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相手を動かす「話し方」

今回は岡本純子さんの著書、『世界最高の話し方』を取り上げてみたい。 

著者は「伝説の家庭教師」と呼ばれ、エグゼクティブ・スピークコーチとして、有名カリスマ社長、知事や閣僚、大学の理事長など、1000人以上の社長、企業幹部を指導してきたお方である。

私は、これまで「話し方」に悩むことが多かった。
具体的にいうと、「自分の意見が言えない」とか、「急に話をふられた時にしどろもどろになってしまう」とか、「大勢の前でのスピーチでガチガチに緊張してしまう」などなど。

本書を読み終え、そもそも悩みの内容そのものが見当違いだったことに気づかされた。
「自分の意見」を前のめりに言う必要もなかったし、スピーチの時に「面白いことを言わなきゃ」などと力む必要もなかったのである。周りが何を聞きたいか、その研究がすっぽり抜け落ちていることの方が問題だったのだ。


さて、いきなり本書の結論をいうと、「最高の話し方」とは、自分が何を話すかではなく、相手をどんな気持ちにさせるかが大切、ということだ。雑談であれ、スピーチであれ、プレゼンであれ、目をつぶって豪速球を投げつけるのではなく、相手のミットめがけて、コントロール良く「受け止めやすい球」を投げること、まずはそこからはじまる。

「受け止めやすい球」の例として、「校長先生の長話」を思い浮かべてみるといい(素晴らしい話をされる校長先生もおられると思いますが…)。
いくら正しいこと、ファクトを振りかざしたところで、聞き手が「自分が聞きたい情報」でなければ、話は容易には入ってこないのである。


人は「自分が聞きたい情報だけ」を受け入れる生き物
「相手が興味のある情報」でなければ、受け止めてもらえない


この「超基本」のコミュニケーションの原則をふまえつつ、本書を読んで、特に気づきを得た次の3点をアウトプットしておく。


相手にマイクを渡す


相手をどんな気持ちにさせるかが大切、というのが本書が最も伝えたい重要なメッセージと考える。では、どのように相手が聞きたい情報を受信していくべきなのだろうか。


二流ほど「口」を動かし、一流は「目と耳」を動かす


と本書にはある。
ハーバード大学の心理学者の研究によると、「自分のことを話すとき、人はお金や食べ物、セックスと同じような快感を覚える」のだという。
人の「話が止まらなくなる」のはこういう理由があるのだ。

ならば逆手に取って、「マイク」を相手に渡して、「相手に何を気持ちよく話してもらおうか」と考えることができれば、結果として、雑談や会話はどんどん弾むらしい。

本書には、「雑談マスター」となるためには、まず質問力が重要であることが書かれていて、「4種の質問」が紹介されている。

「元気ですか?」「どちらの出身?」などという「導入質問」
聞かれた質問と同じ内容を聞く「聞き返し質問」
相手が言ったことに関するフォローアップ質問
トピックを変える「ギアチェンジ質問」

このように多彩な質問を織り交ぜながら、「質問→聞く→質問→聞く→時々自分の話をする」というようにサイクルを回すことがいいらしい。
自分はあまりしゃべらずに、相手ペースで会話をしていくことが雑談を制するコツなのだとか。
個人的には、多彩な質問に加えて、多彩な相槌を打つことができれば、さらに雑談をリードしていけるのではないかと考えている。


3つありますロードマップ


人に何かを説明するとき、あれもこれもとなって、結局ぐだぐだな説明になってしまうことがある。これは、自分自身で「何を話すか」の地図を描けていないからだろう。
本書に紹介されている、ハンバーガー話法(結論→中身→結論)は、以前ちがう本で読んだPREP法(結論→理由→事例→結論)とほぼ同じで、フレームワークの超基本となるべきもの。
この話法をすでに私は使っていて、効果的なのを実感している。


他にも、「3つあります」ロードマップという話法も紹介されている。これもかなり使い勝手が良さそうだ。
「3つあります」ロードマップとは、結論を述べて、「その理由やポイントは3つあります」と説明をしていく方法である。

