい等)で感想を言わないようにする。
「おいしい」で済ませるのではなく、なぜおいしいのか、どうおいしいのか、食べたあとでどんな気持ちになったのかを具体的に、五感を使って表現してみる。

③「〇〇という考え方」で仮説を立てる。
オリジナリティのある発言をするためにも、「アイスは、バケーションという考え方」「アイスは、国民食という考え方」「アイスは、クールビズという考え方」というふうに、「という考え方」をつけるだけで、だんだんと仮説を立てて語れるようになる。
日頃から取り入れることで、自分なりの切り口を磨くことが可能になる。

・本書を読んで、「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」をなくすのは、簡単ではないと感じた。
ただ、言葉との向き合い方や行動を変え、日頃からトレーニングを積み重ねていくことで、時間をかけて改善していくことは充分に可能であろうと思えた。私はまず、今回取り上げた3つのメソッドを、日々の生活の中で実践することからはじめたいと思う。

いいなと思ったら応援しよう!