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いいことあるぞ(偶像としての宮崎あおいの喪失と、エビグラタンパイの終了)
久しぶりにミスタードーナツに行った。
いいことあるぞ、ミスタードーナツ。
いいことって何のことかよくわからないけど。
ミスタードーナツがすごく好きだった。
ドーナツのなかでは、特にゴールデンチョコレートが好きだ。
あの頃、ドーナツの空いてしまった穴には、
夢やらなにやらが詰まっていると信じていた。
さらにあの輝かしい金色にも見える魔法の粉、まさに麻薬。
いいことあるぞ、ミスタードーナツ。
どの辺がミスターなのかいまだにわからないけれど。
ミスタードーナツはドーナツだけでなく他も美味しい。
パスタなんかも意外とイケるが、やはり外せないのは、
頼むと店内で温めてくれるパイ系だろう。中でもエビグラタンパイ。
エビとグラタンとパイだぞ?不味いわけがない。
今となってはあのエビが冷凍のバナメイエビで、原価がべらぼうに安いのは知ってる。しかし当時の僕には、あのエビはショートケーキにおけるイチゴだったのだ。
そう、あの頃は、「ミスタードーナツに行ける。」
それだけがもうすでにいいことだったのかもしれない。
初めて母親に連れて行ってもらったミスタードーナツ。
ガラスケースの中の宝石。あの特有の箱なんか宝箱に見えたもんだ。
DーPOPなんてすごいよな!宝箱の中にまた宝箱。その中に小さいカラフルな宝石。
しかし、いつのまにか社会に疲弊し、心に開いてしまった穴から、
夢やら何やら抜け落ちてしまったのか、全身に身につけた金色のメッキが、
ボロボロと崩れてしまったせいか、社会人になってから足が遠のいた。
いいことなんてないじゃないか、ミスター。
話を戻そう。そう、久しぶりにミスタードーナツに行ったんだ。
俺は一仕事終えて、甘いものとコーヒー、タバコを摂取できる場所を必要としていた。
JRさっぽろ駅の改札のすぐ隣にタバコが吸えるミスタードーナツがある。
中をのぞくと、なかなかの盛況ぶりだ。まずは席を確保しトレーとトングを装備した。
まず最初にゴールデンチョコレート。
やはり売れるのか、一番手前に配置してある。一仕事終えた満足感からか、俺は少年の心を取り戻し、海賊がお宝に一目散に突撃するようにトングでそれを掴み己のトレー(領土)に載せ、その流れで次の獲物を探す。
ふんふん、ココナッツねあれもうまい。え、ポンデダブルショコラがない。
あれは期間限定だったか、しょうがない。あれは革命だ。ポンデリングのもちもち感にショコラだ!それがダブルだ!もはや犯罪だ!
オールドファッション。これは大学くらいに覚えた味だ。オールドでファッション。シンプルイズベスト。いきりたがる高校の時期を抜けた垢抜けた大学生。そんな感じ。しかしそんなにお腹は減っていない上に、甘いものは二つもいらない。右に視線を逸らす。
いよいよ本丸だ。甘いものを食べれば塩辛いものを欲する。それが人間だ。ここまで話してなんだが、実は最初から食べるものは決めていた。
ゴールデンチョコレート。そしてエビグラタンパイ。あの最強のコンビだ。
僕は血眼になりながらエビグラタンパイを探す。各種パイ系の群の中を探すが奴は、僕は血眼になりながらエビグラタンパイを探す。各種パイ系の群の中を探すが奴は、
いない。
エビグラタンパイがいない。俺の、俺たちのエビグラタンパイがない。
僕は泣く泣く中村屋コラボのパイをトレーに乗せ、コーヒーを頼み、会計を済ました。謎の軽い喪失感に襲われる。この感覚は何かに似ている。
そう、偶像の宮崎あおいが喪失してしまった。あの時の感覚に似ている。
2017年12月23日、V6の岡田准一と結婚したことを、2人の連名によるFAXで発表した。挙式や披露宴や新婚旅行などの予定はないとのこと。2018年5月19日、岡田の所属するジャニーズ事務所により、第1子妊娠が公表された。同年10月16日、第1子男児出産を発表した。Wikipediaより。