世界のトップエリートたちの多くが、「3つある」を口癖にしているらしい。なぜ、2つでも4つでもなく3つがいいのか。それは3つが多すぎず少なすぎないマジックナンバーだから。
例えば、2時間の講義を聞いたときに、そのすべてを覚えるのは難しい。今日は3つだけ学んで帰ろうと考えた方が効率よく学べる。
聞くほうだけではなく、しゃべる場合も同じだ。「理由」が10個ぐらいあったとしても、3個にしぼって説明したほうが相手に伝わりやすい。
そして、「3つあります」と言うことで、聞き手の脳内に地図を描かせ、迷わせないという狙いもある。
そういえば、小池百合子都知事の言った「三密」もこの話法を使っている。
何かを説明するときに使ってみたい話法である。


アイコンタクトはキャッチボールスタイルで


この本を読むまでアイコンタクトが苦手だった。
私は、大掛かりなプレゼンをする機会は滅多にないのだけれども、50人ぐらいの前で、自分が働いている職場の紹介をすることなどがある。この時間が毎回苦痛である。
職場の紹介と言っても、ざっくりとした感じでいいのだが、自信がないので、自分が考えてきた原稿をもとに、えいや!っとしゃべる。その時私の目線は、手元の資料か聞き手の頭と天井の間ぐらいの空間に向いている。アイコンタクトなど考えたこともない。ただ、著者はこのように述べている。


「たったひとつだけを変えられるとして、最大の効果をあげるものは何ですか?」と聞かれたら、迷わず「アイコンタクト」と答えます。


アイコンタクトを交わすことで、気持ちが通じ合い、共感しやすくなると。そして、日本人はみな、欧米人に比べてアイコンタクトの頻度が低く、そのやり方も間違いだらけなのだとか。


①会場全体をなめるように見渡す「灯台」方式
②会場を複数のブロックに分け、順番に「かたまり」に目を向ける「ロボット」方式
③ほとんどの時間、スライドを見て話し、聴衆にはお尻しか見えない「見返り美人」方式
④メトロノームのように、右→左と順番に目線を振り向ける「テニスの観客」方式
⑤ずっと下を見て手元の資料を読み上げ、たまに顔を上げる「もぐら」方式


これらはすべて間違ったアイコンタクトのやり方らしい。恥ずかしながら私は、もぐら方式がいちばん近いかもしれない。では、どのような「アイコンタクト」が正解なのか。
それは、「キャッチボール」スタイルなのだという。


順番にキャッチボールをしていくように、観客一人ひとりと目線を交わしていきます。
「Aブロックの若い女性」
「Bブロックの中年男性」
といった具合に会場の誰かひとりにスポットライトを当て、その人と会話するように「話しかけて」いく。
そのときに、まるで会話のように自然にアイコンタクトを交わしていけばいいのです。


先日の会議の際、勇気をふりしぼって、このキャッチボールスタイルのアイコンタクトを試みてみた。まずはしゃべりながらSさんを見る。下を向いていた…。次にTさんを見たところ、めちゃくちゃ笑顔でうなずいてくれているではないか!このとき緊張がスーッと抜けていくような感覚があった。これがアイコンタクトの効果なのだなと実感したのである。当然その後は落ち着いてしゃべることができた。
とにもかくにも「アイコンタクト」を実行してみること、うなずいてくれる人や反応の良い人をさがすこと、この2点が重要であると感じた。
今後も実行していきたい。


まとめ


・「最高の話し方」とは、自分が何を話すかではなく、相手をどんな気持ちにさせるかが大切。

・二流ほど「口」を動かし、一流は「目と耳」を動かす。相手に「マイク」を渡して、「相手に何を気持ちよく話してもらおうかと考えることができれば、結果として、雑談や会話はどんどん弾む。

・説明をシンプル&クリアにするために、「3つあります」ロードマップ話法(結論を述べて、「その理由やポイントは3つあります」と説明をする方法)を使う。

・アイコンタクトはキャッチボールスタイルでおこなう。キャッチボールスタイルとは、「Aブロックの若い女性」「Bブロックの中年男性」といった具合に観客の一人ひとりと、目線を交わしていくスタイル。うなずいてくれる人や反応の良い人を探すのがポイント。

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