経験だけでは身につかないライティングスキルとは?
樺沢紫苑さんの『インプット大全』で覚えた言葉がある。
「AZで行こう!」
アウトプット前提(AZ)のインプットをしよう、という意味だったかと記憶している。
本を読んだら必ず感想を書こうということだ。
本は受け身で読むべきではない。その本から何を学ぶかを自分で選び、学んだ知識を人に伝えたり、現実に生かしたりしてこそ、記憶に深く定着させることができる。
だから私は、読書をしたら感想を書こうと決めた。できればこのnoteに。
ただ、noteに書く場合、読み手を意識してしまうためか、時間がかかってしまうというのが今の悩みどころである。
もっと効率良く読書の感想を書けるように、そして正確に読み手に届く文章が書けるようになるにはどうすればよいか、そんな思いでこの本を手にとった。
『書く技術・考える技術』倉島保美著
倉島保美さんのこの本には、「読み手に負担をかけないビジネス文章」を書けるようになるためのノウハウが詰まっている。
基礎編、理論編の中から、特に学びを得た以下の5つのポイントについてアウトプットしておきたい。
①「書く技術」は経験では身につかない
まず著者はこの本で何を問題提議しているのだろうか。私なりに要約すると次のようになる。
「書く技術」は学習することではじめて身につくもの。経験では身につかない。
ここでいう「書く技術」とは、相手に伝わりやすい効果的なビジネス文章のことを指す。
なぜ経験では身につかないのかというと、フィードバックが得られないからだと著者は述べている。
もちろん、書いた文章の内容については、褒められたりダメ出しされたりと反応をもらうことはある。ただ、「書き方」そのものについては、ほとんどの人が「効果的な文章の書き方」を知らないから、正しい指摘ができない。個人の主観で好きとか嫌いといった反応はあっても、客観的で正しいフィードバックが得られないのだという。
私は、「書く技術」は、たくさん書くことによって身につくものと思ってきたので、この著者の言葉には驚きがあった。
たしかに本書に紹介されている、メンタルモデルやパラグラフの構成などは、意識しなければ文章に落とし込めないものである。
そして、ただ知っているだけではダメで、実践してセルフチェックをして身につけるものだと著者は述べている。
②読み手のメンタルモデルに配慮する
本書で最も参考になったのは、メンタルモデルという考え方である。
メンタルモデルとは、人が頭の中に作る自分なりの理解の世界のこと。
聞き慣れない言葉ではある。ただ、この下記の例をみるとわかりやすい。
例えば、ある文章の中で、「第1の原因は、」とあるのを読めば、人は次の2つのことを予想しながら、なるべく高速に情報を処理しようとします。
・「第1の原因は、」の直後には、原因を説明する。
・第1の原因を説明した後に、「第2の原因は」というキーワードとともに 第2の原因が説明される。
「第1の原因は、」と書かれてあるだけで、読み手は勝手に次の文章を予測する。「次はこうくるだろう」と情報の予測をさせ、予測が的中すれば、高速で情報を処理できる、すなわち理解がしやすくなるという仕組みである。
このメンタルモデルを理解し、使うことによって、相手に伝わりやすい文章を書くことが可能になるのだ。
ただ、注意点もある。それは、読み手のメンタルモデルの既定路線から外れないように文章を書かなければならないということ。
先の例で言えば、「第2の原因は」の直後に原因が説明されなかったり、第2の原因を説明する時に「第2の原因は」というキーワードが使われなかったたりした場合、読み手は混乱する。
まずは読み手に、「理由は3つある」などとメンタルモデルを具体的に作らせ、そのモデルを壊さないように配慮(「1つ目の理由は〇〇、2つ目の理由は〇〇、3つ目の理由は〇〇」と展開する)していけば、伝達性は格段にUPするということだ。
この「メンタルモデル」は、人に伝わる効果的な文章を書くために、とても重要なキーワードであると感じた。
③総論から書く
総論とは、結論と同じで、つまり文章全体の要約のことである。
ポイントは、総論だけでも文章全体の内容がわかるように具体的かつ簡潔に書くこと。