これが僕にとっての現実の宮崎あおいの喪失だった。これに関しては過去に書いているのでそちらを参考されたい。現実は清算されたのだ、だが偶像はどうか。
僕にとっての偶像の宮崎あおいは中学の頃の初恋の女の子だ。
その女の子はショートヘアでよく笑う子だった。
思いっきり笑顔を全開にして、大口開けてゲラゲラ笑う女の子だった。
破顔する、という表現があんなに似合う女の子は見たことがない。
お調子者だった僕は、すぐに彼女が好きになったし、
彼女を笑わせることを生きがいとした。
そんな彼女と人生初めてデートをしたのも、地元のミスタードーナツだ。
TSUTAYAと併設されたミスタードーナツは中学生の僕には格好良く見えた。
CDを買った後、コーヒーを飲みながらおしゃれな雑誌を読む大人も。
剥き出しの厨房で着々とと完成しようとしているドーナツを想像すると、嬉しかった。ちなみに母に最初に連れられたのもここだった。大好きだった。
そんな大好きなミスドに大好きな彼女と行けるのだから有頂天だ。
その日は夏の土曜。買って貰ったガラケーで前日に約束を取り付けた。
今は使わないような絵文字も、たくさん使った。楽しみだった。
部活の試合が長引き、終わった後大急ぎで家へ帰りシャワーを浴び、
一番好きな今考えるとクソダサい服を着て、自転車を飛ばして行った。
時間に遅れて汗だくな僕をみて彼女はまた破顔した。安心した。
そのあとドーナツを一緒に選ぶ、もちろんゴールデンチョコレートと
エビグラタンパイだ。
ゴールデンチョコレートなんかよりもゴールデンな存在が隣にいるので、
僕は目の前のガラスケースにしか目がいかない。ウブなのだ。
彼女はエンゼルフレンチ。カッコつけて僕はブラックコーヒーを頼む。
彼女はオレンジジュース。さらにカッコつけてなけなしのお小遣いで奢ろうとする。
十円足りない。
恐る恐る彼女を見るとまた破顔している。「はい、十円。」エンゼルだ。可愛い。
そして向かい合う着席して僕は顔を直視できない。彼女はにこやかに笑っているが、
僕は何を喋ったのかを全く覚えていない。いつもは笑わせているのに、この日は全く
調子が出なかったことだけは確かだ。その日はそれでも楽しかった。
それで紆余曲折あり、彼女とは別れてしまう。中学生なんてそんなもんだ。
けれども、大学のサークルで再会するなど何故か縁深いものになる。
そして今年の年始、久しぶりに再会することになった。
彼女はジャカルタで新聞を書いていて、会社が潰れそうだから
転職活動をしており、翌月にはジャカルタで再就職するとのことだった。
いろいろな話をした。仕事の事や将来の事、そして恋愛のこと。
僕は当時のことを今になって彼女に伝えたくなった。
今伝えないと、二度と会えないかもしれないと思ったからだ。
「君が好きだったし、君以上はいまだにいない。」
そんなちょっと困った顔をして彼女は思い出を美化しすぎだよと笑った。
破顔はしなかった。あの時のミスタードーナツと同じだ。
「思い出を美化しすぎ」それは親友からも言われた言葉だった。
その時僕は、僕の中の偶像の宮崎あおいが死んだのを感じてしまった。
あんなに好きだったのに。
その時と同じ思いをエビグラタンパイに思った。
何故ないのか調べてみたがレギュラーメニューに加わらない。
エビグラタンパイ。
そんなことを考えながら、新しいメニューを食べる。うまい。
いいことあるぞ、ミスタードーナツ。
変わらないゴールデンドーナツを愛しながら、
エビグラタンパイを復刻を待ち、新商品を味わう。それでいいじゃないか。
俺たちはもう大人なんだ。
いいことあるぞって子供にいう側なんだ。
ミスドでコレ書いてたら転職用の資料を書く時間が無くなってしまった。
早く大人にならくちゃ。
いいことあるぞーミスタードーナツ。