「結論から言え」とはよく言われることで、重要なポイントから述べるのが大事なことは私も理解している。
では、なぜ大事なのだろうか。
著者は、文章の冒頭に重要な情報を書けば、次の5つの効果が期待できると述べている。
①読み進むべきかを的確に判断できるので、必要な情報だけを読める
②メンタルモデルを作ってから読めるので、一読で理解できる
③根拠を確認しながら読めるので、一読で理解できる
④ポイントが強調できる場所に書いてあるので、重要な情報を記憶できる
⑤話が脇にそれにくくなるので、論理的に構成できる
特に①②が大事と感じた。多くのビジネスマンは忙しい。先に総論を書くことによって、「この文章は読む価値のあるのかどうか」を判断でき、必要がなければ読み飛ばすこともできる。
また、メンタルモデルも作れるため、文章の展開を予測しながら読めるようになる。理解がしやすくなるのだ。
書くときも、読むときも、話すときも、聞くときも、自分が何を伝えたいのか、相手が何を伝えたいのかを「要約する力」、このスキルを上げていくことを日頃から意識して、取り組んでいくことが重要であると感じた。
④詳細はパラグラフを使って書く
総論を書いたあとには、各論を書く。
各論とは、総論で述べたことを詳細説明する文章のこと。
各論はパラグラフを使って書きましょうと著者は述べている。
パラグラフとは、あるひとつのトピックについて述べるのを目的とした文の集まりのこと。
つまり、あれもこれもと文にたくさん詰め込んでいては、論旨がぶれて、伝わりにくい文章になってしまうということ。
ひとつのことだけを述べたパラグラフを複数使うことで、文章構成を組み立てていく必要がある。
そして、そのパラグラフの冒頭にも、要約文(重要なポイント)を書きましょうと著者は述べている。先に重要なポイントを書くことによって、トピック単位で読み飛ばしができるようになる。忙しい読み手に配慮した文章構成にしようということだ。
とにかく重要な情報から書くこと、これがビジネス文章の基本といえそうだ。
⑤「~が」はできるだけ使わない
私は特に「~が、」という助詞を日頃からよく使っている。これは癖のようなもので、無意識にやってしまっている。
ただ、著者によると、ひとつの文ではひとつのポイントだけを述べるべきであって、「~て、」や「~り、」「~し、」「~が、」などの接続助詞を使って文章をつなげてはいけない、としている。
特に「~が、」は良くないらしい。
特に「が~、」という接続助詞はできる限り使用してはいけません。なぜなら「~が、」には順接(and)と逆説(but)、両方の意味があるからです。しかも、文の最後まで読まないと、その「~が、」が順接か逆説かわかりません。
私がよく使うのは逆説の方の「~が、」である。順接の「~が、」もあることを考えていなかった。
逆説の「~が、」をどうしても使いたい場合は、文を切って、「しかし、」で接続する。そうすることによって、ひとつひとつの文のインパクトが強くなる。
こういうちょっとした癖というのは、誰も指摘してくれない。
今書いているこの文章も、極力「~が、」を使わないように心がけた。何度も使いそうになり、違和感がすごかった。癖をなおすのはなかなか難しいのである。
まとめ
・書く技術は経験では身につかない。書き方の正しい手法を知り、実践することではじめて身につく。
・読み手にメンタルモデル(人が頭の中に作る自分なりの世界)を具体的に作らせ、そのモデルを壊さないように文章を展開することができれば、効果的に相手に文章を伝えることができる。
・文章の冒頭には、その文章で伝えたい内容の総論(要約文)を書く。
・各論はパラグラフを使って書く。パラグラフとはひとつのトピックについて述べるのを目的とした文の集まり。パラグラフの冒頭にも要約文を書く。
・ひとつの文ではひとつのポイントだけを述べる。並列で表す「~て、」「~り、」「~し、」「~が、」などの接続助詞を使ってはいけない。
特に「~が、」には順接と逆説があるので、注意する。
・本書の内容は、知識として覚えるだけでは意味がない。実践してセルフチェックする必要がある。まずは、要約文から書く。メンタルモデルやパラグラフへの意識、「~が、」を使う量を減らすなど、できるところからやっていきたい。